70歳で初産!人生の終盤に超大型イベントを迎えた老夫婦の可笑しくて愛おしい日々
タイトルのまま、70歳で初産(セブンティウイザン)を迎えることになった高齢夫婦の物語。
この想定外の出来事に、65歳の夫は焦り、つわりでうずくまる妻を「脳梗塞!?」と勘違いするなど(笑)、事実をなかなか受け入れられず、うろたえます。
対して、妻にとっては想定外などではなく、40年間待ち続けた子宝だったのです。夫に猛反対されても、周囲に奇異の目で見られても、彼女にとってはノイズにすらなりません。
“母になる”という静かで強い覚悟は圧倒的で、深い感銘を覚えます。
非現実的なストーリーかもしれません。
しかし、時に過去に遡りながら描かれる夫婦の半生は、実にリアリティがあります。
このため、読み進めていくと70歳で妊娠と言う突飛な設定に違和感はなく、シリアスさとコミカルさがバランス良く合わさった秀逸なヒューマンドラマとなっています。
この先残された時間は、長くはない。その分、それまでの愛情と経験を凝縮したような夫婦の言葉は、読み手の心に滲みてきます。
人生の初心を思い出させてくれるような、そんな作品です。