気が付いたら、そこは見知らぬ西洋風の部屋にいた。
目の前では白いドレスを着た美しい少女が泣きじゃくり、ベッドの上で醜悪な男に組み敷かれていた。
鎖に繋がれて、囚われの少女が犯されそうになっている。
「たす、けて……」
大粒の涙を流す少女に助けを求められ、無意識に体が動いていた。
傍にあった短剣を握りしめ、少女を襲う男を突き刺す。
何度も、何度も。
我に返ったときには男は事切れ、人を殺した事実に絶望する。
膝から崩れ落ちて吐く俺を、少女は慰めようと手を伸ばし健気に笑う。
そんな少女の顔を見て、俺はあることに気づいて意識が遠くなる。
――どうして現実に乙女ゲーのヒロインが?
薄れゆく意識の中、瞳の裏には花のように笑うメインヒロインのゲームスチルが浮かび上がっていた。
【電子書籍限定SS】『庭園を掃除して、花を見る約束をする』を収録!
※この作品は小説投稿サイト『カクヨム』にて掲載している小説を、電子書籍用に加筆修正したものとなります。