さぁ~始まった! 寝たきりだったこの体。何とか普通の生活にまでとは言わないが、リハビリで快復できるところまで快復させなくてはならない。私は甘く考えていた。筋肉を無くした体と言う物は、なんと頼りないものか。車いすに乗り移るところから始まるのだ。たかがそれさえもできない。ぶらんぶらんの足には立つ力さえない。人の力を借りてやっと車いすに座った。だが、靴さえ履く力が足から消えていた。トイレの便器に座ってもパンツも脱げない。ウンチも指で引き釣り出さないといけない。ウンチが出てしまったのかどうかも分からない。私は号泣した。あまりに厳しいリハビリに「やめた!」とは言わなかったが、足が象のように腫れ上がった。楽しいこともあった、夜中に仲良しの教授と患者仲間で病院の渡り廊下で花札をして、自分の辛さを忘れようとした。え~教授やった。大好きやった。私は何故こんな体になったのか? 今も不信感を拭い去ってはいない。真実は、今も聞いたことがない!
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本当の退院をしてから、しばらくは将来への希望がもてた。だが現実はあまりに厳しく私は自暴自棄になり男と遊び歩いた。
私は苦しみを乗り越えた女のように振舞っていたが心はボロボロに壊れていた。車いすの生活に入っていくが、まだまだ現実を見ようとしない私は狂ったように遊び歩いた。
この2年間の破天荒が私を再び入院させた。退院して2年目に障がい者手帳を持った。今度は障がい者としての生きる道を探る必要になった。
私にできることは簡単には見つからなかった。息子の父親には本当に捨てられた。世間からは妻子ある男と付き合った報いだと言われた。お陰でいろんなこと体験した。ぎょうさん泣いた。ぎょうさん苦しんだ。そして何回も自殺未遂をした。
だけど今、思い返すと、生きている自分がすきや。苦しんだ分相手の苦しみにも触れることができた。
私の心は少しずつ変化を見せて行った。心が寄り添うことを学んだ。ちょっと優しくなったかもしれない。
今日をがんばろうよ! やってくる明日のために! そして命を生きようよ!
☆シリーズ最終話
各440円 (税込)
私の脊髄の束にばい菌が、へばりつき巨大化して、私の下半身を麻痺へとおいやった。40日間病院のベッドで寝たきりになった。おしっこは尿道に管が突っ込まれて、自動的に袋にためる。ウンチはベッドの上で、気張ってする。自力で動けない患者になると言うことは、羞恥心をかなぐり捨て、人に媚さえ売って生きると生きやすく思った。自分の人生は、もうこれで終わったと、観念したのに、助けられて障害者へとなっていく。悪性やったら、障害者にならずに、この世とバイバイ!できたのに。助けられた。それも中途半端な私が「いっちょ!あがり!」私は心で泣いて顔で笑う、ナイス!な身体障害者への一歩を踏み出した。障がい者とは、どうあるべき?を学ぶ。
手術は傷ついた体を、元に戻してくれるものではないことを知る。術後の体の変貌に私は恐怖した。脊髄の神経を触る手術は「分かったか? こうなるのや!」夢で聞こえてくる脅しのような声に未来を拒んだ。術後もまだベッド上でウンチもシッコも紙おむつを敷いた上で出していた。明日が想像できなかったが、リハビリは容赦なく始まった。ベッドの端に座り足を下に下ろしたのは始めてだった。ぶらんぶらんと、ただ垂れ下がった肉の塊だった。筋肉を失うということを体感した。靴なんかとても履けやしない。自分の手で自分の足に靴を無理やり履かした。真っ白なバレーシューズ! 小学生の時の上履きを思い出した。惨めな自分しか想像できなかった。息子がいなかったら、今の私はいなかった。
さぁ~始まった! 寝たきりだったこの体。何とか普通の生活にまでとは言わないが、リハビリで快復できるところまで快復させなくてはならない。私は甘く考えていた。筋肉を無くした体と言う物は、なんと頼りないものか。車いすに乗り移るところから始まるのだ。たかがそれさえもできない。ぶらんぶらんの足には立つ力さえない。人の力を借りてやっと車いすに座った。だが、靴さえ履く力が足から消えていた。トイレの便器に座ってもパンツも脱げない。ウンチも指で引き釣り出さないといけない。ウンチが出てしまったのかどうかも分からない。私は号泣した。あまりに厳しいリハビリに「やめた!」とは言わなかったが、足が象のように腫れ上がった。楽しいこともあった、夜中に仲良しの教授と患者仲間で病院の渡り廊下で花札をして、自分の辛さを忘れようとした。え~教授やった。大好きやった。私は何故こんな体になったのか? 今も不信感を拭い去ってはいない。真実は、今も聞いたことがない!
大学病院から自宅近くの病院に帰ってきた。その病院でのシャワー室の椅子に丸い穴があいているのを発見! 座ると私の陰部や肛門は椅子の下から丸出しとなった。介護用品には羞恥心は、つき物なの? 大学病院のリハビリとは格段の差があった。自分のやる気にすべてがかかってきた思いがする。ますます厳しく過酷に自分を鍛える私。少し人間関係に悩まされ始める私は、見た目で噂話の餌食にされることに嫌悪した。自宅に近いと言うことは知り合いも多いということになる。興味本位で見られることに、私の心は傷ついていく。乳がんの転移で違う病院に入院していた親友の志津江の臨終に電話で立ち会う私は、命の儚さと残酷さを感じてしばらく動けなくなった。志津江の通夜に友人たちの応援で行くことができた。この現実が今の後遺症に悩む私の外出の姿になろうとは、この時点では想像すらしなかった。私はどこかに歩けるようになると、根拠のない妄想を抱いていたのだと思う。
やっと自宅近くの病院に帰って来た。これを前進とは思えなかった。私はまだ本当の障がい者にはなっていなかった。しかし体の不自由さが鮮明になってきた。耐えられなかった。受け入れられなかった。私はたくさんの物を失った、だがまだ確かめていない体の器官があった。それはクリトリス。私のクリトリスは生きているのか? それとも無くしてしまったのか? 医師に聞いても答えてはもらえなかった。何故、性の話は避けていこうとするのかが私には理解できなかった。患者は苦しんでいる。興味本位で聞いているのではない。私は私の方法で解決の道を探した。信頼できる男に私の悩みと苦しみを伝えた。そして入院中に男とラブホテルへと入った。私の背中のミミズばれの傷を見て一瞬たじろいだが、男は優しく愛撫をして私のクリトリスを蘇らせた。そして私の中へと入ってきた。私は男の胸の中で慟哭した。相手は内縁の歯医者ではなかった。脊髄の神経はまるで人間の体を征服しているかのようだ。
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