「父母の死、恋愛、離婚、自身の老い、日常生活の上での体験が否応なしに私を変えてゆき、詩もそれと無縁ではあり得ないことをあらためて感じる。かつてヴァレリーは詩と散文の違いを舞踊と歩行という比喩で説明したが、踊るにも歩くにも人は手を使い、足を用いる。そして手足を動かすのは人の心である。詩と散文の源にある心身と、心身がからみあう人間関係のほうにようやく私も目が向くようになった。」
220円〜990円(税込)
「画家の香月泰男さんと1966年秋ニューヨークでお会いし、一緒にハドソン河上流へドライヴした。〈旅〉の連作はその年から翌年にかけての旅行の経験にもとづいています。」
「これは新聞、雑誌のもとめに応じて書いた作品からえらんで編んだものですが、いわゆる現代詩が現代音楽とすれば、この本に収めた作品はポップスにたとえてもいいようなものも多く、どんなふうに読んでもらえるのか、刊行当時はあまり自信がありませんでした。」
「『ことばあそびうた』に収めた「ののはな」なんて、あまり短いんでね、二番もつくりたかったんですよ。で、一生懸命考えたんだけど、どうしても二番がつくれなかった。……ふつうの詩っていうのは、なんとなくこうインスピレーション的なもので、ポコッとことばが出てくるんだけど、「ことばあそび」に限っては全然それがなくて、もう完全に手仕事なんですね。だから、「かっぱらっぱかっぱらった」みたいな、そういう一行がフッと思い浮かぶと、あとは「かっぱ」「らっぱ」「はっぱ」「なっぱ」みたいに「ぱ」で終わる破裂音みたいなものを探していくわけです。」
「海鳴りのような魂のざわめきの中に一人のあなたがいます。そして私もいます。詩の言葉は私の中から生まれるのではなく、私を通って生れてくるのです。それは私の言葉ではありますが、私だけの言葉ではなく、あなたの言葉でもあるのです。私にとって、インスピレーションを待つとは、見知らぬあなたの、言葉にならぬ魂のきしみに耳をすまそうとすることだと言えるかもしれません。」
「この詩集では、いろんなことを「定義」しようとしてみましたが、結果的には、言語というものでモノやモノゴトを完全に定義することは不可能なんだと思いました。収録した「私の家への道順の推敲」では、南阿佐ヶ谷から成田東の自分の家へ行く道を定義したんだけど、この詩をたよりに家に来ようとした人は、みんな道に迷っちゃった。」
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