江戸藩邸内にただならぬ動きがあるのを察した水戸のご老公は、愛刀を携えて出府、奸臣・藤井紋太夫をおのが手で討ち果して、お家騒動を未然に防ぎ、水戸家の安泰をはかる……元禄13年、73歳で歿するまで、名君・水戸光冏公の生涯を史実に則りつつ、独自の手法であますところなく描いた長篇力作、完結編。
各770円 (税込)
名君の誉れ高い水戸光圀の人間像を浮き彫りにし、その生涯を描く長篇。全8巻。水子にされる運命だった千代松が、気弱な兄にかわって御三家・水戸家の世嗣と決まったのは、寛永11年、7歳のとき――千代松は水戸から江戸に移り、将軍・家光に拝謁し、9歳のときに元服する。そして、徳川左衛門督光国と名乗る……。
江戸の上屋敷で、文武の道を怠りなく続ける青年・光国であったが、水戸家の世嗣として、生きた学問をすべく、江戸市中を微行し、さらに旗本・水野出雲守の案内で、遊廓・吉原にも通い始める。右手に盃、左手に書物という生活に徹する光国が、前関白・近衛信尋の息女・尋子を妻に迎えたのは、承応3年春、27歳のときであった。
新婚の夢も消えぬうちに妻・尋子に先立たれた光国は、悲しみの中で念願の大日本史編纂に打ちこんでいた。侍女に懐妊させ水子にせよと命じたわが子が、ひそかに兄・頼重のもとで育てられていると聞いて、喜びの感情がわいてきたが、さらに父・頼房を失い、重い責任が光国の肩にかかっていく。ときに光国34歳。水戸家二代の主・光国は、四代将軍・家綱の継嗣問題でその弟・館林綱吉を推し、名実ともに天下の副将軍として活躍する。
父・頼房のあとをついで、水戸家2代のあるじとなった光国は、再婚もせず、兄の高松城主・頼重の長子・綱方を世嗣にもらいうけ、その大成を楽しみにしている。4代将軍・家綱の継嗣問題に、その弟・館林綱吉をおし、天下の副将軍としての貫録はいよいよその重さを加え、いまや41歳の男盛りとなった。
綱方を病いで失った光国は、兄の高松城主・頼重の第2子綱條をもらいうけ、水戸家の世嗣として鍛える一方、寛文12年、小石川屋敷のうちに彰考館をもうけ、後世の史家のための正しい指針となるよう大日本史編纂にますます力を注いでいく……。天和元年、新将軍・綱吉を補佐する覚悟を新たに、名を光圀と改める。ときに54歳。そして元禄3年、綱條に家督を譲り、より自由な立場を求めて隠居を決意する。その大名時代を描く。
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