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『文芸・小説、グーテンベルク21、雑誌を除く』の電子書籍一覧

61 ~120件目/全869件

  • 昏倒のショックを受けて、タウンゼンドは記憶喪失症から回復した。だが、三年の歳月が完全に頭の中から消えていた。この三年間なにをしてきたのか、自分にはわからない。教えてくれるものもいない。しかし瑪瑙(めのう)のような冷たい目をした謎の男が、自分をつけ狙っているように思われる。強迫観念にとらわれた男の孤独と寂寥を描いて、ならぶ者のない境地を切り開いたサスペンスの巨匠アイリッシュのブラック・シリーズものの1点。
  • 「13の秘密」はパリを舞台に、探偵趣味のルボルニュ青年が新聞記事を手がかりに13の犯罪の謎を解明する連作短編集。有名なミステリー評論家アントニー・バウチャーは「純粋に頭脳だけで事件を解決するという点でルボルニュに比肩しうるのは『隅の老人』だけだ」と絶賛している。「第一号水門」はメグレもの初期の長編…老船頭のガッサンは運河に落ちるが、救出される。同じ場所で、界隈の河川運行を仕切るデュクローが、痛手を負い意識を失っていたところを助け出される。デュクローの息子ジャンが、父を襲ったのは自分だと告白する手紙を遺し自殺を遂げる。翌日、さらにベベールなる水夫がシャラントンの水門で縊死死体となって発見される。
  • モーム晩年の70歳の作。1944年、米国滞在中に書かれ、第二次大戦中だったため、主人公ラリーの生き方に共感した米国の青年たちに歓迎され、熱狂的に読まれた。物語はモームによって語られる。モームはたまたま立ち寄ったアメリカで旧友エリオットから、姪のイザベルと彼女の婚約者ラリーを紹介される。ラリーは第一次大戦で親友を失い、途方にくれ、道を求めてヨーロッパを放浪する。当然ながら婚約者イザベルはついてゆけず別の男に嫁した。ラリーはさまざまな体験を経て、最後にはインドで自分の人生の目的を悟る。この本筋のなかに、エリオット、シュザンヌ、ソフィらを巡る数々の物語が組み込まれ、全体は周到なエンターテイメントになっている。
  • この作品の原題は「ル・グラン・モーヌ」(でかのモーヌ)という。生徙たちの敬愛を一身にあつめた「でかのモーヌ」は、ふとした偶然から、ふしぎな冒険にまきこまれる。見知らぬ古い城館にまぎれこみ、そこで「この世の人とも思えない」美しい女性にめぐり会う……。未知なるもの、永遠なるものへの止みがたい憧れに満ちたこの小説は、宝石の輝きにも似た美しさをたたえる、二十世紀青春文学の傑作だ。作者フールニエはこの作品だけを残して28歳で死んだ。
  • 自分の航海術の腕前をほこるあまり、大胆な言葉を吐いたオランダ人船長は、悪魔にそれを聞かれ、自分の言葉のとおり、この世の終りまで、世界の海を走り回らざるを得ない呪いを受ける。7年に一度だけ許される上陸で「永遠の愛」を誓う女性に巡りあえれば呪いは解ける。白夜のノルウェーの港に赤い帆の船をつけた船長は、果たして……。ワーグナーのロマン派オペラの傑作。
  • 未成年シャボーとデルフォスはキャバレー「ゲー・ムーラン」で閉店まで遊び、売上金を盗もうと隠れていた。だが、二人は客の一人が死んでいるのを発見し、泡を食って逃げる。翌日の夕刊は、この男が柳行李詰めの死体として発見されたと報じた。ジャンは思いを寄せる踊子の部屋に行き、そこで昨夜の客が持っていたはずのシガレットケースを見つけて真っ青になる。外に出たジャンは大柄の男につけられていた…。「三文酒場」の舞台はパリとその郊外だ。メグレはサンテ監獄で、死刑が翌日に迫ったジャン・ルノワールという男と面会する。そしてまだ捕まっていない彼の共犯者が、三文酒場なるところの常連であると明かされる。メグレは《三文酒場》を探そうとするが…。
  • 吟遊詩人の騎士タンホイザーは、地下の洞窟で、異教の女神ヴェーヌスの官能にとらわれつつ、地上への脱出を渇望していた。願いは突然とどく。タンホイザーは元の領主ゆかりの友人ヴォルフラムに出会い、領主の姪エリーザベトが寄せる思いを聞かされヴァルトブルクに戻る。だが、「歌合戦」での失敗から追放となり、法皇から罪の赦しを受けるよう命じられる。半年後、ローマから戻った巡礼のなかに彼の姿はなく、エリーザベトはみずからの命を捧げる決心をする。
  • アイルランドの王女イゾルデは、コーンウォールのマルケ王に嫁ぐため、王の甥であり忠臣であるトリスタンに護衛されて航海している。トリスタンはかつて戦場でイゾルデの婚約者を討ち、深手を負ったが、イゾルデに介抱してもらったことがあった。イゾルデは、そのことに気づいたが、すでにトリスタンに恋心を抱いていた。愛と憎しみにとらわれたイゾルデはともに毒薬を飲むことで解決をはかる。だが、毒薬の用意をもとめられた侍女は、毒薬のかわりに「愛の秘薬」を用意する。愛に殉じる二人の前途は決まっていた!
  • 神話や伝説をもとにしたワーグナーの他の楽劇と異なり、本作は「史実」をとりあげて題材としている。主人公ハンス・ザックスは16世紀に実在した「マイスタージンガー」の一人であり、靴屋の親方だ。本作で、ザックスは、部外者ヴァルターの歌の革新性を認め、芸術における伝統と革新のみごとな媒介に成功する。第三幕の「歌合戦」に向けて壮大なドラマが展開され、「伝統」を讃えるザックスとザックスを讃える人びとの明るい歌で幕となる。
  • 「ハードボイルド派探偵小説界の長老」と評されるハメットの短編全集その1。第一次世界大戦後のヘミングウェイを初めとする〈失われた世代〉の作家たちに刺激を受けて登場したハメットは、推理小説に革命をもたらした。その作風は「ハードボイルド」と名づけられている。名探偵コンチネンタル・オプの地方での事件を扱った表題作を中心に、「黒づくめの女」「うろつくシャム人」「新任保安官」「放火罪および…」「夜の銃声」「王様稼業」の7編を収録した。
  • イギリス社会の縮図さながら、教養主義的なシュレーゲル一家と、現実主義的なウィルコックス一家が対比され、さらに貧しい会社員バスト夫妻が配されるなかで、対立する価値観をもった両家を、ウィルコックス夫人とマーガレット・シュレーゲルという2人の女性が結びつける……知識階級のなかで育ったドイツ系のシュレーゲル姉妹が、下層階級の人々との交わりを通じて、傷つきながらも人間的成長を遂げる物語であり、女性を主人公とする教養小説の傑作だ。著者の代表作でもある。
  • ユゴーが「レ・ミゼラブル」を著すにあたってこの小説を参考にしたことは有名だ。中心となるフルール・ド・マリの複雑な物語に、無数の小ストーリーが絡み合う。作者の出世作であるばかりでなく、フランスの大衆小説、新聞小説の代表格。19世紀初めのパリ。不良どもの巣窟セーヌ川の中の島シテで出会ったドイツの大公殿下ロドルフと、可憐な娘マリ(歌坊)。ロドルフは、彼女が実の娘とも知らずマリを悪の手先としてこき使う「みみずく婆」や脱獄者の悪徳校長の手から救おうと活躍する。だが、マリは、執念深く迫る敵の手に落ちていく。
  • 中世ヨーロッパの「聖盃」伝説に材をとったワーグナー最後の楽劇。「聖盃」は処刑されたキリストの身体から流れ出る血を受けた盃であり、「聖槍」はキリストの横腹を突いた槍だった。スペインの聖杯城はこの二つの宝を保持するために建てられた。だが王は魔術師の奸計によって傷つけられ、槍を奪われる。これを取り戻し「正式な儀式」をおこなわなければ城はなくなる。この難儀を救うのは「清らかな愚かもの」だけだ、神はこう告げ、そこにパルジファルが現われる。パルジファルは数々の奇蹟をみせて槍を奪還し「救済」を実現する。
  • 貧しい庶民の生活を瑞々しい感覚で描いたフィリップの代表作。この作品は、パリの裏街で春をひさぐ薄幸の少女ベルトと彼女のヒモで「モンパルナスのビュビュ」と仇名される若者の物語だ。そこに展開されるのは汚辱に満ちた暮らしだが、貧しく虐げられた者たちに注がれる作者の眼は、愛と優しさに満ちている。この作品は二十世紀の「神曲」とも評される。フィリップの初期作品「やさしいマドレーヌ」を併載する。
  • 医者のピエールと弁護士のシャンは仲のよい兄弟だが、激情家の兄と、柔和な弟はまったく性格が異なり、たがいに嫉妬を感じていた。ある日、シャンに思いがけない遺産が舞い込む。それをきっかけにピエールは、弟は誰の子なのか、愛する母には秘密があったのではないかという深い疑惑にとらわれる……。まえがきの「小説について」は、作者自身がこの作品に付けたもので、心理研究の文学であることをうたっている。モーパッサンを好きでなかった漱石も、この作品については「名作ナリ」と激賞した。
  • ドイツ西部のブラバント公爵領では、先代の公爵が、娘エルザと息子ゴットフリートを残して死んでまもなく騒動が。エルザと散歩に出たゴットフリートが森の中で行方不明になる。これは魔法使いオルトルートが彼を白鳥に変えてしまったためである。が、オルトルートの夫で、公爵領を手に入れる野望を抱いていたフリードリヒ伯爵は、これを好機とばかり、エルザを訴える。エルザが弟を殺して領主の地位を手に入れ、秘密の恋人を宮廷に引き入れようとたくらんだのだ、というのである。たまたま来訪したドイツ国王ハインリヒが決闘でその決着をつけることになった。フリードリヒの相手はエルザの祈りに白鳥に曳かれた小舟に乗って現われた騎士「ローエングリン」だった……。
  • ロンドン警視庁内に設置された「不可能犯罪捜査課」の活躍を描いたシリーズ作品を中心にしたカーの短編集。独創的なトリックの数々を駆使して独自の世界が展開する。手袋だけで男が殺された怪事件の「新透明人間」、雪に残された足跡トリックの典型「空中の足跡」、四人組銀行強盗はつかまったが、肝心の金がみつからない「ホット・マネー」、評判ダンサーが楽屋でハサミを背中に刺されて死んでいた「楽屋の死」など10編。うち後半4編はシリーズ以外の怪奇事件を扱っている。
  • 流れ出してきた有毒ガスに全員がたじろぐなか、ヘンリー・メリヴェール卿は部屋の中に突進していった。ストーブから、不気味な音とともにガスが吹き出している。その前には、断末魔の苦悶にさいなまれた動物園長の死体が! しかも、その部屋は内側からゴム引きの紙で目張りされていた。空襲警報が鳴り響く戦時下ロンドンの、有名な爬虫類展示館で発生した奇怪な密室殺人事件をメリヴェール卿が暴く。
  • バルザックの「人間喜劇」の中には20編以上の短編がある。本書はその中から訳者が選んだ6編からなる短編集だ。「サラジーヌ」「砂漠の情熱」「赤い宿屋」「ことづて」「グランド・ブルテーシュ綺譚」「海辺の悲劇」がそれで、1829年から35年にかけて、バルザック30歳から36歳のときに書かれている。それぞれの作品には、独特の「語りの仕掛け」が組み込まれ、バルザック世界をのぞき見る恰好の選集をなしている。
  • パキータとの恋において主人公ド・マルセーをつき動かしているものは、官能を通しての全能の夢である。同性愛は許せないものだった。それゆえにこそ彼は、自分がサン・レアル侯爵夫人の代役をさせられたという意識に耐えきれず、パキータの殺害を決意する。併載した「捨てられた女」はバルザックの中・短編の中でもおそらく最良のものの一つである。裏切られた女の苦悩と矜持、愛情の脆さと恐ろしさとをこれほど生き生きと、かつ簡潔に描いた作品は決して多くはない…これは訳者のことばだ。
  • カルタにはいっさい手を出さなかった青年将校ゲルマンは、フェードトヴナ老伯爵夫人が必勝法を知っていると聞くと、老夫人の書斎へ忍び込み、ピストルまで突きつけて秘伝を教えろと強要する。老夫人はショックのあまり死んでしまう。ある夜、夫人はゲルマンの夢枕にあらわれて、「三」「七」「一」の順で張れと教える。ゲルマンは「三」で勝ち、「七」で勝ち、最後に「一」を張る。だが、出たのは…。「大尉の娘」はプガチョーフ反乱をバックに辺境の砦の大尉の娘マリアをめぐって展開される歴史小説と家庭小説をミックスさせた物語で、プーシキンの最大傑作といわれる。
  • 「破天荒な小説」という言葉がぴったりの18世紀のイギリス文学の古典。「紳士トリストラム・シャンディの生涯と意見」というのが正式なタイトルで、当然ながら語り手はトリストラム氏なのだが、そもそも話は母親の受胎から始まり、やっと誕生してもすったもんだのすえに名前が決まるまででも、たいへんな時間がかかる。途中で話題は突然わき道に脱線して、それがまた別のわき道へと続き、なかなか元に戻らない。かと思うと、真っ黒なページや真っ白なページ、マーブルペーパーのページ、抜けている章などが出現する。だが、父親のエピソード、伯父トウビーとその昔からの従卒トリムの物語など、脱線しても個々のエピソードは十分におもしろく、語りは絶妙で、終始笑える。夏目漱石はこの作品について「シャンデー程人を馬鹿にしたる小説なく、シャンデー程道化たるはなく、シャンデー程人を泣かしめ人を笑はしめんとするはなし」と書いたが、漱石の「猫」にはその影響があるとも言われる。
  • フランスのコンスタン作の小説。名門の出身で大学生のアドルフは社交界で、美貌の女性エレノールに出会う。エレノールは伯爵に囲われの身だった。アドルフが彼女を無理やり手にいれると、今度はエレノールのほうが積極的に。彼女は伯爵から別れてアドルフのところに来て、二人は駆け落ちをして同棲生活をつづける。アドルフは女に養われている生活に嫌気がさし、親もとに逃げかえる。アドルフの心変わりを知ったエレノールは…。利己的な青年と、ひたむきな愛をささげる女性との恋愛心理を鋭く分析してみせた作品。訳者が自信をもって贈る名作。
  • 古代ギリシアの詩人ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』は、トロイア戦争後の英雄冒険譚だ。ギリシアの勇将オデュッセウスは一路故郷をめざすが、海神ポセイドンの怒りをこうむったため、簡単にはいかない。オデュッセウスは、10年にもわたって海上を放浪し、行く先々で嵐、難破に遭い、キュクロプス、魔女キルケ、鳥女セイレン、怪物スキュラとカリプディスなどに遭遇し、数々の危難にみまわれる。オデュッセウスはようやく妻ペネロペの待つ故郷イタケに生還するが、なお最後の困難が待ち受けていた。作者エヴスリンは古代ギリシアの一大ページェントともいえる物語を楽しく語ってきかせる。
  • ひとつの金のリンゴをめぐって、ヘラ、アテナ、アプロディテの三女神が自分が欲しいと言い張る。ゼウスは一番美しい者に与えるといい、その審判をトロイアの王子パリスに任せた。パリスはアプロディテを選び、その手助けを得て、スパルタの王妃ヘレネの誘拐に成功する……これが10年にわたるギリシア・トロイア間の戦争の発端だった。アキレウス、アガメムノン、オデュッセウス、パトロクロス、ヘクトルなど数多くの英雄が戦い、倒れるなか、知将オデュッセウスの「木馬の計」でトロイアは陥落する。作者エヴスリンはホメロスの叙事詩『イリアス』の中味を好個の読み物として提供する。
  • サリンジャー自身が自分の書いた作品から選び出した9編の短編作品集。いわゆるグラス家物語の端緒をなすと考えられる「バナナフィッシュに最良の日」を含む9編が収められている。現代人の分裂する心情を清新な文体と歯切れのいい会話を通して、極めてシンボリックに描くこの作品集には、短編作家としてのサリンジャーの特質が遺憾なく発揮されている。読書そのものが「挑戦」ともなる作品集。
  • 心中にひとかけらの誠意も愛情ももちあわせない青年デュロワが、つぎつぎと女性を誘惑し、女たちを踏み台にしてまたたく間に立身出世をとげる物語だ。デュロワは、教養も知性もあるわけではないが、新聞社の社長の娘を誘惑することによって編集長の地位を得る。社長のワルテルは新聞を利用して政界と結びつき、投機によって莫大な資産を築く。そこに描かれるのは、弱肉強食の熾烈な社会、虚偽が誠実を打ち負かす社会だ。パリの並木道を着飾った名士たちが得意げに散歩しているのを見ながら、「たいしたもんだよ、女たらしに悪党ども!」とデュロワは叫ぶ。
  • 「ファクション」作家アーサー・ヘイリーの名を一躍高めたベストセラー。ニューオーリンズ最大のホテル、セント・グレゴリーは、深刻な赤字を抱えていた。あらゆる融資を拒否されて苦悩する頑固な老経営者と、彼の片腕となって奔走する精力的な副総支配人。やがて、買収をもくろむチェーン・ホテルの総帥が乗り込んでくる。巨大な組織の内部をえぐり、極限状況の中で展開される群像劇。そこには客と従業員にも多種多様な人間が登場する。客の不始末を種にゆすりをかける警備主任、ホテルを餌食にする専門の盗人、チップをピンはねするボーイ長、黒人医師の宿泊拒否トラブル…次々に展開する多彩なドラマ!
  • マーク・トウェインというのは水の深さを示す用語で約3.6メートル。これだけあればミシシッピ河を上下する蒸気船は座礁する心配はなく、いわゆる安全水域を表わす用語でもあった。彼はほとんど学歴がなく、文章は庶民的で親しみやすかったこともあり、このペンネームでアメリカの人気作家となった。1935年、ハレー彗星が接近した年にミズーリ州の寒村に生まれ、75年後、ふたたび彗星が現われた年に亡くなった。「トム・ソーヤー」や「ハックルベリ・フィン」でよく知られるが、人間の喜怒哀楽を巧みに描いた多くの短編でも親しまれた。「その短編は長編に劣らず面白いものが多く、訳出している間も、また、ゲラの校正中も、思わずおかしくなって吹き出してしまうことが度々ありました。また、反対に、身につまされてホロリとさせられる場面もあり」…本短編集の訳者の言葉である。
  • 原題はYou Know ME ALで、「アルよ、君はおれのこと、よく知ってるよな」という意味。アルは友達の名だ。この作品は投手としては抜群だが田舎者でウヌボレ屋でケチなジャック・キーフという青年が、アルに書き送る手紙でできている。1910年代の小説だが、実在のチーム、選手、監督を織り交ぜて描いて大好評を博し、ユーモア小説、野球小説の古典的名作となった。作者ラードナーは野球物のあとで中流層の市民たちを描いたユーモアと諷刺のきいた諸作品によっても高く評価された。アメリカン・ユーモア小説はマーク・トウェイン→ラードナー→デイモン・ラニアンと受け継がれていく。
  • どこからともなく集まってきた貧乏芸術家やボヘミアンたちがたむろする町モンパルナス。極貧と絶望の中で創作に没頭する画家モジリアニはジャンヌを得て、生きる力を与えられる。だが、ついには病とのたたかいに敗れる。画家本人とも実際に交際のあった作者はその壮絶ともいえる生涯を、彼の生きた時代と場所とともに丹念に描きあげる。かつてジェラール・フィリップ、アヌク・エーメ主演で公開された同名の映画の原作であるが、原題は「1919年のモンパルナス」であった。
  • ラシーヌは17世紀後半のフランス古典悲劇を代表する作家だ。彼は幼くして孤児となり、修道院で教育を受けた。はじめモリエールの庇護を受け、劇作家としての道を歩み出した。「アンドロマック」は愛の情念をうたうラシーヌ悲劇の出現である。「ベレニス」はローマ皇帝とパレスチナ女王の別離という最小単位の素材から、悲劇を成立させる実験であり、表現の優雅さがうかがえる。「イフィジェニー」と「フェードル」はギリシア古代劇と対比されるラシーヌ劇の最高峰である。
  • リトル・ドリットは、大人になっても小柄でか細い。しかも債務者監獄生まれ。ドリット一家は20年以上も壁の中で暮らしているが、彼女は体面だけは捨てない父ウィリアムを世話する日々を送っている。一方、中国での事業を畳んで帰国したアーサー・クレナムは陰気な生家を訪ね、そこにお針子として通うリトル・ドリッドを見かけ、その身の上を知るようになる。だが彼女の父親には疑問がわき、知り合いに、その借金について調べる事を依頼する。ロンドンの社交界には一大勢力がはびこっていた。その中心は官界・政界に巣喰うバーナクル一族、財界の巨頭マードルだ。踊り子として舞台に立っていたドリット家の長女ファニーはマードル家の息子に見初められる。クレナムは、発明家ダニエル・ドイスの共同事業に活路を見い出す。そんななか、リトル・ドリットには、驚くべき知らせがやってきて、一家は監獄から解放される。
  • パロディ満載の、傑作ユーモアSF・シリーズ。星間調査部隊少尉だった地球青年ジョーンズは、宇宙船の事故で太陽系から500光年はなれた惑星上に不時着した。惑星の名はトーカといい、ホーカ人が住んでいた。ホーカ人は、テディベアをそのまま大きくした恰好の生き物で、想像力にあふれて純真そのもの。地球の情報を手にすると熱狂し、あらゆるものをそっくり真似してしまった…カウボーイ、ドン・ジョヴァンニ、宇宙パトロール隊員、ジャーロック・ホームズ……。さて、ジョーンズの前に次々起こるてんやわんやの大騒動の結末はいかに。
  • スイスの診療所に入院していたアメリカの富豪の娘ニコルは、若いアメリカ人の医師ディックを恋し、やがて二人は結婚する。だが、ニコルには暗い過去があり、精神を病んでいた。ディックも夫と付添医師という二重の役目を負わされる。二人の子にも恵まれた平穏の暮らしのなかへ、ハリウッドの新進スター、18歳のローズマリーがあらわれ、ディックはその誘惑に抗しきれなくなる。深酒にふける彼のモラルの崩壊はこのときから始まる。だが、夫の愛情が冷めてゆくにつれて、ニコルは精神の健康をとり戻し、以前から秘かに彼女への思慕をつづけてきたトミー・バーバンへ走る。…「ジャズ時代」の申し子であった作者の野心作であり、すぐれたドキュメンタリーな作品ともいえる。
  • この作品は自伝的要素がこく、主人公のアモリーは作者と同じ年で、同じ年にプリンストン大学にはいり、同じ年に参戦したりする。しかし、その恋愛遍歴は作者のそれというより当時の青年のそれをよくうつしたものであった。酒、ペッティングなどの大学生活の描写は、当時としては、初めて、しかも、大胆に行ったもので、お上品な時代に育った親たちを驚倒させた。だが、大学生活を愉しんでいた青年たちには受けて、ベストセラーとなった。フィッツジェラルドは失ったゼルダの愛をとりもどし、「ジャズ時代」を謳歌し、フランスへ渡る。「華麗なるギャツビー」はそこで生まれた。
  • ベルギーのブリュージュは中世の昔から、ハンザ同盟の金融の中心地として、また英国やスカンジナヴィア諸国との交易の要衝として繁栄し、さらにはブルゴーニュ公らのすぐれた文芸保護者を得て、美術工芸の分野でも旺盛な活動を示した都市だ。だが、その輝きは、歴史の闇の彼方に没し去ってしまった。ローデンバックは過去の一時期に確かに燃え立ったその熱さを、哀惜と共感をこめて追想し、はっきりとその終焉を宣言する。ノスタルジーの極致を示し、日本でも上田敏、荷風以来、多くの文人に愛された名編。
  • 「洋上都市」はヴェルヌならではのエンターテイメント中編だ。19世紀後半、大西洋を横断してアメリカへ向かう屈指の巨船「グレート・イースタン号」を舞台に(ヴェルヌ自身もその航海を経験した)、若い男女や、さまざまな人間を配して、そこに巻き起こるドラマを活写する。最後はナイアガラ瀑布を眼前にクライマックスを迎える。他に「老時計士ザカリウス」ほか好評を得たヴェルヌの初期の短編3作を収録した。
  • 正統派ハードボイルドの巨匠レイモント・チャンドラーの中短編全集第1巻。本巻には、チャンドラー自身の序文を巻頭に置き、「脅迫者は射たない」「赤い風」「金魚」「山には犯罪なし」の傑作4編を収めた。哀愁とサスペンスを背に不朽の主人公フィリップ・マーロウがロサンゼルスのネオン街を歩き去る。「レイモンド・チャンドラーはアメリカについて語る新たな方法を発明し、それ以来我々にとってアメリカは全く違ったものとして映るようになった」ポール・オースターはこんなふうに書いている。
  • イングランド北部のヒースの荒野の一画に建つ暗い雰囲気の屋敷「嵐が丘」。そこを借りようと訪れた青年は、その夜、屋敷の怨霊かと思われるものが出現する悪夢に悩まされる。翌日、彼はこの屋敷の召使いだった年輩の女性から、屋敷にまつわる愛憎とすさまじい復讐の物語を聞かされた。
  • 《健康の家》の主人が殺された。癌の宣告を受けた直後のことだった。ところが死体置場(モルグ)に運びこんだはずの死体は、いつのまにか石膏の像にすりかえられていた。事件にまきこまれた推理作家志望の娘ニッキーと共に、エラリー・クイーンは捜査を開始する(→『消えた死体』)。エラリーとニッキーの二人のコンビは、中国帰りの腹話術師の殺人事件の捜査に駆りだされる。スパイあり、イカサマ賭博師あり、そして怪しげな中国人、現場には謎のカード、宝石の行方は?(→『ペントハウスの謎』)
  • 独創的な展開とリズムにこだわるニュー・ウェーブSFの旗手であり、アメリカ黒人思索小説の先覚者の、初期の代表作。『エンパイア・スター』は少年が銀河文明の中心に向けた旅において、無知なるシンプレックスからマルチプレックスへと成長していく過程を言葉の魔術を駆使してつづっている。この作品に登場する「マルチプレックス」という考えは、多面的な世界を包むとともに、作品そのものを多面的に読むことを示唆する。「本格派、気楽な読者、文学的ファン、ニューウェーブ派…彼はすべての読者にとってすべてのものだ」これはジュディス・メリルの言葉だ。
  • 平凡な日常のなかに時として忍び込む、異常で薄気味のわるい事件、超自然的な現象を、徹底して描いた特異な作家ビアス。そこに描かれる死と恐怖と超自然的な怪異は、いまなお人の心をおののかす。この巻には、『ありえない話』から、「ハルピン・フレーザーの死」など14編を収録した。ビアスは「悪魔の辞典」で有名だが、人間の本質を冷笑をもって見すえ、容赦の無い毒舌をふるったことから、Bitter Bierce(「辛辣なビアス」)とあだ名された。
  • 『ナルニア国物語』で名高いC・S・ルイスの神学的SF『別世界物語』3部作の第1巻。原題はOut of the Silent Planetで、「沈黙の惑星」とは地球(サルカンドラ)をさす。地球は科学による進歩思想に毒され悪となった沈黙の世界であり、それに対して神によってすべてのものが祝福されて輝いている火星(マラカンドラ)は愛の世界、理想郷だった。言語学者ランサムは、二人の男に拉致されてマラカンドラに連れ去られる。そこは地球よりはるかに古く美しく「垂直」が支配する別世界で、3種の知的生物がオヤルサという光に似た存在によって統治されていた。次々にひき起こされる不思議な出来事のあと、ランサムは地球への帰還を許される。詩人のイマジネーションあふれる異世界物語。
  • アンソロジストとして著名なレイモンド・T・ボンドの手になる精選毒薬ミステリ10編。巻頭にはボンドの力作評論「毒と毒殺について」を収め、以下、セイヤーズ、アンソニー・ウィン、ベントリー、バークレー、キップリング、アガサ・クリスティ、ホーソーン、チェスタートンらによる毒殺テーマの短編ミステリの名編を収録。即効性、遅効性の毒薬など、読者はいつのまにか、さまざまな毒薬を知ることにもなる。
  • 紫式部は平安時代の藤原氏一門の全盛時、京都に生きていた女流作家です。当時の日本は、中国の先進文明と我国の風習とを巧みに調和させた、前後にも類のないような優美繊細な文化を作りあげていました。『源氏物語』の完成に生涯をかけた紫式部はまさに天才で、この物語のなかに、いわば彼女の生きた時代そのものを、全て封じこめてしまおうという野心を抱き、それを実現させてしまったのです。だから、この物語のなかには、数百人の様々な男女が、それぞれの出身階級や家庭やの考え方、感じ方をもって登場します。特に人間生活の永遠の主題というべき愛欲に喜んだり苦しんだりする姿は、私たちにも、ありありと感じられるように見事に描かれています。『源氏物語』は私たち日本人にとって、最大の魂の故郷であり、また己れを写す鏡というべき作品です。しかし、一方で、千年前の貴族の女性の言葉で書かれたこの作品には、言葉の違いという厄介なものがあります。私はまず、この複雑極まりない内容を持つ大ロマンを、近代的な小説として読めるようにしようと思いました。そうして、物語の中心をくっきりと浮き上らせるように試みました。…中村氏はこう述べています。
  • 990(税込)

    敗者や弱者に同情する感情を表わす「判官(ほうがん)びいき」という言葉がある。この義経についての評は、その大半が本書の原典に由来する。本書に描かれるのは平家追討に華々しい活躍を見せた武人としての義経ではなく、波瀾万丈で破天荒な、逃亡する英雄の姿だ。金売り吉次、牛若丸の伝説にはじまり、伊勢三郎、武蔵坊弁慶、佐藤忠信らの活躍、静の悲運と吉野山のくだり、山伏姿での奥州めざしての一行の逃避行など、数々の有名な場面が織りなす冒険物語。
  • キャサリン・アン・ポーター(1890?~1980)は米国南部の旧家に生まれたが、幼いとき母と死別、祖母に引き取られ修道院の学校で教育を受けた。以後きちんとした学歴はなく、週刊誌記者、教師などを続けながら、アメリカ、ヨーロッパ、メキシコなどを広く旅行し、その間、作品を書き溜めた。1930年短編集「花咲くユダの木」を発表。寡作ながら簡潔な文体と人間心理への鋭い洞察を認められ、第一級の女流作家となった。ピューリッツァー賞など多くの賞を受け、多くの大学から文学博士号を授与された。唯一の長編「愚者の船」(1962)は、スタンリー・クレイマー監督、ヴィヴィアン・リー主演により『愚か者の船』として映画化された。
  • 第二次世界大戦前後の時期のアメリカを、色濃く反映した短編集。主人公たちの生き生きとした行動や、彼らがうごきまわる世の中の的確な描写はハインラインならでは。本書に収めたのは、既刊の『失われた遺産』『魔法株式会社』に続く「未来史」シリーズ以外の短編集だ。1929年、アナポリスの海軍兵学校を卒業後航空母艦勤務をしたハインラインは、体をこわして退役、以後、「生命線」でSF作家としてデビューするまで、UCLAの理数系大学院に学び、さまざまな職種を転々とする。「象を売る男」の元セールスマン、「わが美しき町」の腐敗政治家とたたかう地方新聞の記者、「歪んだ家」の建築家などの描写に、その体験が生かされている。
  • 連合艦隊はお葬式を出していない。一個人の死が新聞の記事になり、本願寺や青山斎場の行列を見ることを思えば、410隻が沈み、2万6000機が墜ち、40万90000人が┏斃┳たお┓れた「連合艦隊の死」を、お葬式なしに忘れ去るということは、余りにも健忘症であり、かつ不公平でもあろう。私は、その国防史の一つのブランクを埋める役目を買って出たようなものだ。…敗戦後10年に著者はこう書き、本書は巷間に好意をもって迎えられ、当時のベストセラーとなった。いま改めて、この古典を世に問う。
  • ハードボイルドの代表格、ロスの私立探偵マーロウが活躍する一編。失踪した兄を探してくれと、田舎出の若い女があらわれたとき、マーロウは相手の態度に不審を抱いたが、女の差し出す虎の子の20ドルを受けとって、依頼を引き受けた。報酬の多寡は問題ではなかった。真実をあばき出すことだけが目的だった。舞台は映画の王国ハリウッド。街の顔役、ギャング、映画女優、そのマネージャー、警察官たちが登場し、その中を泳ぎまわるマーロウの身には次々と危難が襲いかかる。
  • 英国の作家アシェンデンは第一次世界大戦中、ふとしたきっかけから英国陸軍諜報部の要員である大佐Rにスカウトされ、秘密諜報部員の仕事をすすめられる。アシェンデンは数カ国語に通じていたし、作家という職業が恰好の隠れみのになると言葉巧みに奨められ、これを承諾する。それは命がけの任務であり、たとえ成功したとしても誰からも感謝されず、面倒なことが持ち上っても誰も助けてはくれないことを知っていたが、人生への熾烈な探求欲が彼に承知させたのだ。彼は手始めにジュネーヴに向って出発する。だが、そこではすでに罠が待ち受けていた。迫力ある連続短編!
  • 壮大な「ヨクナパトーファ物語(サーガ)」のなかの代表作の一つ。主人公トマス・サトペンは、旧い南部のひとつの典型である。「土地と黒人と立派な家」を手に入れようと奮闘し、それを見事に実現したが、最初の妻に混っていた黒人の血の故に、サトペン家の一族は滅亡の道を辿る。その悲劇、宿命は、とりもなおさず南部の悲劇、宿命であり、しかも南部という風土の魔力と複雑さを反映して、底知れぬ怖ろしさをもたたえている。
  • 冒険家ケントンのもとへ、太古バビロニア帝国のころの石碑が送り届けられた。石碑が放つ芳香に興味をひかれ、ハンマーでそれを打ち砕いた瞬間、そこには一艘の船があらわれた! 瑠璃色の海の上に、宝石をちりばめた船が高々と浮いていたのだ。それは、愛と憎しみの船だった。天と地の女神イシュタルと、悪と死の神ネルガルの魂が乗りうつった船では、イシュタルに仕える尼僧シャラーネとネルガルに仕える僧クラネスの果てしない闘争がつづいていた。ケントンは一瞬呆然としたが、たちまち、神々の闘争の渦中に巻きこまれていった。そしていつしか、彼はシャラーネに魅かれていった。
  • 面白い小説である。作者の驚嘆すべき空想力は微に入り細にわたって、古代の文化や風俗を、絵巻物をくりひろげるように展開してくれる。怪奇あり、愛欲あり、冒険あり、ユーモアありといったふうで、読者を堪能させる。作者ワルタリはフィンランドの作家だ。時代は紀元前3300年代の古代エジプト、主人公は王の頭蓋切開師シヌヘで、新王国第18王朝のイクナートン王の失脚と死のあと、追放の身になってからその来し方を振り返る。エジプトでの数々の出来事はもちろんだが、シヌヘはシリア、ミタンニ、バビロン、クレタ、ヒッタイトなど近隣諸国にも足を運び、その豊富な経験を物語る。ワルタリは古代エジプトの歴史と風俗を研究した成果を本作に盛り込んだが、その正確さはエジプト学者の賞賛をも勝ちえた。
  • 数奇な運命を負わせられた女性フローラ・ド・バラルの物語。裕福な家に生まれるが父親が詐欺師の汚名を着せられて収監されたあとは、他人の好意にすがらざるを得ない境遇におちいる。彼女は南アフリカへ行く輸送船に乗って運命の転換を図ろうとする。この間に彼女の出会う出来事はすべて、コンラッドの他の作品にも登場するマーロウという男、ならびに彼女の関係した多くの人びとによって、多面的にさまざまな角度から語られる。父親が釈放され、同じ船に乗り込んで来たことで別の困難にも直面するが、最後にはハッピーエンドを迎える。投機やフェミニズムなどアクチュアルな社会問題も論じられ、それもこの作品の特徴となった。
  • 上流社交界に群れ集まる人々の恋愛心理のきらめきを、ひだを、投影を、反射を、てらいのない透徹した文体で描いた、天才ラディゲの十九歳の作。その人間心理のロマネスクを玻璃の建築の骨組みと見て「いつまでも目に残るのは、すべてを引き絞って大団円への効果へ収斂してゆく、その光学的構造であった」…三島由紀夫はこう書いた。
  • ウォール街の法律事務所で働くことになったバートルビーは筆耕を仕事にするが、だんだんと「仕事」を断るようになり、あらゆる依頼や命令に対して「わたしはしたくはありません」と言い張るようになる。そして最後には刑務所に送られて、食事を拒んで死にいたる。ビリー・バッドは平凡な水夫だが、不条理で抗いがたい宿命の糸にたぐられて、やがて古参兵曹長を撲殺してしまう。だが、軍法会議では、死刑を宣告されて絞首刑に処される。この作品は孤絶のなかで沈痛な思索の火を絶やさなかったメルヴィルの遺作となった。
  • 第一の魅力はプロットの網を巧妙に張りめぐらした物語の面白さである。ことにヘアデイル邸の惨殺事件をめぐる部分は、完全な推理小説。ポーが最初の部分を読んだだけで、トリックを見破ったと豪語したのは有名な話だ。人物造形の面白さはどうかというと、ゴードン卿の描写をはじめ、実在・架空を問わず、ディケンズ独自の細密画のようなペンによって、見事に提示されている。特に絶品なのは女性、しかもいやな女の描写で、ヴァーデン夫人やミッグズなどは、一緒に暮したら生きているのがいやになってしまうだろうが、読んでいると金縛りにかけられたような魅力を感じざるを得ない。本作の主人公はいつの間にか英雄になってしまうバーナビーであろう。最初の主人公である理性の人ゲイブリエルがバーナビーという白痴にその名誉ある地位をあけ渡したのは、作者が作品全体のライト・モティーフを、理性から狂気へと変えて行ったからに違いあるまい。(訳者あとがきより)
  • オーウェルがビルマから帰ってパリにいた一九二九年は世界大恐慌のはじまった年であり、彼がこの作品を書いていた翌三〇年、英国には失業者があふれていた。パリで彼は「職業として最低のまた最低」の皿洗いを経験し、英国では浮浪者のなかで暮したり、季節労働者としてケント州でホップ摘みをしたりした。その経験を活かし、大不況時代の社会の最底辺での生活を描いたルポルタージュ。世間からは好評をもって迎えられた。

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