【最新刊】昼月

帰郷の一行もとうとう三人になり、緑路連山の山並みを左手に、乾いた大地を進む。
そんな中で点々と生える一本樹の脇で一夜を過ごしつつ、辿っていくと、突如、林が彼方に現れる。
其処は<殿>にとってちょっと懐かしい、エルフィンの<庭>であった。

峠道で助けた娘を送り届けるため、賑やかな市(いち)が立つというオートレークという町に立ち寄る帰郷の一行。
しかし市はとうに終わっていて、一行は次の市まで待とうと物売りの家に滞在することに。
その日の夜、<殿>は小さい人に誘われて、町にひと際高くそびえる塔に招待される。
そこは、オートレークの領主・ジヨル＝ディの居城であった

<殿>を送り届けるためにチロスへ向かうはずだった帰郷の一行は、何故かその道を逸れて山肌に空いた横穴の前にいる。
横穴に入り山並みの向こう側に抜けようと、坑の中に入っていく<殿>率いる帰郷の一行。
一方、下女のシルキーは一行とは別行動で峠越えの道を行く。
果たして、双方何事もなく、山向こうに出て落ち合える事ができるのか…

木の葉色づくある秋の日に、〈殿〉は下女のシルキーを伴って賢者の都フィロソフィアを去り、故郷への旅路に出た。
お供は、途中のナトリヤ国チロスま〈殿〉を送り届けるよう雇われた若い冒険者(？)三人組と、シルキーが宿と食事の礼の代わりにと連れてきた少年のような風貌の若者。
彼らはエウローペ地方とナトリヤ国をつなぐ街道〈ロマーニャ〉を通る為、馬を狩る魔獣が出没するという荒れ野へ向かおうとするが…。

南街道の宿駅で大河<パイヤ>の港町<ボルカ>に着いたシュリだったが、同行人のドラトは何故か町に入りたがらない。
　川を下る舟を待つ間、町はずれの雑木林で野宿する一行。
　かまどの小さい灯(ひ)のみの闇夜の中、若者の行く末を案ずるドラトに、川の流れが様々な思いを呼び起こすのだった。