この時代、子供の遊び相手といえば自律型AIを備えた機械仕掛けの人形であった。
我が家でももう十年目になる。毎年、一人娘繭子の誕生日直前に新しいデザインのものが発売されているのだ。毎年発売される最新流行の人形に世界中の子供たち──と、もちろん親たちも──が踊らされて、何十年になるだろう。
"たった一年前の型でも、中古品がネットで売買されているのを見た記憶もない。恐らくは分解されて部品取りされ、電子部品だけがどこか西欧にでも輸出されるのだ……"
"自律AIとしてでなく情報検索端末として考えるなら、人形はただのインターフェイスに過ぎない……"
"最初に繭子に与えた人形は、ろくに喋ることすらできなかった。俺たちが人形を選んだ基準の中で最も大きな点が、それだった……"
"ブブブ、と羽音が耳に入り、俺は足を止めた。空を見上げる。あの妖精型の人形が、一人で飛んでいた。行方を目で追う。裏通り沿いを、まっすぐに飛んでいく。持ち主は? 周囲を見回したが、それらしい人物は視界に入らなかった……"
世界は人形で溢れていた。
そしてある日、繭子の人形がおかしな言葉を喋り出した……。
すぐに読めて、でもずっとどこかに残ってしまう。ちょっと不思議でほろ苦い読書体験が、あなたを待っている!
各短編にストーリー上の関連はありませんので、どの回からでもお読みいただけます。
(C) 淡波亮作、Newday Newlife 出版部
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人類はいったいどこまで行ってしまうのか……?
どんなに奇想天外な未来でも、明日にも起こり得るのではないかと変に納得してしまうことの恐ろしさ。
科学と文明の過剰な発達がもたらすかもしれない様々な「そののちの世界」の出来事を、SFタッチで、ダークなタッチで、またはユーモラスに描いた短編集です。
第七話の本作は、『サタンと呼ばれた男』
世界的な株価の暴落を一つのきっかけに、株式市場で"サタン"と呼ばれた男、貝塚剛は、そのあり余る資産を更に拡大させようとしていた。
"見渡す限りの土地建物は全て貝塚の持ち物、あるいは抵当権を押さえているものだ。
ドン、と窓を叩くと、窓全体がみしりと音を立てた。ちょうど出社してきたばかりの秘書、牧村が何事かとドアを開ける。憂いを帯びた長いまつ毛が揺れる。"
"「これが我が国最大の、そして最後の、メガファームだ!」
貝塚の低い声は、プロペラの轟音にも負けず牧村の耳にわんわんと響いた。"
"「社長ーっ!」
ヘリのパイロットが半分振り向いて叫んだ。
「何だ、栗田」
「レーダーに敵影を発見しました!」
「敵影、だと? 間違いないのか?」"
貝塚の秘書になって三年目を迎えた牧村は、エスカレートする彼の欲望の引き起こす異常な争いに巻き込まれ、翻弄されていく……。
すぐに読めて、でもずっとどこかに残ってしまう。ちょっと不思議でほろ苦い読書体験が、あなたを待っている!
シリーズはそれぞれ単独のストーリーとなっており、どの回からでもお楽しみいただけます。
0円〜154円(税込)
いつもと同じように始まった朝、低い唸り声を発して恭一の目の前を飛び去った二羽のカラス──。
ごみ捨て場に向かう右手が、急に重くなったような気がした。青い袋に顔を向けると、その上には一羽のカラスが陣取っていた。まるで、この荷物は自分のものだと主張するかのように。
SNSではカラスの話題ばかりが投稿されていた。
<なんで最近のカラスはいつまでも民家の側にいるんだ──>
<雀はもちろん、メジロもヒバリもモズも、とんと姿を見せない──>
一方、家に帰ると、真夜中だというのに娘がベランダでスズメに餌をやっている。なぜ、こんな時間に??
壊れ始める日常と、非日常がいつの間にか日常になってしまう違和感。そして、更なる非日常の連鎖が、あり得ない出来事を招く──。
21世紀半ばのこと、生物学上きわめて重要な二つの発見がなされた。第一は、三流生物学者のジェーン・マンスフィールドによる<普通でない冬眠と、そのメカニズムの発見>であった。そして、ジェーンの死から18年後、ジェーンの設立した基金を得てサラ・ロウェルがなした第二の発見こそが、人類の姿を根本から変えてしまう<テロメアを完全に制御する方法>であった。
ついに人類は、あらゆる文明が有史以来夢に見てきた理想郷へと足を踏み入れることになったのだ…。
すぐに読めて、でもずっとどこかに残ってしまう。ちょっと不思議でほろ苦い読書体験が、あなたを待っている!
最終話の完結編以外は各短編にストーリー上の関連はありませんので、どの回からでもお読みいただけます
お茶の間のアイドル、ネコのミーム。
人気はCMに始まり、ミームをあしらったチョコレートは飛ぶように売れ、テレビもネットも可愛いネコで溢れていた。さらにどういうわけか、時を同じくしてハリウッドからはネコが主役の映画が同時に2本も届けられた。
世界は、ネコの一大ブームに沸いていたのだ。
降って湧いたネコブームに乗り、俺の会社もついにネコ業界へと乗り出したらしい。街を散歩する犬の姿が眼につかなくなった頃、世界の歯車は、大きく狂い始めたのだった。
すぐに読めて、でもずっとどこかに残ってしまう。ちょっと不思議でほろ苦い読書体験が、あなたを待っている!
最終話の完結編以外は各短編にストーリー上の関連はありませんので、どの回からでもお読みいただけます。
ある高名な植物学者の講演をレポートのネタに聴いた帰り道、大学生の潤はいくつかのつまらぬ出来事に出会います。
不可思議なフェンス崩落事故、店頭ディスプレイの水浸し事件──。
だが、それは恐ろしい事件の序章でしかなかった──。
あれよあれよという間に世界は混沌の中へ!
"潤は熱気でボーッとのぼせたまま、会場の外に出た。どんよりと初冬の雲が垂れ込めている。ひんやりとした空気はすっかり乾燥していて、熱を帯びた額に心地が良い。見るところ、雨の心配はなさそうだ。歩きながら、歩道の脇に眼をやる。アスファルトとコンクリートの間、ほんの僅かな隙間から、イネ科だろうか、雑草がびっしりと生えている。大半は薄茶色になって枯れていたが、その間からは緑色の新しい芽が伸びている。
「植物こそが真の主役、ね……」"
"本当にそうだろうか?"
"「あれえ?」
作業員の上げた素っ頓狂な声は走り去る潤の耳には届かなかったが、他の作業員の一人が何事かと目を剥いて半身を起こした。"
すぐに読めて、でもずっとどこかに残ってしまう。ちょっと不思議でほろ苦い読書体験が、あなたを待っている!
最終話の完結編以外は各短編にストーリー上の関連はありませんので、どの回からでもお読みいただけます。
牛も豚も鶏も絶滅してしまった未来、《肉》といえば形のない流動食《プロテイン・パック》のみになっていた。 久々の有形食を求めて体験ファームを訪れた二人は、他人とは全く違う未来を体験することとなった──。
"「今日は午後からフィールドに出る予定なんだ。久し振りだから、ちょっと興奮してるんだよ」
デイヴィッドが声を弾ませ、壁のホロディスプレイに喋りかけていた。
「ね、デイヴ、もし良かったら私も、ご一緒していいかしら?」
思ってもみない反応だった。"
"仕事上の連絡のついでに、ちょっとプライベートな話を滑り込ませたのは、別にトレイシーのこんな反応を期待してのものではなかったのだ。デイヴィッドはそんな気持ちが表れてしまわないよう、努めて落ち着いた低い声を発した。
「僕は構わないけど、大丈夫なのか? ハンティングの経験は?」
「初めてよ。色々教えてくださるかしら?」"
"デイヴィッドは冷蔵庫にずらりと並ぶ色とりどりのプロテイン・パックを一袋取り出し、マイクロウェーブにかけた。"
"内容物が温まりパックが膨らむと、甘い匂いが部屋に立ちこめた。今晩は歯応えのある有形食にありつけると思うと、デイヴィッドはトレイシーとの初デート以上に待ち遠しくてならなかった。"
すぐに読めて、でもずっとどこかに残ってしまう。ちょっと不思議でほろ苦い読書体験が、あなたを待っている!
最終話の完結編以外には、各短編にストーリー上の関連は一切ありませんので、どの回からでもお楽しみいただけます。
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