犬士の所在はすこしずつ明らかになっていく。偶然の出来事から荘助とすりかわった玉を持つことになった犬山道節《どうせつ》もその一人だった。主君と父の仇、扇ケ谷定正《おうぎがやつさだまさ》の命をねらう道節に加勢する四犬士だが…苦境をのがれて再びちりぢりに落ちていく。馬加大記《まくわりだいき》の陰謀への加担をことわって命をおとすところだった小文吾を救う、田楽一座の花形の美少女、旦開野《あさけの》も、じつは身を隠した犬士だった。いつの間にか長い年月が流れる。彼らは首尾よく出会い、あるいはすれちがい、なかなか全員が顔をそろえることができない。
苦難につぐ苦難…だがついに八犬士は一同に集結する。犬江親兵衛仁《いぬえしんべえひとし》、犬塚信乃戌孝《いぬづかしのもりたか》、犬川荘助義任《いぬかわそうすけよしとう》、犬村大角礼儀《いぬむらだいかくまさのり》、犬坂毛野胤智《いぬさかけのたねとも》、犬山道節忠与《いぬやまどうせつただとも》、犬飼現八信道《いぬかいげんぱちのぶみち》、犬田小文吾悌順《いぬたこぶんごやすより》の八人は八つの霊玉をたずさえて会し、里見家の父祖の地で盛大な法要をおこなう。南総安房《なんそうあわ》はようやく平定されようとしていた…
各770円 (税込)
ときは戦国。安房国(千葉県)を領する里見義実《よしざね》は安西景連《かげつら》に攻められる苦戦のなかで、たわむれに犬の八房《やつふさ》に向かい、「景連の首をとってくれば娘の伏姫《ふせひめ》を与えよう」といった。この冗談が現実となったばかりか、八房はほんとうに伏姫を欲しがる。伏姫は犬を殺そうとする父を制して、八房と一緒に出奔する。二年後、義実は娘の救出にむかい、犬と一緒にあやまって娘をも銃で撃ってしまう。伏姫は死ぬまぎわに妊娠していることを告げるが、けっして八房に身を汚されたことはないと誓い、身の潔白のあかしに切腹する…と、白煙があがり、伏姫の「仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌」の八字を彫った数珠が天空にのぼって光を放って飛び散った。その後、各地に八つの玉のそれぞれ一つを持った八人の犬士が生まれる。本巻には「仁の巻」と「義の巻」を収める。早くも四人の珠の所有者があきらかになる。
この巻には「礼の巻」と「智の巻」を収める。礼の巻では、犬塚信乃《いぬづかしの》と犬飼現八《いぬかいげんぱち》の2犬士が利根川をのぞむ芳流閣《ほうりゅうかく》の屋根の上で戦う名場面がよく知られている。二人は葛飾の行徳の入江で旅籠屋の文五兵衛に助けられるが、犬塚信乃は文五兵衛の話から、現八とはもちろんのこと、文五兵衛の息子の小文吾《こぶんご》とも不思議な宿世で結び合わされていることを知る。さらに小文吾の義弟房八と妹ぬいの犠牲によって、その子である犬江親兵衛《いぬえしんべえ》も、また犬士のひとりであることが明らかになる。信乃、現八、小文吾の3人は幼い親兵衛を祖母に託し、大塚村にいる犬川荘助を迎えにいく。だが、荘助は主人殺しの罪で処刑されようとしていた…
犬士の所在はすこしずつ明らかになっていく。偶然の出来事から荘助とすりかわった玉を持つことになった犬山道節《どうせつ》もその一人だった。主君と父の仇、扇ケ谷定正《おうぎがやつさだまさ》の命をねらう道節に加勢する四犬士だが…苦境をのがれて再びちりぢりに落ちていく。馬加大記《まくわりだいき》の陰謀への加担をことわって命をおとすところだった小文吾を救う、田楽一座の花形の美少女、旦開野《あさけの》も、じつは身を隠した犬士だった。いつの間にか長い年月が流れる。彼らは首尾よく出会い、あるいはすれちがい、なかなか全員が顔をそろえることができない。
苦難につぐ苦難…だがついに八犬士は一同に集結する。犬江親兵衛仁《いぬえしんべえひとし》、犬塚信乃戌孝《いぬづかしのもりたか》、犬川荘助義任《いぬかわそうすけよしとう》、犬村大角礼儀《いぬむらだいかくまさのり》、犬坂毛野胤智《いぬさかけのたねとも》、犬山道節忠与《いぬやまどうせつただとも》、犬飼現八信道《いぬかいげんぱちのぶみち》、犬田小文吾悌順《いぬたこぶんごやすより》の八人は八つの霊玉をたずさえて会し、里見家の父祖の地で盛大な法要をおこなう。南総安房《なんそうあわ》はようやく平定されようとしていた…
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