[作品について]叔父の命を受け、丸部道九郎が訪れた屋敷は、過去の忌まわしい事件の数々より幽霊塔と呼ばれていた。殺人のあった時計台直下の室、彼は絶世の美人、松谷秀子を知る。不可解な行動を重ねる怪美人、彼女が立ち去った後、一輪の薔薇と共に残された咒語、「鐘鳴緑揺」の意味は?「アノ家へ入らっしゃれば、迚も活きては返られません」謎を追い養蟲園へ向う主人公。「全く悪魔の世界だよ、悪魔が人間を弄ぶのだ」幽霊塔の屋敷で次々と起る異様な事件。錯綜したプロット、さまざまに仕組まれた犯罪、時を越えた人間模様が、幽霊塔の精密な機械装置を舞台に、結末へ向かい収斂して行く。江戸川乱歩が心酔し自らも翻案を挑んだ、涙香ロマン代表作の一つ。 「万朝報」明治三十二年(1899年)八月十日 ~ 翌三十三年三月九日 訳載『幽霊塔』前編、後編、続編(三冊)、扶桑堂、明治三十四年(1901年)刊行。 原作は序文に"The Phantom Tower" Mrs.Bendison とあるが、これは他誌が原作より結末を暴露できないようにするための虚偽であったと言われる。実際は "A Woman in Grey"(1898年) C.N.Williamson(1869-1933)の翻案らしい。(伊藤秀雄『黒岩涙香 探偵小説の元祖』三一書房より) ★『幽霊塔』の原作、C.N.Williamson の"A Woman in Grey" については、小森健太朗さんのページに詳しい情報があります。 ★参考図書「幽霊塔」旺文社文庫、旺文社 1980(昭和55)年2月1日初版発行 「幽霊塔」[文字遣い種別]新字新仮名
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