まずは定番!おすすめコミックエッセイ9選
コミックエッセイはフィクションに負けず劣らず多種多様な世界を覗くことができるジャンル。自分が経験したことのない人生のいろんな場面に触れることができるのが面白いところです。フィクション作品で有名な人から、エッセイの名手、タレントなど多種多様な書き手がいるコミックエッセイから、まずは特に人気のある作品や定番と呼ばれる作品をピックアップします。
大家さんと僕
お笑いコンビ・カラテカの矢部太郎が描いたヒット作で、手塚治虫文化賞短編賞を受賞している作品です。矢部太郎さん自身は「漫画のなかで表現した大家さんは、『僕自身が接し、話し、見ていた大家さんからイメージして作り上げたキャラクター』という意味であくまでフィクションとしていますが、下敷きになっているのは彼自身が実際に住んでいた家の大家さんとの交流。1階に大家さんが住む物件に引っ越してきたことをきっかけに、当時86歳だった上品でのんびりした大家さんとの交流がスタート。
帰宅して電気を付けると、それに気付いた大家さんから「おかえりなさい」と電話がかかってくる暮らしに最初は戸惑ったものの、まっすぐでちょっと天然な優しさに惹かれていくようになり、平均4時間かかるお食事をともにしたり、旅行に行ったりするっようになります。大家さんはもちろん、矢部さんの人柄が伝わるほっこりコミックエッセイです。
うつヌケ
手塚治虫の絵柄を模写したパロディギャグなどで知られる作家・田中圭一が、自身のうつ病体験を描いた作品。サラリーマンとして働くなかで、やがて10年にわたる、うつのトンネルに入っていった彼が、自身やほかの人の体験をマンガにしています。ゲームクリエイターや編集者といった人たちに加え、大槻ケンヂや内田樹、一色伸幸といったいわゆる著名人のうつ経験も収録。
一見華やかな成功を収めた人たちがどうして、どんなふうにうつになり、苦しい時期を抜けていったのかを語っています。印象的なのは「うつを治す」のでなく、一生ものとして向き合おうと投げかけているところ。完全になくなるわけではなく、再び暗いトンネルに入りそうになることもあるけれど、自分自身の不調のサインを発見し、うまく休めるようになることが重要なことと教えてくれます。
百姓貴族
いろんな職業の世界を知ることができるのもエッセイコミックの楽しさ。本作は知っていそうで知らない農業のダイナミックな世界を教えてくれる人気作です。作者の荒川弘は『鋼の錬金術師』などで知られる人気漫画家ですが、実は実家が北海道で畑作と酪農を営む農家。そこで育ち、働いていた経験を描いたコミックエッセイです。
農業というと自給自足ののんびりとした生活というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、熊や野菜ドロボウとの戦いや、なぜか畑で見つかる鮭、じゃがいも畑で収穫(?)されたポテトチップスの話など、パワフルでとんでもない農業生活を赤裸々に描いています。登場するキャラクターも個性抜群。なかでも大胆な行動でたびたび大けがをしながらもカラッと元気な父上は、「マンガのキャラクター」を地で行く破天荒さで、登場のたびに驚かせてくれます。
上京ものがたり
コミックエッセイの大名手・西原理恵子が、自身をモデルにした女の子を描いた自伝的エッセイ。少女時代を描く『女の子ものがたり』、自作を書店営業する様子を描く『営業ものがたり』と合わせて3部作と呼ばれるシリーズの第1作目で、上京から作家デビューまでのことを描いています。脱税をテーマにした実録エッセイを描いたりと豪快な作風も有名な著者ですが、本作は小さくて自信のない女の子がひとり東京へやってきて、うれしかったり悲しかったりする場面を描いています。
1話1ページの短い構成ですが、他人にも自分にも優しい恋人のことや、歌舞伎町のミニスカパブで働いて出会った人々のことなど、しぶとくてどこか切ない人々の情景が描かれた永遠の名作です。ちなみに3部作の完結編と位置づけられている『営業ものがたり』は、前2作とは違って豪快なサイバラ節全開の漫画作品。『上京ものがたり』などとはまた違うパワフルさと面白さを楽しめます。
おかあさんの扉
フィクション作品でも日常のふとしたできごとや感情をすくい取る名手であるマンガ家・伊藤理佐。その彼女が40歳で出産し、「おかあさん」として過ごす日々を描いたのが本作です。
授乳や離乳食といった育児の定番エピソードももちろんありますが、赤ん坊の小さな身体にも肋骨や鎖骨があることを発見して身悶えたり、「初めてネギを折った」「初めて靴下に穴があいているのを教えてくれた」など小さな初めてに興奮したり、著者ならではの小さな日常の発見と面白さに満ちています。ちなみに、2010年にスタートしたこの連載は2020年現在も続行中。おおよそ1巻1歳分でまとまっており、少しずつ大きくなっていく娘さんの様子を読むことができます。
ちなみに夫は同じくマンガ家で『伝染(うつ)るんです。』などの作品で知られる吉田戦車。お父さんの視点で描いた『まんが親』という作品もありますよ。
うちの妻ってどうでしょう?
半自伝的な作品である『僕の小規模な失敗』などで描かれる、コンプレックス強めでちょっとクセのあるキャラクターで愛される福満しげゆき。本作はそんな福満が生活で起こったことや考えたことを描いた作品です。
タイトルにも入っているとおり、妻とのエピソードも多数。多いのは仲良しほのぼのエピソードではなく、喧嘩の話なのが面白いところ。作画資料にしていたミニカーが見つからず、イライラしながら寝ている妻を起こした結果、いつものところにあったなんてことからちょっとした喧嘩に発展したりといった、ほんの小さなことで衝突する様子が生々しいです。
ちなみに、この喧嘩のときも出てきましたが、言い争いなどから妻が繰り出す攻撃も本作の名物。ローキックやパンチといったなかなかの攻撃をコミカルに描いています。ぶつかりながらもうまくいっているように見えるふたりの生活が楽しいです。
ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。
コミックエッセイは当事者の視点から、その人の深い部分に触れることができるジャンルでもあります。『ゲイ風俗のもちぎさん』はそんな作品のひとつ。ゲイ風俗(いわゆるウリセン)で働いていたときに出会った人たちのことや、そこにたどり着くまでの親との関係などを描いています。
物心ついたときから男性が好きなのを自覚していたもちぎさん自身の経験はもちろん、高校や風俗時代に出会った人々などの人生にも触れていきます。毒親や女性の生きづらさの問題、風俗で働く人たちの人間関係や悩みなど、デリケートな部分を描いている作品ですが、“もちぎさん”のデフォルメされたキャラクターやカラッとしたオチなどもあり、スッと読みやすい読後感にしてあるのも魅力です。
犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい
コミックエッセイではペットを題材にしたものも人気ジャンル。なかでもヒットした作品のひとつがこの作品です。『さばげぶっ』などの作品で知られる松本ひで吉がTwitterに掲載したショートマンガを連載化したもので、2020年秋のアニメ化も発表されています。
「犬派」「猫派」は動物好きの間でもたびたび議題になるテーマですが、本作はタイトルどおり犬も猫もいっしょに飼っている作者の視点からその両方の魅力を描いています。素直で健気な犬と、尊大で自由な猫の対照的な様子が笑いを誘う作品です。人なつっこい犬と、人が仕えるような関係の猫、まるで違う関係ながら、どちらも好きになってしまう楽しいコミックエッセイになっています。
中年女子画報
エッセイの名手・柘植文が40歳を迎えたのを機に「正しい中高年」になることをめざす様子を描いた作品。中年と呼ばれる年齢になったけれども、まだまだ若いという気持ちもある微妙な40代独身の心情をベースに、40代以上向けの女性誌をチェックしてみたり、中年の夏の満喫スタイルを考えてみたり、「中年初心者」として試行錯誤する様子を楽しむことができます。
中高年のアイドル・綾小路きみまろのライブに参加といった40代だからこその初体験もたくさん。まだ若手と中年の間で戸惑う気持ちはもちろん、新しいステージとしての中年を楽しむフレッシュな面白さも感じられる一冊です。ちなみに連載はこのあとも続いており、すっかり中年が板に付いてきた『中年女子画報 ~46歳の解放~』などの続巻も刊行されています。
闘病、うつ体験記&ためになるコミックエッセイ5選
心や身体の病気の問題は、デリケートでなかなか人に話すことができないことも多いテーマです。コミックエッセイでは、そんな病気の体験を描いた作品もたくさんあります。当事者としての体験は、同じように病気に悩む人は共感や新しい向き合い方に出会えるかもしれない内容です。また、自分自身が病気にかかっていない人は、なかなか知ることができない病気の人の苦しさや気持ちに触れる機会にもなってくれます。
家族の話、かけがえのない人間関係の話
家族のこと、人間関係のこともプライベートでデリケートなテーマのひとつ。うまくいっているように見えてわだかまりがあったり、それでいてやっぱり離れられなかったり、単純に割り切れないのが家族や人間関係です。コミックエッセイでは、そんな繊細で言葉にしがたい誰かとの関係を描いた作品も数多くあります。
岡崎に捧ぐ
小学校時代に出会った親友・岡崎さんとのエピソードを中心に子ども時代を描いた自伝的エッセイ。最初は結婚が決まった岡崎さんのためだけに描いたものでしたが、後にウェブ上で発表すると評判を呼び、連載化されました。スーパーファミコンやたまごっち、スーパーのゲームコーナーなど、90年代のカルチャーもたっぷり含んだ少女時代の思い出が描かれています。
たわいもないことや「今思えば」なんてこともなかった事件と同じように、親からのネグレクト (育児放棄)など、「今思えば」ヘビーだったできごとが子ども時代の日常の景色として描写されているのが印象的。懐かしいあの頃の感覚を思い出すだけでなく、大人になったからこそ見える別の景色も描き込まれている、繊細な友情物語です。
ナガサレール イエタテール 完全版
東日本大震災で津波に遭った宮城県の実家が建て直されるまでを描いた復興と家族の物語。東京で震災を知ったときの様子や、婆ルこと祖母と母ルこと母が宮城で被災したときのことはもちろんですが、避難生活のなかで婆ルの認知症が進行したり、建築制限といった法律関係の問題に直面しながら、家という形で新しい日常をつくっていく過程が描かれています。
家はもちろんのこと、被災をきっかけにしたかのように変化していく家族の関係が、ニコ・ニコルソンならではのコミカルで柔らかい絵で表現されています。巨大地震という大きな災害に直面した物語でありながらも、家族のおかしみとともに描かれている、笑って泣ける実録コミックエッセイです。
ひみつのおねえちゃん
4人の子どもを持つシングルマザーとして実家に戻ってきた姉。そんな姉と子どもたちを 中心に描かれる家族の4コママンガです。Sっ気が強く母親である姉そっくりの長女、ボーイッシュで元気な次女、オシャレで乙女な三女、妙に大人びた末っ子長男という個性豊かな子どもたちの笑えるエピソードが中心になっていますが、同時に水に流すことのできない両親との関係など、家族の負の部分も描かれているのが本作の魅力。
身勝手で暴力もたびたび振るった自分の両親たちへの怒りはなかったことにはならないけれど、それでもマンガのなかに描くことができるようになったこと、確執も描きながらも笑える物語になっていることが、ほのぼのファミリーマンガに奥深さを与えています。かわいい子どもたちに笑いながら、うまくいっていてもいっていなくても特別で離れがたい家族というもののふしぎを考えさせてくれる作品です。
出産・育児コミックエッセイの人気作4選
人生で経験する人も多い出産や育児はコミックエッセイでも人気テーマ。たくさんの人が直面するテーマながら、最初は誰もが戸惑い、悩むものなので、まさに出産・育児をしている人はもちろん、予習的に読む人、当時を振り返るように触れる人にとっても楽しめるジャンルです。人気作家が描いたものも多く、出産・育児に興味がない人も笑って読めるような傑作もあります。
ジェンダー・LGBTs…共感を呼ぶコミックエッセイ4選
多様性の重要さがより広く認識されるようになった現在、ジェンダーやLGBTsの話題もいろんなところで語られるようになりました。それでも、まだまだ語りづらい当事者もいれば、触れる側もどう向き合うのが誠実なのか悩むことも多い問題。コミックエッセイでは、当事者の正直な気持ちや、あまり認識されていない問題などを楽しみながら読むことができます。
ペット・動物が主役!笑って癒される人気コミックエッセイ5選
猫や犬といったペット、動物をテーマにした作品はコミックエッセイでも一大ジャンルのひとつ。まるまる1冊猫だけをテーマにしたマンガ誌が出版されたりもするほど、人気の高いジャンルです。もちろんヒット作もたくさん。「うちの子が一番!」という気持ちがあふれているような、笑えてほっこりする作品がいっぱいあります。
とりぱん
動物エッセイといったら猫や犬を描いた作品が多いですが、ペットとはちょっと違う生き物との関係を描いた作品がこの『とりぱん』です。タイトルにも入っているように、本作で主に描かれるのは鳥たち。庭に置いた餌台にやってくる鳥たちの様子を、日々の暮らしを交えながら4コママンガにしています。
普段ぼんやり見ているだけだとどの鳥もさほど変わらないように思えるものですが、とりのなん子の観察眼を通して描かれる鳥たちは個性豊か。欲張りな暴君っぽいヒヨドリに、貴族のような余裕を見せるアオゲラなど、鳥たちの性格が見えてきます。また、日記的でリアルタイムに近い形式で描かれていることもあり、鳥たちの暮らしはもちろん、植物や景色なども含めた歳時記的な側面も。季節の移り変わりをゆっくり感じながら楽しめる名エッセイです。
結婚・夫婦ものエッセイのおすすめ4選
夫婦の数だけ向き合い方や関係があるのが結婚生活。こちらもやはりほかの人には話せなかったり、ほかの夫婦の突っ込んだ話はなかなか聞けなかったりするものです。夫婦の関係を描いたエッセイを読むことで、共感したり、新しい関係を築くためのヒントをもらえたりすることも。ほかの家庭を知ることで、改めて結婚生活の楽しさに気付くことができるかもしれません。
監督不行届
『ハッピーマニア』や『働きマン』といったヒット作で知られる安野モヨコが、『新世紀エヴァンゲリオン』などの監督として知られる夫・庵野秀明との生活をつづった大ヒットコミックエッセイ。
日本屈指のクリエイター同士の夫婦ですが、このエッセイで描かれるのはオタク夫婦としての日常。いっしょにアニソンを歌い、マンガの名セリフで会話し、日曜は特撮の放送時間に合わせて起きる。オタク夫婦化に抵抗する気持ちもあったものの、徐々にそんな生活に染まっていくのを楽しむように描いています。一方で、天真爛漫というほど奔放な庵野監督の姿はどれだけ見ても新鮮で意外性たっぷり。ぶつかり合ったりしながらも、リラックスできて笑える、結婚生活って楽しそうだなと思わせてくれる作品です。
旅行記・海外暮らしから国際結婚の話までおすすめ4選
海外から見た日本、日本から見た海外を描く作品はコミックエッセイの定番ジャンルのひとつになっています。海外の文化や考え方を知ることができるだけでなく、海外からの視点で見ることで改めて日本文化の特徴が見えてきたりもします。また、国際結婚や留学、旅行などの前のちょっとした予習として読んでも面白いです。
ベルリンうわの空
ドイツ・ベルリンで暮らす作者がその生活を描いたコミックエッセイです。「あんまり何もしていない」と自身が描いているように、描かれるのはアクティブに活動する様子というより、日々の買い物や街で見かけた人たちの様子などが中心。駅で泥酔してヤケを起こしている人の話を知らない誰かが聞いてあげる様子や、スーパーの入り口に主人を待つ犬がズラッと並ぶ景色など、ベルリンの好きなところ、面白いと感じたところをちょっとずつ紹介してくれています。
ベルリンの文化に触れること自体も面白いですが、本作の魅力はそんな視線を通じて作者の理想の暮らしや街のあり方が見えてくる点。どんな生活が自分にとって理想なのかを考えさせてくれる楽しい滞在エッセイです。
ひみつの“恋愛・性体験”
恋バナは盛り上がるテーマのひとつですが、同時になかなか相談できない悩みを抱えやすいテーマでもあります。だからこそ、プライベートな恋愛や性の話に踏み込んだコミックエッセイは人気ジャンル。ずっと話せずにいた性の悩みや、性と絡んで語られる自分の気持ちの話、さらには赤裸々な婚活の話など、打ち明け話のように語られる恋愛と性の物語に出会うことができます。
さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
交際経験も性的な経験も、社会人経験もなかった作者が28歳のとき、レズビアン風俗を利用した体験を描いたコミックエッセイ。
いわゆるハウツー的な体験レポートというより、レズ風俗を利用することを決意するまでの約10年間を振り返り、分析していくところが大きなテーマになっています。大学を中退し、うつと摂食障害に陥った作者が、親の機嫌を取りたがって生きてきた自分を脱して自分を大事にできる自分になるためにレズ風俗という場所へ踏み出す過程が丁寧に描かれています。程度の差こそあれ、社会との関わりや自尊心の育て方、あるいは大人になるというのは誰もが直面するテーマ。赤裸々に自分の内面を描いた本作は、男女問わず多くの人が共感できるテーマに迫った作品です。
恋愛3次元デビュー ~30歳オタク漫画家、結婚への道。~
農業生活・自然生活がテーマの人気のコミックエッセイ
人が生きていくために絶対に必要なものが食糧をはじめとした衣食住。でも、普通に暮らしていると農業のことや暮らしの土台となる家などのことは、しっかり知る機会がなかったりもします。コミックエッセイでは、農業や狩猟、自給自足の生活などを描いた作品もいろいろあります。「素朴で素敵な暮らし」というだけじゃない、思わぬ苦労や体験を楽しみながら知ることができます。
【最新】コミックエッセイ ランキング
- 著者:
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新井 すみこ
コミックエッセイ
KADOKAWA
2023/4/19 (水)
配信開始
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みきぽん
コミックエッセイ
KADOKAWA
2023/9/28 (木)
配信開始
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色のん
コミックエッセイ
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2023/8/29 (火)
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キュルZ
コミックエッセイ
KADOKAWA
2023/7/27 (木)
配信開始
- 著者:
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ヤチナツ
コミックエッセイ
KADOKAWA
2023/9/14 (木)
配信開始