おすすめコメント

• コミタンM （BOOK☆WALKER スタッフ）

  空虚でせつない青春の記録

  『鬼灯さん家のアネキ』の五十嵐藍によるオムニバス短編集。
  
  どこかけだるく、乾いた印象の少女たちのちょっとした日常や不思議な交流が描かれます。
  
  収録されている一作『放課後ロスト』は、委員長と呼ばれる少女とクラスメートの少女が、なんとなしに一緒に行動するようになり、そのままゆるい家出をしながら、最後は親の死の知らせを受けて別れるまでがたんたんと描写されます。
  
  委員長もクラスメートもほとんど感情を出さず、最後まで名前もわかりません。
  
  ただずっとイヤホンでCDを聞いている委員長が何かに囚われていて、そこから逃げ出すきっかけを探していたことは、時折見える彼女の私生活から読みとれます。
  
  家出中に探していたCDが見つかり、2人で笑い合う少女たちは、この作品中唯一の動的なシーンです。
  
  でも結局彼女たちのささやかな冒険は、親の死（おそらく委員長を抑圧していた要因）によって断ち切られ、2人は離れ離れになり、友達になりそこねました。
  
  青春が甘くきらびやかなものだけじゃないことを知っている人たちに、読んでほしい作品です。

  2013/11/07