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『グーテンベルク21、501円~800円(文芸・小説、実用)』の電子書籍一覧

1 ~60件目/全410件

  • 17世紀初頭のころ、剣と恋と冒険を求めてガスコーニュの田舎からパリへ出て来たダルタニャンは、無双の剣士ポルトス、アラミス、アトスの三銃士と終生変わらぬ友情の契りを結ぶ。4人はルイ13世の親衛隊のために働き、王と敵対するリシュリュー枢機官麾下の護衛隊と渡り合う。陰謀と奸計、恋と野望に身を投じるダルタニャンは、ガスコーニュ魂を発揮して着々と運命をきりひらいていく──鈴木力衛氏の個人完訳による、デュマのロマン歴史小説の傑作。
  • 発育不全児といえるジョンは、高等幾何学を解し、一般相対性原理を論ずる、おそるべき神童で、オッド(奇矯)とよばれた。それも不思議ではない。ジョンは、テレパシー、催眠術などの超能力をもつミュータント〈超人類〉だったのだ! 人間を劣等種属とみなす彼は、遠大な計画のもとに、仲間を結集して、独自の世界を建設しようと試みる。新しい人類によって地球を引き継ぐために! だが……ステープルドンの〈超人類〉テーマの傑作。
  • 「ロンドン・レヴュー」誌の寄稿家トッドハンターは、大動脈瘤であと数か月の寿命と宣告された。彼は熟考のすえ、余命の残るあいだに「有益な殺人を犯そう」という結論に達する。めざす人物はすぐに見つかった。それは「吸血鬼」とよんでもいいような酷薄非情な女だった。ファローウェイ一家はその犠牲となってあえいでいた。彼は拳銃を忍ばせて夕闇のなか女の家を訪れ、椅子にすわる女めがけて発砲した…「殺意」とならぶバークレーの代表作。
  • 660(税込)
    2024/5/17 (金) 配信予定

    「破滅の町」に住むクリスチャン(キリスト者)という男が、「虚栄の市」や破壊者アポルオンとの死闘など様々な困難をくぐり抜けて、最後に「天の都」にたどり着くまでの旅の記録の体裁をとった寓意物語。「この世より来たるべき世への巡礼の旅」が正式なタイトルだ。キリスト者が人生において経験する葛藤や苦難、そして理想的なキリスト者の姿へと近づいていく過程を描き、プロテスタント世界で最も多く読まれた宗教書である。
  • フリーマンは、ソーンダイク博士を主人公とした推理小説で人気を博した。倒叙推理小説の創始者として有名だが、他にも多くのソーンダイクものがあり、それらの中から短編を選りすぐって2巻にまとめたのが本書だ。なお、倒叙形式の作品だけ5編を集めた短編集「歌う白骨」全訳は、このタイトルのまま弊社から刊行されている。その最初の作品「オスカー・ブロズキー事件」を除く4編は、本書1にも重複して収められている。「ソーンダイク博士が、頭のはたらきのにぶいワトスン役のジャーヴィス医師にともなわれて、庭を散歩するようにロンドン中を歩きまわるすばらしい描写」については、レイモンド・チャンドラーがとくに指摘している。
  • 660(税込)
    2024/5/17 (金) 配信予定

    ヴェルレーヌは、マラルメ・ランボーらとともにフランス象徴主義の代表的詩人だ。終生飲酒・遊蕩の悪癖に悩まされ、貧窮のうちに施療病院で死んだ。妻を捨ててのランボーとの同性愛事件は有名で、ピストルでランボーを傷つけ2年間の獄中生活を送った。その詩は日本でも古くから紹介され、上田敏の「海潮音」をはじめ、永井荷風や鈴木信太郎らの訳詩によって親しまれた。
  • 770(税込)
    2024/5/17 (金) 配信予定

    オルテガはスペインの哲学者、社会批評家。1930年に刊行され多くの国で話題となった本書は、大衆社会論の嚆矢とされる。20世紀は「一つの揺籃期」であるかのように見える時代であり、《大衆》が誕生した時代である。《大衆》は、諸権利を主張するばかりで、自らにたのむところ少なく、しかも凡庸たることの権利までも要求する。オルテガはこうした大衆化に抗して、自らに課せられた制約を積極的に引き受ける《真の貴族》を対置して、個人の理性を超えた伝統や良識を座標軸にすえる保守思想を提示する。予言と警世の書。
  • ホームズの模倣作のなかで、一番正統な「嫡子」が本書のソーラー・ポンズだ。作者ダーレスはドイルに対して、「もうホームズものは書かないのですか」という手紙を書き、本人から「そのつもりはない」との返事をもらい、「では私が書きましょう」といって書き始めたのだから。著名な文学史家ハワード・ヘイクラフトは「シャーロック・ホームズの生まれ変わり(reincarnation)」という表現でソーラー・ポンズを評している。13編を収めた本邦初の作品集。
  • 660(税込)
    2024/5/17 (金) 配信予定

    アラゴンはフランスの詩人・小説家。パリ大学医学部卒。第1次大戦後のダダイスム・シュルレアリスム運動の推進者であったが、モロッコの植民地独立運動弾圧に反対して共産党に入党。第2次大戦中はレジスタンス運動に加わった。この詩集は多彩なアラゴンの詩を時代を追って集めてある。巻末には訳者による詳細な解説を付した。
  • 880(税込)
    2024/5/17 (金) 配信予定

    カリブ海の島国ハイチを舞台に、黒人奴隷、ブードゥー教の祭司マッカンダル、独裁者アンリ・クリストフによる、それぞれの革命と統治、その終焉を、黒人奴隷のティ・ノエルの視点から描いている。次々と繰り出される神話的・驚異的現実の数々がマジック・リアリズムの夢幻的な語りとして披瀝される。キューバのカルペンティエルは、アルゼンチンのボルヘス、グアテマラのアストゥリアスらと並ぶ現代ラテンアメリカ文学の先駆者の一人だ。
  • 「黒死荘」と呼ばれるまがまがしい因縁つきの邸宅を舞台にしての心霊実験…その主催者が密室のなかで惨殺死体となって発見される。扉にはかんぬきがかかり、窓には鉄格子がはめられ、雨夜のため、外には足跡も残されていなかった。唯一残されていたのは博物館から盗まれた短剣だ。怪奇・陰惨な犯罪に挑むヘンリー・メルヴェール卿を初めて登場させ、一躍「密室もの」で名を売ったカーター・ディクスンの代表作。
  • ネルーダはチリ生まれの詩人であり、政治家。1971年にはノーベル文学賞を受けた。ネルーダの声ははじめ、恋に破れた若者の死ぬばかりの嘆きをうたい、孤独をうたっていたが、マドリードの鋪道に流された子供たちの血を見て、その声はヒューマニズムの叫びとなり、ひとびとの怒りと涙をうたい、ひとびとの根ぶかい生活と希望を大きなスケールで反映したものとなった。
  • 18世紀末から19世紀初頭にかけてのヨーロッパの激動期、不世出の詩人と仰がれて活躍したイングランドの貴族出身のバイロン。長編物語詩「チャイルド・ハロルドの遍歴」などを発表してロマン派の旗手となったが、オスマン帝国からの独立をめざしたギリシア独立戦争に加わり、病に倒れた。「最初の近代人」といってもよいバイロンの詩は、今日のわれわれにも共感できる。
  • 作者ベイリーはロンドン生まれで、オックスフォード大学卒業後はジャーナリストに。一時は従軍記者になったが、そのころから医者で探偵役もつとめるフォーチュン氏を主人公とする探偵小説のシリーズを書き始め、1948年まで長編・短編あわせて23冊もの人気シリーズとなった。欧米各国で広く愛読され、英国探偵小説家としてはセイヤーズ、クリスティ、クロフツ、フリーマンとともに5大家と評される。フォーチュン氏は高級な詩や深遠な学問的、哲学的考察から、チョコレート・クリームにいたるまで、およそ人間的な喜びといえるものはどれとも無縁ではないし、料理と酒に対する関心は人後に落ちない。
  • セーヌ河岸の古本屋で版画集を見ている最中に突然倒れたブーベ氏。通りかかったアメリカ青年が、息絶えた氏の写真を新聞社に売り込んだことからこの物語は始まる。身寄りのない老人だと思われていたブーベ氏に、一人また一人とおよそ意外な関係者が名乗りをあげる。ブーベ氏の幾多の経歴に翻弄され、葬儀を出すこともままならない。そして次第に、戦中から戦後にかけての暗黒の世界が開陳されてくる。ブーベ氏とは、いったい何者だったのか。
  • ゲーテ、ハイネとつづくドイツ抒情詩の伝統に従って、自分の生活感情を単純素朴な詩句によってあらわすことに重きをおいた詩人ヘッセの全貌をうかがうことができる詩集。ヘッセは自分の病める魂の悲しみや嘆きや訴えを、天からさずけられた自分のリズムによってかなでる天成の抒情詩人だった。その詩は、人間の孤独感と、そこからせつなく響いてくる憂愁のしらべにつらぬかれている。
  • 「思考機械」(Thinking Machine)とはそもそも何者なのか。これはれっきとした探偵の名前で、アメリカ生まれのシャーロック・ホームズの仲間だ。「いかなる問題も、すべて単純な知的操作によって数学的因子に還元されるはずなのだよ」オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授(これが彼の本名だ)は、力を込めて言った。作者フットレルは、ジョージア州生まれで、一九〇五年、「思考機械」の別名を持つ探偵が活躍する推理小説「13号独房の問題」を発表して人気を集めた。以後、「思考機械」ものの推理小説で欧米の人気をさらったが、奇しくも一九一二年、タイタニック号の遭難事故で死亡した。「思考機械」ものの推理小説は、ポーストの「アブナー伯父」と並びアメリカン・ミステリの古典として高く評価される。
  • ジャン・シャボは、金持ちを上得意とする産科クリニック医師で、パリ大学の教授でもあった。揺るぎない社会的地位と潤沢な経済基盤を持ち、自信に満ちた人生を送ってきたが、家中をめぐる人間関係に失敗し、医療過誤におびえてもいた。それを癒やしてくれた唯一の若い女「熊のぬいぐるみ」が自殺したとき、そして匿名の男からの脅迫にさらされたとき、彼は拳銃をポケットに一切の決着をつけるべく夜の町へと出かけていった。シムノンのサスペンスが冴える。
  • 貧乏な少年が有名な画家になるという、なかば自伝的な小説。舞台はベル・エポック時代におけるパリの労働者階級の住むごたごたした街だ。ルイは6人の子供のうち下から二番目で「ちび」だ。小学校へ入学すると、どんないたずらをされても絶えず微笑んでいるので、《ちびの聖者》という綽名をもらった。子供たちは成長するにつれて、一人ずつ家から出ていった。ルイは絵を描くのが好きだった。ふとしたことから画商の目にとまり、次第に売れていく。そして天賦の才を見事に開化させる。シムノンの最高傑作という評もある。
  • オーストリア帝国の支配下、祖国ハンガリーの独立をめざして画策していたサンドルフ伯爵は、自邸にもぐりこんだ裏切り者の密告によって、同志ザトマール伯爵、バートリ教授とともに牢獄につながれ、死刑を宣告される。三人は裏切り者の正体を知って、脱獄を決行する。だが脱獄は失敗、同志ふたりは殺され、サンドルフ伯爵は追い詰められて海の藻屑と消え、生死不明となる。作者ヴェルヌは本作をデュマの「モンテ・クリスト伯」へのオマージュとして書いたと述べている。
  • 英国南部、海を見下ろす崖の上に建つエンド・ハウス。その家の若く魅力的な女性の持ち主ニックは、続発する奇妙な事故に悩まされていた。重い額縁の突然の落下、ブレーキの故障、落石……。たまたまリゾートにやってきたポワロの目の前で、ニックが狙撃される。彼女の命を守るため、ポワロの灰色の脳細胞が働きはじめた。意想外の展開をみせるクリスティ初期の「ポワロもの」力作。「危機のエンドハウス」の新訳。
  • ホームズの世界を楽しめる作品。名だたるホームズ嫌いがアメリカ映画「まだらの紐」の脚本担当になったため、「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」の会員からの非難が相次いだ。一計を案じた会社は嘱託として会員をハリウッドに招待する。ところが、パーティの席に現れた当の脚本家が殺される。しかも、死体が消えた! 暗号・密室・国際的陰謀……シャーロキアンがもてる知識をフル動員して推理に当たる。
  • 年上の人妻への恋の甘さと苦さのなかに、悩みさまよう若い魂。だが主人公は最後に、自己に忠実な生き方を求めて田舎に引退する。こうして本作は一つの魂の自己形成の物語となり、青春の香気にみちた作品となった。「崇高な書物というのではない、友のような本だ。そっと親しく話しかけてくるので、読んでいると、何か自分自身と語っているように思われ、この他に友はいらぬといった気がするくらいである」これはアンドレ・シイドの言葉だ。プルーストの先駆とされるフランス恋愛心理小説の代表的名作。
  • ロンドンのビクトリア駅発パリ・マルセーユ経由ニース行きの特急「ブルートレイン」。その中で米国の富豪の娘ルスが殺害され、「ハート・オブ・ファイア」と名づけられたルビーの宝石が奪われる。この宝石はもとロシアの女帝の胸をかざり、苦悩、絶望、嫉妬など、その通ってきた道に、悲劇や暴力の数々を残してきたいわくつきの宝石だった。たまたま同じ列車に乗り合わせたポワロは「私は、エルキュル・ポワロでございます」と言いながら取り調べをする警察署長の前に姿をあらわした。「青列車殺人事件」の新訳。
  • 21人の客をのせ、パリのル・ブールジェ空港を飛び立ちロンドンへと向かっていた旅客機の自分の座席のなかで、マダム・ジゼルは死んでいた。少し前、客室内を飛ぶ一匹の黄蜂が目撃され、父子づれの乗客のそばに飛んでゆき、その息子によって退治されていた。不思議なことに、マダム・ジゼルの首筋には、蜂に刺されたような小さな傷跡があった。機内という密室殺人にいどむポワロ。紀田順一郎が若いときに感銘をうけ、あらためて読んで「やはり面白い」と絶賛したクリスティ作品。「機上の死」の新訳。
  • マビノギオンは英国南西部のウェールズに古くから伝わるケルト民族系の英雄譚だ。吟遊詩人によって伝承されてきた物語はさまざまなウェールズ語古文献に記されていたが、ゲスト夫人によって英訳編纂されて、日の目をみた。その中の最も真正な部分をなすのが「四つの枝のマビノギ」であり、夫人によって「マビノギオン」と名づけられた。この四編はともにキリスト教侵入以前のウェールズ神話に元があり、魔法と夢とが全編をつらぬき、素朴だが力強い想像力に裏打ちされた物語になっている。巻末には荒俣宏氏による簡潔な「解説」を付してある。
  • 放縦にして絶大な権力と金力の所有者である若い教王(カリフ)ヴァセックは、あらゆる倫理的覊絆を無視して官能の快楽をひたすら追い求めて、ついに破滅するにいたる。この道を突き進んでゆけば破滅以外にない。だが解放されようともがけばもがくほど、ますます深みに陥るばかり、待っていうのは魔王の館の憂愁苦悶のみである。希代の遊蕩児ベックフォードの自伝ともいえる奇書。ヴァセックとヌーロニハールの運命はそのまま作者の運命でもあった。ゴシック・ロマンスの代表作。
  • 「この本を読む前に、あなたは静かに発狂するがよろしい。それがこの本を完全に楽しむための唯一の方法である。あなたが現代人であり、合理主義者であり、不可知論者であり、科学精神のもちぬしであることを忘れなさい。あなたの心の奥深く隠れたもろもろの本能を、原始的な欲望を、解き放ちなさい。あなたの礼儀作法という名のバンドをゆるめ、あなたのスーパー・エゴの抑制を解きなさい」このグロフ・コンクリンの言葉に尽きる。
  • ダンディな元舞台俳優が海辺の邸宅で催したパーティで、招かれた土地の牧師がカクテルを飲んだとたんに急死した。招待客の一人だったポワロにも「事件」とは思われなかった。だが悲劇には第二幕が。まったく同じような状況での同じような急死が……灰色の脳細胞が活動を開始する。クリスティ中期の代表作。
  • ディエップの港湾駅で働くマロワンはある夜、船でロンドンから来た男が、相棒の男をドックの中に突き落としたのを、転轍操作室の塔の中から目撃した。相棒は小型スーツケースを持ったまま、ドックの底に沈んでいった。マロワンが小型スーツケースを回収してみると、中には大金が。殺人現場を見られたと悟った男は、いったんは逃げたが、マロワンを疑い、彼の家の近くを徘徊する。妻や娘がいる普通の家庭生活と、殺人犯の大金を横取りした男の不安と恐怖は極限に…強烈なサスペンスが漂う名作。
  • ブラウンのSF第二作。第一作「発狂した宇宙」、第三作「火星人ゴーホーム」のどちらとも異なり、ブラウンの幅の広さを感じさせる作品だ。主人公、宇宙飛行士のマックスはもう57歳になるが、こうつぶやく…銀河系の中だけにだって、約十億の恒星がある。おまけにその大半には惑星のおまけがついているんだ。かりに一つずつとして、十億の惑星だ。もしその惑星の中に、千について一つずつ地球と同じ種類に属するものがあるなら、その数は百万だ。百万個の世界が、待ち受けているんだ…宇宙ロケットに賭ける一人の男の姿をリアルに描いた本書は、今もなお古びることなく、胸に迫る。
  • 舞台は、火星と金星が、地球の植民地となった時代だ。政治をはじめすべてのことが腐敗しきっている。主人公クラッグは一匹狼の犯罪者で、タフ・ガイである。大酒飲みだが、仕事をしているときは酒に手をふれないという自制心をもっている。一度目の結婚にこりた女嫌いである。そんななか、はるか彼方の異世界から「考える岩」がやってくる。こちらも「はみ出し者」だ。似たもの同士はいったいいかなる「交渉」をおこなうのか。奇才ブラウンのSF長編。
  • ブラウンは、奇抜な着想を卓抜な技巧でまとめていく才筆家として定評があるが、それとともに彼は、いつも作中の人物を温かいまなざしで見つめて描いていく作家である。この作品の主人公ベイリーも例外ではない。一青年のやるせない青春像を鮮やかに浮き彫りにしたサスペンス小説だが、基本のストーリー展開のなかにラジオ、映画、スポーツ放送、ビデオ、演劇等の台本の形式を挟んで、結末を小さな新聞記事で締めくくり、奇才ぶりを見せている。
  • 牡猫のムルは魔術師のアブラハムに拾われたが、ご主人が声を出して本を読むのを聞き、文字を目で追ううちにドイツ語を習得した。ムルは才能にめざめ、羽根ペンで自伝を書くようになる。ホフマンの友人がムルの原稿を目にし、ホフマンに渡す。ホフマンは出版社を見つけてやり、見本刷りを見てびっくりした。自伝は各所で別の文書で中断されていた。ムルはインクの吸取り紙として、手元にあった『クライスラー伝』のページを破って使っていたのだ。だが、ホフマンは『クライスラー伝』の価値を認めていたので、目印を入れてそのままの形で出すことにした。なので原書の正式名は『牡猫ムルの猫生観ならびに偶然の反古に含まれた楽長ヨハネス・クライスラーの断片的伝記』となった。こうしてアイロニー豊かなムルの伝記部分と、犯罪推理小説仕立ての「クライスラー伝」が交互に展開する奇妙でおもしろい本書が完成した。
  • 落ちぶれ貴族のジャンヌ・ド・ラ・モット伯爵夫人は、ルイ16世の宮廷に出入りするという野望を胸に抱いていたが、ふとしたきっかけから王妃マリー=アントワネットと顔なじみになり、足がかりを得る。王妃のお気に入りの美女アンドレは、恩義を感じる海軍軍人シャルニー伯に恋心を覚えたが、シャルニー伯のお目当ては王妃だった。アンドレの兄フィリップも王妃に気があった。王妃は次々と画策される陰謀にまどわされる。王はあるとき王妃の行動を疑ったことを恥じ、お詫びに高価な首飾りを贈ろうとするが王妃は受け取らず、首飾りは宙に浮く。カリオストロ伯は陰謀を企む謎の人物だ。彼は王妃に関する醜聞を広めようと、王妃と瓜二つの容貌を持つ、オリヴァという無名の女を利用して、有名なサロンに行かせて錯乱を起こさせたり、オペラ座の舞踏会に行かせて、王妃としての品位を傷つけるように仕向けたりした。
  • 学生ナタナエルは幼い頃に母親や婆やから、眠らない子供の目玉を奪っていくという「砂男」の話を聞かされ、しだいにその実在を信じるようになる。ナタニエルは青年になっても砂男の影に脅かされつづけ、理性を失ってゆく。併載した「ブランビラ王女」はローマの謝肉祭を舞台に、奇妙な恋の幻想に取り付かれてゆく若者たちを描いている。どちらも現実と幻想のあいだを往き来するホフマンのファンタジー。池内紀の「解説」所収。
  • 一輪のバラの花から不思議なめぐりあわせで、野獣の住む館に出向いた美しい娘ベル。そこでベルを待っていたものは……詩人ジャン・コクトーが映画化し、話題を集めたこの作品は、フランスの作家ボーモン夫人が、フランス革命へむけて奔流する世相のなかで、後世へと書き送った愛のメッセージである。「フェルメール流の雰囲気の漂う美しい表題作を中心とする、ボーモン夫人的な幻想に富んだ仙女物語を味わっていただきたい」訳者はこう述べ、全部で15編を選んだ。
  • 女優キキの旅興行の宣伝のために連れてこられた黒豹が、衆人環視のなかを逃げだして姿をくらます。やがて、無残に引き裂かれた娘の死体が次々と見つかる。美しい犠牲者を求めて彷徨する黒い獣を追って警察は奔走するが、その行方は皆目見当がつかない。そもそも、そろいもそろって若い美人ばかり狙うというのも、殺し方が残虐そのものというのもおかしい。キキのマネジャーは疑念を抱いた。…アイリッシュの「ブラックもの」の代表作!
  • 「13の秘密」はパリを舞台に、探偵趣味のルボルニュ青年が新聞記事を手がかりに13の犯罪の謎を解明する連作短編集。有名なミステリー評論家アントニー・バウチャーは「純粋に頭脳だけで事件を解決するという点でルボルニュに比肩しうるのは『隅の老人』だけだ」と絶賛している。「第一号水門」はメグレもの初期の長編…老船頭のガッサンは運河に落ちるが、救出される。同じ場所で、界隈の河川運行を仕切るデュクローが、痛手を負い意識を失っていたところを助け出される。デュクローの息子ジャンが、父を襲ったのは自分だと告白する手紙を遺し自殺を遂げる。翌日、さらにベベールなる水夫がシャラントンの水門で縊死死体となって発見される。
  • モーム晩年の70歳の作。1944年、米国滞在中に書かれ、第二次大戦中だったため、主人公ラリーの生き方に共感した米国の青年たちに歓迎され、熱狂的に読まれた。物語はモームによって語られる。モームはたまたま立ち寄ったアメリカで旧友エリオットから、姪のイザベルと彼女の婚約者ラリーを紹介される。ラリーは第一次大戦で親友を失い、途方にくれ、道を求めてヨーロッパを放浪する。当然ながら婚約者イザベルはついてゆけず別の男に嫁した。ラリーはさまざまな体験を経て、最後にはインドで自分の人生の目的を悟る。この本筋のなかに、エリオット、シュザンヌ、ソフィらを巡る数々の物語が組み込まれ、全体は周到なエンターテイメントになっている。
  • この作品の原題は「ル・グラン・モーヌ」(でかのモーヌ)という。生徙たちの敬愛を一身にあつめた「でかのモーヌ」は、ふとした偶然から、ふしぎな冒険にまきこまれる。見知らぬ古い城館にまぎれこみ、そこで「この世の人とも思えない」美しい女性にめぐり会う……。未知なるもの、永遠なるものへの止みがたい憧れに満ちたこの小説は、宝石の輝きにも似た美しさをたたえる、二十世紀青春文学の傑作だ。作者フールニエはこの作品だけを残して28歳で死んだ。
  • 未成年シャボーとデルフォスはキャバレー「ゲー・ムーラン」で閉店まで遊び、売上金を盗もうと隠れていた。だが、二人は客の一人が死んでいるのを発見し、泡を食って逃げる。翌日の夕刊は、この男が柳行李詰めの死体として発見されたと報じた。ジャンは思いを寄せる踊子の部屋に行き、そこで昨夜の客が持っていたはずのシガレットケースを見つけて真っ青になる。外に出たジャンは大柄の男につけられていた…。「三文酒場」の舞台はパリとその郊外だ。メグレはサンテ監獄で、死刑が翌日に迫ったジャン・ルノワールという男と面会する。そしてまだ捕まっていない彼の共犯者が、三文酒場なるところの常連であると明かされる。メグレは《三文酒場》を探そうとするが…。
  • 神話や伝説をもとにしたワーグナーの他の楽劇と異なり、本作は「史実」をとりあげて題材としている。主人公ハンス・ザックスは16世紀に実在した「マイスタージンガー」の一人であり、靴屋の親方だ。本作で、ザックスは、部外者ヴァルターの歌の革新性を認め、芸術における伝統と革新のみごとな媒介に成功する。第三幕の「歌合戦」に向けて壮大なドラマが展開され、「伝統」を讃えるザックスとザックスを讃える人びとの明るい歌で幕となる。
  • 「ハードボイルド派探偵小説界の長老」と評されるハメットの短編全集その1。第一次世界大戦後のヘミングウェイを初めとする〈失われた世代〉の作家たちに刺激を受けて登場したハメットは、推理小説に革命をもたらした。その作風は「ハードボイルド」と名づけられている。名探偵コンチネンタル・オプの地方での事件を扱った表題作を中心に、「黒づくめの女」「うろつくシャム人」「新任保安官」「放火罪および…」「夜の銃声」「王様稼業」の7編を収録した。
  • イギリス社会の縮図さながら、教養主義的なシュレーゲル一家と、現実主義的なウィルコックス一家が対比され、さらに貧しい会社員バスト夫妻が配されるなかで、対立する価値観をもった両家を、ウィルコックス夫人とマーガレット・シュレーゲルという2人の女性が結びつける……知識階級のなかで育ったドイツ系のシュレーゲル姉妹が、下層階級の人々との交わりを通じて、傷つきながらも人間的成長を遂げる物語であり、女性を主人公とする教養小説の傑作だ。著者の代表作でもある。
  • 貧しい庶民の生活を瑞々しい感覚で描いたフィリップの代表作。この作品は、パリの裏街で春をひさぐ薄幸の少女ベルトと彼女のヒモで「モンパルナスのビュビュ」と仇名される若者の物語だ。そこに展開されるのは汚辱に満ちた暮らしだが、貧しく虐げられた者たちに注がれる作者の眼は、愛と優しさに満ちている。この作品は二十世紀の「神曲」とも評される。フィリップの初期作品「やさしいマドレーヌ」を併載する。
  • 医者のピエールと弁護士のシャンは仲のよい兄弟だが、激情家の兄と、柔和な弟はまったく性格が異なり、たがいに嫉妬を感じていた。ある日、シャンに思いがけない遺産が舞い込む。それをきっかけにピエールは、弟は誰の子なのか、愛する母には秘密があったのではないかという深い疑惑にとらわれる……。まえがきの「小説について」は、作者自身がこの作品に付けたもので、心理研究の文学であることをうたっている。モーパッサンを好きでなかった漱石も、この作品については「名作ナリ」と激賞した。
  • ロンドン警視庁内に設置された「不可能犯罪捜査課」の活躍を描いたシリーズ作品を中心にしたカーの短編集。独創的なトリックの数々を駆使して独自の世界が展開する。手袋だけで男が殺された怪事件の「新透明人間」、雪に残された足跡トリックの典型「空中の足跡」、四人組銀行強盗はつかまったが、肝心の金がみつからない「ホット・マネー」、評判ダンサーが楽屋でハサミを背中に刺されて死んでいた「楽屋の死」など10編。うち後半4編はシリーズ以外の怪奇事件を扱っている。
  • 流れ出してきた有毒ガスに全員がたじろぐなか、ヘンリー・メリヴェール卿は部屋の中に突進していった。ストーブから、不気味な音とともにガスが吹き出している。その前には、断末魔の苦悶にさいなまれた動物園長の死体が! しかも、その部屋は内側からゴム引きの紙で目張りされていた。空襲警報が鳴り響く戦時下ロンドンの、有名な爬虫類展示館で発生した奇怪な密室殺人事件をメリヴェール卿が暴く。
  • 第一次世界大戦の西部戦線に投入されたドイツ軍志願兵たちが経験させられた「戦争」。相次ぐ激しい戦闘、戦友の無残な死、帰郷、負傷などのエピソードが次々に語られ、ドイツの若者が負った苦しみの深さが胸をうつ。だが軍司令部からの報告は「西部戦線異状なし」(Im Westen nichts Neues)だった! 1929年に発表されると15カ国語に翻訳されて、世界中で350万部を超える大ベストセラーとなった。
  • カルタにはいっさい手を出さなかった青年将校ゲルマンは、フェードトヴナ老伯爵夫人が必勝法を知っていると聞くと、老夫人の書斎へ忍び込み、ピストルまで突きつけて秘伝を教えろと強要する。老夫人はショックのあまり死んでしまう。ある夜、夫人はゲルマンの夢枕にあらわれて、「三」「七」「一」の順で張れと教える。ゲルマンは「三」で勝ち、「七」で勝ち、最後に「一」を張る。だが、出たのは…。「大尉の娘」はプガチョーフ反乱をバックに辺境の砦の大尉の娘マリアをめぐって展開される歴史小説と家庭小説をミックスさせた物語で、プーシキンの最大傑作といわれる。
  • 幕末の万延元年(1860年)、日米修好友好条約批准のために、幕府は77人からなる大規模な使節団をアメリカへ派遣した。正使・新見(しんみ)豊前守、副使・村垣(むらがき)淡路守、監察・小栗(おぐり)豊後守であったが、役人、多数の従者、勘定方、目付方、医師、まかない方などまで同道した。年齢は30代前半くらいが最も多かった。この珍客を迎えて、アメリカは国をあげての大騒ぎ、歓迎の嵐だった。一行は臆することなく行動し、珍談奇行の数々を披露、そこには初めて触れる西洋文明への素朴な驚きと巧まざる批判も生まれた。だが、帰国した故国の風は冷たかった。一行を送り出した井伊大老は暗殺され、この痛快無類の親善旅行の成果も、時代の大波にのまれてしまった。本書は村垣淡路守の子孫、服部逸郎が長年をかけてまとめた行状記で、多くの図版とともに忘れられた歴史の1ページがありありと眼前によみがえる。
  • 古代ギリシアの詩人ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』は、トロイア戦争後の英雄冒険譚だ。ギリシアの勇将オデュッセウスは一路故郷をめざすが、海神ポセイドンの怒りをこうむったため、簡単にはいかない。オデュッセウスは、10年にもわたって海上を放浪し、行く先々で嵐、難破に遭い、キュクロプス、魔女キルケ、鳥女セイレン、怪物スキュラとカリプディスなどに遭遇し、数々の危難にみまわれる。オデュッセウスはようやく妻ペネロペの待つ故郷イタケに生還するが、なお最後の困難が待ち受けていた。作者エヴスリンは古代ギリシアの一大ページェントともいえる物語を楽しく語ってきかせる。
  • ひとつの金のリンゴをめぐって、ヘラ、アテナ、アプロディテの三女神が自分が欲しいと言い張る。ゼウスは一番美しい者に与えるといい、その審判をトロイアの王子パリスに任せた。パリスはアプロディテを選び、その手助けを得て、スパルタの王妃ヘレネの誘拐に成功する……これが10年にわたるギリシア・トロイア間の戦争の発端だった。アキレウス、アガメムノン、オデュッセウス、パトロクロス、ヘクトルなど数多くの英雄が戦い、倒れるなか、知将オデュッセウスの「木馬の計」でトロイアは陥落する。作者エヴスリンはホメロスの叙事詩『イリアス』の中味を好個の読み物として提供する。
  • サリンジャー自身が自分の書いた作品から選び出した9編の短編作品集。いわゆるグラス家物語の端緒をなすと考えられる「バナナフィッシュに最良の日」を含む9編が収められている。現代人の分裂する心情を清新な文体と歯切れのいい会話を通して、極めてシンボリックに描くこの作品集には、短編作家としてのサリンジャーの特質が遺憾なく発揮されている。読書そのものが「挑戦」ともなる作品集。
  • 心中にひとかけらの誠意も愛情ももちあわせない青年デュロワが、つぎつぎと女性を誘惑し、女たちを踏み台にしてまたたく間に立身出世をとげる物語だ。デュロワは、教養も知性もあるわけではないが、新聞社の社長の娘を誘惑することによって編集長の地位を得る。社長のワルテルは新聞を利用して政界と結びつき、投機によって莫大な資産を築く。そこに描かれるのは、弱肉強食の熾烈な社会、虚偽が誠実を打ち負かす社会だ。パリの並木道を着飾った名士たちが得意げに散歩しているのを見ながら、「たいしたもんだよ、女たらしに悪党ども!」とデュロワは叫ぶ。
  • ラシーヌは17世紀後半のフランス古典悲劇を代表する作家だ。彼は幼くして孤児となり、修道院で教育を受けた。はじめモリエールの庇護を受け、劇作家としての道を歩み出した。「アンドロマック」は愛の情念をうたうラシーヌ悲劇の出現である。「ベレニス」はローマ皇帝とパレスチナ女王の別離という最小単位の素材から、悲劇を成立させる実験であり、表現の優雅さがうかがえる。「イフィジェニー」と「フェードル」はギリシア古代劇と対比されるラシーヌ劇の最高峰である。
  • パロディ満載の、傑作ユーモアSF・シリーズ。星間調査部隊少尉だった地球青年ジョーンズは、宇宙船の事故で太陽系から500光年はなれた惑星上に不時着した。惑星の名はトーカといい、ホーカ人が住んでいた。ホーカ人は、テディベアをそのまま大きくした恰好の生き物で、想像力にあふれて純真そのもの。地球の情報を手にすると熱狂し、あらゆるものをそっくり真似してしまった…カウボーイ、ドン・ジョヴァンニ、宇宙パトロール隊員、ジャーロック・ホームズ……。さて、ジョーンズの前に次々起こるてんやわんやの大騒動の結末はいかに。
  • スイスの診療所に入院していたアメリカの富豪の娘ニコルは、若いアメリカ人の医師ディックを恋し、やがて二人は結婚する。だが、ニコルには暗い過去があり、精神を病んでいた。ディックも夫と付添医師という二重の役目を負わされる。二人の子にも恵まれた平穏の暮らしのなかへ、ハリウッドの新進スター、18歳のローズマリーがあらわれ、ディックはその誘惑に抗しきれなくなる。深酒にふける彼のモラルの崩壊はこのときから始まる。だが、夫の愛情が冷めてゆくにつれて、ニコルは精神の健康をとり戻し、以前から秘かに彼女への思慕をつづけてきたトミー・バーバンへ走る。…「ジャズ時代」の申し子であった作者の野心作であり、すぐれたドキュメンタリーな作品ともいえる。
  • 砂嵐の猛威と旱魃、大資本の進出に父祖の土地を追われたオクラホマの小作農ジョード一家は、一片の宣伝ビラの文句に誘われて「緑なす、たわわに果実の実る、職のある」カリフォルニアを目指して長い旅路につく。売れるだけの家財を売り払い、二頭の仔豚を屠って塩漬けとし、中古おんぼろ車を急造トラックに仕立て、一族12人に元説教師をくわえた一行13人は国道66号線をひたすら走る。だが、国道は同じように西へ移住しようとするトラックでいっぱいだった。災厄がつぎつぎと降りかかる。次男トムとおっかあは知恵をしぼり、気力をふりしぼって一家の苦難を支える……カリフォルニアは確かに「緑したたる」場所であった。だが、そこは夢にみた楽園ではなかった。俗語や卑語を駆使し、全体状況をさしはさむテンポのよい構成で、力強くうたいあげた社会小説、家族小説。ピューリッツァー賞を受けた、スタインベックの代表作のこの作品は、20世紀アメリカ文学の金字塔である。

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