走って行かなきゃいけない夏がある。
中学二年生、夏休み。あの村で僕、荻原出海は仁科美音と出会った。
望んでいたはずの静かな夏とは違う、騒がしくて賑やかな日々。都会の喧噪や家庭の事情からやっと離れられたと思っていたのに、僕を待っていたのはそんな毎日だった。都会から来た僕には、それが少し気恥ずかしくて、それが少し煩わしくて……。それでも美音はいつも僕に笑顔を向けてくれた。
青い空、入道雲、蝉の声、小川のせせらぎ、打ち上げ花火、夜空に輝く天の川。あの夏のぜんぶの景色に美音がいた。中学二年生の僕は、この一瞬が永遠に続くと思っていた。あの夏はずっと終わらないと思っていた。けれども、時計は針を刻む。時間は未来への一方通行で、どんなに願ってもひとつひとつ年を重ねていくのがコトワリだ。
やり直せない過去。取り戻せない夏――だからこそ僕は、走り続けなきゃいけない。どれだけの時間が過ぎていっても、どれだけの距離が離れていても、もう一度君に会いたい夏があるから。
第10回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。新進気鋭のイラストレーター・やすもがイラストを担当。忘れられないあの夏に会いに行く、少年少女の青春グラフィティー。
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
各671円 (税込)
走って行かなきゃいけない夏がある。
中学二年生、夏休み。あの村で僕、荻原出海は仁科美音と出会った。
望んでいたはずの静かな夏とは違う、騒がしくて賑やかな日々。都会の喧噪や家庭の事情からやっと離れられたと思っていたのに、僕を待っていたのはそんな毎日だった。都会から来た僕には、それが少し気恥ずかしくて、それが少し煩わしくて……。それでも美音はいつも僕に笑顔を向けてくれた。
青い空、入道雲、蝉の声、小川のせせらぎ、打ち上げ花火、夜空に輝く天の川。あの夏のぜんぶの景色に美音がいた。中学二年生の僕は、この一瞬が永遠に続くと思っていた。あの夏はずっと終わらないと思っていた。けれども、時計は針を刻む。時間は未来への一方通行で、どんなに願ってもひとつひとつ年を重ねていくのがコトワリだ。
やり直せない過去。取り戻せない夏――だからこそ僕は、走り続けなきゃいけない。どれだけの時間が過ぎていっても、どれだけの距離が離れていても、もう一度君に会いたい夏があるから。
第10回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。新進気鋭のイラストレーター・やすもがイラストを担当。忘れられないあの夏に会いに行く、少年少女の青春グラフィティー。
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
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第10回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>受賞作品です。
14歳の夏休み、家庭の事情で都会を離れて親戚の住む村に身を寄せた主人公の少年は、そこで4人の少女と出会いました。
『青い空、入道雲、蝉の声、小川のせせらぎ~』と、あらすじでも謳われる美しい自然の描写の中で繰り広げられる彼女達とのスローライフな交流は、田舎暮らしを知っている人には懐かしさ、知らない人には憧れを感じさせてくれるでしょう。
…いいなぁ。
ところが本作、牧歌的な夏休みの思い出では終わりません。
村に馴染んだ主人公が、村民が秘密にする風習を調べ始めると、冒頭から散りばめられた謎が首をもたげ、まるで伝奇ミステリーのようなスリリングな雰囲気に…。
そして辿り着いた哀しい事実に相対してもなお希望を忘れない少年少女の姿に、成長するにつれて忘れた感覚が熱く込み上げてきました。
きっと、あれが“青春”の感覚なんですね。
ああ、懐かしい…。
1冊完結だから読みやすい、青春グラフィティーの決定版です!
2016/10/08