人生の最終段階においては、医療の選択をするのが難しい。最先端の治療が必ずしも患者本人の価値観に沿うとは限らないからだ。ゆえに、家族も悩み、揺れる。患者を大切に思うからこそ、ケアの現場は混乱を深めることになる。本書では、日本老年医学会で臨床倫理を牽引する著者が、医療・ケアの現場を丹念に調査し、医療者、患者、家族の苦悩をすくいあげ、人生の最終段階における医療はどうあるべきか、その考え方を示す。老年医学と臨床倫理の知見を踏まえつつ、超高齢社会における医療とケアの役割を整理する。
715円〜935円(税込)
高齢化の急速な進展の中で、日本の医療費はすでに年間四十数兆円を超え、さらに着実に増加している。一方、私たちは医療や社会保障に必要な負担を忌避し、一千兆円に及ぶ借金を将来世代にツケ回ししつつある――。そもそも医療とは、科学、社会システム、ケア、死生観、コミュニティといった多様なテーマが交差する領域だ。これらの全体を俯瞰したうえで、医療のありようや社会の中での位置づけが、いまこそ公共的に問いなおされねばならない。持続可能な医療そして社会を構想するための思想と道筋を明快かつトータルに示す。
一生を何の病気にもかからずに終える人は、ほとんどいない。高齢化も進み、医療ケアを受ける人は今後ますます増大していく見込みである。社会全体で病気を患う人々をケアし、支えていくためにはどうしたらいいのだろうか。本書では、「現象学」という哲学の視点から、病いを患うとはどういうことなのか、病いを患う人をケアするとはどういうことなのかを、改めて見つめなおす。患者の心身をトータルにとらえ、向き合い寄り添うケアへの道しるべを示す一冊である。
本当に自分が老後に年金をもらえるのか。親に介護が必要になったら、行政は何をしてくれるのか。重い病気にかかったとき、どのくらい医療費がかかるのか。超高齢化時代のいま、将来の先行きがみえないため、誰もが社会保障に不安を感じている。さらに、その仕組みは複雑でわかりにくく、知らないことだらけ。そうした不安を解消すべく、年金、介護、医療だけでなく、労災や失業、もしものときの生活保護、子育て世代を支える仕組みなど、広範囲な社会保障を一冊まとめて解説する。
「意志が弱い」「怖い」「快楽主義者」「反社会的組織の人」……薬物依存症は、そういったステレオタイプな先入観とともに報道され、語られてきた。しかし、そのイメージは事実なのだろうか? 本書は、薬物依存症にまつわる様々な誤解をとき、その真実に迫る。薬物問題は「ダメ。ゼッタイ。」や自己責任論では解決にならない。痛みを抱え孤立した「人」に向き合い、つながる機会を提供する治療・支援こそが必要なのだ。医療、そして社会はどのようにあるべきか? 薬物依存症を通して探求し、提示する。
「一億総中流」の夢から醒めた日本。ちょっとした不運で、誰もが転がるように零落する。ひとたび貧困へと転落すれば、ふたたび這いあがるのは容易ではない。波瀾万丈な人生経験をもつ佐藤優さんと、貧困のリアリズムに心理的なまなざしを向ける臨床心理士の池上和子さんが、格差社会の実相を知るための30冊を紹介しながら現代の貧困を徹底的に議論する。貧困と虐待はなぜ連鎖するのか、貧困に陥らないためにはどんな教育が必要なのか、来るべき社会はどうあるべきなのか――。格差社会を生き抜くための針路をくっきりと描く。
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