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愛してやまない みんなの水野作品!

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いま明かされる『ロードス島戦記』

水野先生が語る『ロードス島戦記』の裏側、想い、そしてこれから…。ファン必見のインタビュー。

(聞き手:月刊ニュータイプ編集部)

今回のインタビューは、先日秋葉原で行われた新装版刊行記念サイン会前に話をうかがった。会場には多くの人がつめかけ、中には親子でファンという人も

――刊行おめでとうございます。今回の新装版執筆にあたっては、どのような点を意識されたのでしょうか。

25年前に読んでくださった方が新装版を読んでも、どこを直したのかわからないように直そう……というのが、今回の基本コンセプトでした。やはり25年前の僕と今の僕というのは全然違う作家なんです。当時なかったものが今の僕にはあって、逆に当時あったもので失われているものもある。だから、修正しても違う作品にしてはいけないというしばりを、自分の中で設けました。そのうえで、読みやすくなるように文章を直しています。あとは逆に、シーンとして加筆した箇所に関しては、それとわかってもいいのかな、と思って書きました。多分読まれたら、旧版になかったシーンにはすぐ気づかれるのではないかと思います。

――カシューとベルドの追加された対峙するシーンはとても良かったです!

ありがとうございます(笑)。あそこは旧版がいくらなんでもあっさり書きすぎてるんですよね。カシューもシリーズのその後の巻で大きなキャラクターになっていきましたし、ベルドも「ロードス島伝説」を書いたことで、自分の中でキャラクター性が深まった部分がありますから、それを受けた描写になりました。1巻を書いていたときは、あそこまでキャラクターの掘り下げはできていませんでしたからね。僕もあのシーンは結構気に入っています。書かせてもらって楽しかった。カシューらしさとベルドらしさをとにかく出したいという思いがあって、ぶつかり合いをうまく出せたように自負しています。ベルドがカシューに向けて「お前の剣は敵を倒すためのものか? それとも客に見せるためのものか?」と言うシーンとか。

――「アイテム・コレクション」(安田均/グループSNE著、富士見書房刊。ファンタジーに登場する武器・防具を紹介した書籍で、物語部分にカシューの過去らしき人物が登場する)の内容が反映された描写ですよね!

そうそう。あれはね、言わせたかったんですよ。「あいにくわたしは自分の人生すべてに誇りを持っている」と返すカシューも書きたかった(笑)。そんな感じでわがままで書かせてもらった作品なので、自分としては本当に、出してくれた出版社にも、お買い上げいただいた読者のみなさまにも「ありがとうございます」という言葉しかないですね。あとは新装版に関しては、若い、新しい読者に、これを機会に手にとってもらえたら嬉しいですね。電子書籍にもなったので。配信の始まった日には、BOOK☆WALKERのトップページが「ロードス島」シリーズ一色になってて、びっくりしましたよ。ありがたいですよね。長いことやってきた甲斐がありました(笑)。

――電子書籍では今回の新たな「灰色の魔女」と同時に、旧版である「灰色の魔女 ORIGINAL EDITION」も配信されましたが、これは水野先生のご提案だとか。

旧版と新版を並べるというのは、作家としては見せてはいけないところというか、舞台裏を見せている感があるとは思いつつ、その形にさせてもらいました。いちおう、2つの版を比べないでほしいと著者としては言っておきますが、止めることはできないので(笑)。

――ご自身としてはいかがですか。さきほど文章についてはうかがいましたが、キャラクターの見え方という点で、印象はどう変わられたのかなと。25年前はお立場的にも年齢的にも、パーンに近いところがあったかと思うのですが。

パーンはもともと書いていたころから、どんどん大人になっていったキャラでしたね。そもそも当時から、僕の視点はウッドチャックやスレイン寄りで、そこは変わらないんですよね。……読み返して思ったんですけど、実はこのシリーズの主人公ってスレインですよね(笑)。

著者としては「新装版」と「ORIGINAL EDITION」をあまり比べないで……と語る水野先生に、タブレットで2つの電子版を見せる編集部。苦笑する水野先生

――たしかに!(笑)

パーンに関しては当時の友達でモデルになる人間がいたんです。とても真っ直ぐで、人としての良さを持っている人間というふうに思っていました。屈託がないというか、表裏がないというか。僕はどちらかといえば裏が多い人間――「腹黒」だと最近は自称もしているんですけど(笑)――なので、ウッドチャックの仲間を妬む気持ちみたいなものは、当時からよくわかったんです。それに対して、パーンは本当に、キャラクターとしてこういう人間が好きだ、という気持ちで書いていたような気がします。こういう人間ってまわりから好かれるよな、と。キャラクターの印象で意外だったものといえば、ディードリットが思った以上に……なんというか、庶民的でしたね(笑)。「これでハイエルフなのか?」という感じが自分でも多少しました。よくいえば、「ツンデレっぽい」といえなくもないんですが……。自分の中では、シリーズ後半のイメージが強くて、最初から変わっていないつもりだったんですが、1巻は全然そんなことはなかったですね。

――ファンタジーやライトノベルの位置づけというのも、この25年で本当に大きく変わったという印象があります。パイオニアのおひとりとして、お感じになられていることはありますか?

そうですね……そこは僕がどうのこうのというより、ファンタジーというジャンルに限っても「スレイヤーズ」があり、「魔術士オーフェン」があり、ほかにも多くの作品群があって、僕とは関係なく独自の進化をとげたという気持ちですね。僕自身はそんなに25年前から変わってない気がするんです。今年になって「グランクレスト戦記」という新しいシリーズをはじめましたけど、これはむしろ「ロードス島」シリーズに原点回帰しようというくらいの勢いで書いてますからね。

――先生の中ではあまり時代の趨勢とは関係なくお仕事をされている。

ファンタジーというのは、もともとそうした、普遍的なものが書けるジャンルだと思うんですね。そうはいっても時代に影響されるところは当然あるんですけど。現代社会にある諸問題や、そこで生きる人間、そこで起こっている現象を純化して書くことができるのが、僕はファンタジーのいちばんの魅力だと思っています。そういう意味ではファンタジーを書く以上、普遍的にならざるをえない、なるしかない、そんなジャンルの小説じゃないかなと思います。もちろん、細部では、魔王がヒロインになったり、妹キャラが出てきたりという変化はありますけどね(笑)。

――では最後に、新装版や電子書籍という新しい形で「ロードス島」が届けられるということで、これから手に取られる読者のみなさんに向けてメッセージをいただけますでしょうか。

新しい形で読者の皆さんにお届けできることが非常にうれしいです。ライトノベルの歴史を知るうえで読んでいただくのも構いませんし、今、広まっているファンタジーの原型みたいな意味でお読みいただくのでも構いません。こういう作品があって、過去に多くの人が手にとっていたこと。今のライトノベルとは違う味の、こんなライトノベルもあるんだよ……ということを、作品から感じ取っていただけたらありがたいですね。

(2013年11月4日、秋葉原・書泉ブックタワーにて)

月刊ニュータイプの公式サイト「Web Newtype」では、今回のインタビューのロングバージョンも掲載しています(http://anime.webnt.jp/)。

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