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電子書籍は売れない、電子雑誌は売れないと言われて久しい。 そんな中、果敢に紙で出版していた雑誌をやめて電子版だけの出版に切替えた雑誌『フリック!デジタル』の編集長に、電子雑誌の現在を聞いた。

フリック!って売れてるの?

― 電子雑誌『フリック!デジタル』が、弊社のデータでも快調に売れています。電子雑誌のみで出版していて、しかも売れているなんていう本は聞いた事がありません。快調の秘密を教えて下さい。

『フリック!デジタル』編集長の村上タクタです。快調と言われると……ちょっと困ります(笑)まだまだ、もっと売れないと困るんですけど(笑)

― もともとは紙で作ってたんですよね?

2年前に紙でスタートしました。iPhoneやiPadやアンドロイドやデジカメなどについての記事を書く、デジタルギアが好きな人に向けての本です。

― そして、デジタルだけに。

そうですね。今年の7月号から月刊にして、そのタイミングから電子版のみにしました。

釣り竿では電子雑誌は読めない

― 売れる見込みはあったのですか?

実は、ウチは紙版の時代から並行して電子雑誌を出していたんです。電子雑誌なんてまだ全然他からも出ていない頃から。電子雑誌配信元さんがスタートする時に、テストをするためのコンテンツも提供したりしていましたから。だから、他の大手さんの雑誌が出る前から、ウチの本がトップメニューに出ていたぐらいですから。

― なるほど、だから電子版が売れ始めるのも早かったんですね。

そうですね。そもそも、ウチの本はiPhoneやiPadをテーマにしてますから、読者の方が早い時期からiPadをお持ちなわけです。これがたとえば、釣りの本だった持ってるのは釣り竿ですよね。でも、フリック!の読者さんはiPadを持っていた。だから、電子雑誌を読める人が多いわけです。

― 釣り竿では、電子雑誌は読めませんものね。

アタリマエです。で、あるていど電子版を読んでいる方がいらっしゃったから、冒険してみようと。

― 冒険ですか。

そうですね。今読んでいる人の、何倍かの方が読んでくれたら、生きていけるかもしれない。でも、読んで下さる方が増えなければそこで、終了! です。だから必死です。値段も下げました。680円だったのを350円にした。

― 350円だったら、ちょっと試しに……って思いますね。

マニアックなコンテンツだからこそ

そう。その代わり、もっとたくさんの方に買っていただかないとやっていけなくなるわけですが。当時電子版を読んでいた方の10倍、20倍の方に読んでいただかないとやっていけない。

― そりゃそうですが……。

ですね。もう必死です。知ってもらうために、ブログ書いて、twitterやって、FaceBookやって。そうそう、FaceBook『いいね!』押しておいて下さいね。

― それは大変ですね……。

まぁ、好きだからいいんですけどね。もう、何か言い続けてないと死んでしまうタイプなんです。

― たしかに、さっきからずっとしゃべってますね。

ほっといて下さい。インタビューだから喋ってるんじゃないですか。ま、それはそうと、だからフリック!自体はマニアックなコンテンツだからこそ、電子雑誌を今読んでいる先進的な方々に受け入れていただいているんだと思います。メディアとコンテンツのマッチングですね。

― はぁ。

ずっと何十年もタブレットで本を読むことに憧れてきた

たとえば、SF小説とか、アニメとかそういうサブカルというか、オタクコンテンツって、iPadのようなデバイスとマッチングいいわけですよ。

― なるほど。

たとえば子供の頃から、2001年宇宙の旅のワンシーンでタブレットのようなデバイスで何か読んでいるのを見ているワケです。ガンダムだってそういうシーンがあるでしょ? あ、でもアムロが読むマニュアルは紙でしたね(笑)今思うとレガシー。FFSでだって、ダグラス・カイエンがツアイハイ自治区の子供にiPadの分厚いような情報機器をあげるのあげないのってエピソードがあるじゃないですか。ともあれ、ずっとそういうの読んできて、iPadが発売されたら、そりゃ買うでしょう。ずっと何十年もタブレットで本を読むことに憧れてきたんですよ。ベストセラーとか、ビジネス書とか売れると思って作ってる人がいるけど、違うと思いますね。今はまだ、タブレットで本を読むのは我々SFなどをずっと読んできたオタクコンテンツを愛する人たちです。だから、電子雑誌や電子書籍を切り開くのは我々のような物好きというか、趣味人なはずなんです。

― いきなり力説ですね。

だって、iPadで本を読んだり、デジカメで写真撮ったり、スマホでいろいろ遊んだりするのって楽しいじゃないですか。そういうことを分かってくれる人たちに向けて本を作れるのはとっても楽しいんですよ。

いつまでも電子雑誌じゃないかもしれない

― なるほど。それで当初のテーマの『電子雑誌の夜明けは来たか?』なんですが、いかがでしょうか?

どうでしょう? 来てるといえば来てるし、それは立ち位置によって違うんじゃないですかね? 僕は紙の本だって好きだし。でも、今でいえば、フリック!デジタルを売ることで、電子雑誌の夜明けを引き寄せたいと思っていますよ。だって、いろいろもっと面白いことできそうじゃないですか。規模は必要ですからね。慣れてくると紙の雑誌を持ち歩くのが面倒になったり、置いて置く場所の都合で電子の方がいいなって思ったりしますよ。もちろん、紙の本は電池なくてもデータ消えないし、文字さえ読めれば誰でも読めるし、OSの違いとか関係ないし、下手したら何千年しても読めるかもしれないし。すごいですよ。急になくなったりするもんじゃないと思いますよ。でも、読む人が増えれば電子版だって収益構造が成り立つでしょうし。そのために今がんばっているワケで。

― がんばって電子雑誌の夜明けを引き寄せて下さい。

でも、いつまでも電子雑誌じゃないかもしれませんよね。データであるってことが大事なわけで。グーグルのメガネみたいなのに映し出すのかもしれないし、網膜に投影するかもしれないし、脳みそに直接プロットできるようになるかもしれないし。テクノロジーはどんどん加速するし、ネットは広大なんです。

― はぁ……。

とはいえ、そんな未来を楽しむためにも、まず今の電子雑誌、電子書籍を売らないとね。もっともっと先があるんだけど、今を越えないと先にいけないから。お互いがんばりましょう。iPad とか、デジタルデバイスが好きな方、フリック!を読んで下さると嬉しいです。

― ぜひBOOK☆WALKERで読んで下さいね。

そうですね。そこ、大事です(笑)

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