『その他(レーベルなし)、松本清張(文芸・小説)』の電子書籍一覧
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「屍体の重量がずしりと腕先にきたとき、はじめて私に任務らしい感情が充実しました」――。国民作家が終生描き続けた「組織・社会と個人との葛藤」をテーマに、これまで単著・全集未収録だった短篇小説を精選。自身の体験を反映した戦争小説から実在の事件をモデルにした小説まで、巨匠のエッセンスを凝縮した全十篇。
【目次】
任務(1955)
危険な広告(1954)
筆記原稿(1957)
鮎返り(1955)
女に憑かれた男(1956)
悲運の落手(1957)
秘壺(1960)
電筆(1961)
特派員(1979)
雑草の実(1976)
解説:権田萬治 -
作家の小西は、戦友が社長を務める地方紙に、小説の連載を始めた。原稿料に上乗せされる20万円の裏金は、選挙違反で指名手配中の元見習士官の逃走資金なのか。その逃亡犯が白骨死体となって発見され、さらに、第2の殺人事件が起きた――。旧軍隊の人間関係が色濃く残る昭和という時代。選挙という血みどろの争いを背景に、人間の絆と情念を描く傑作長編推理!
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会社員の青年・梅木隆介はある夜、夫婦と名乗るヒッチハイクの男女を車に乗せた。高貴さをも漂わせる美女と粗野な中年男は、まるで不釣り合いなカップルだった。好奇心が燃え上がる梅木は、車に残された万葉の古歌が彫られたペンダントから女の正体を突き止めようとする。だがそれは、甘い死の香りが漂う追跡行だった。謎が謎を呼ぶロマンチック・サスペンスの傑作!
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武蔵野台地の一画で、多摩川を見下ろす城跡に私たちの高校はある。高校3年生の私の仲間で詩人ポーの心酔者で、クラスメイトや先生から愛されていた通称「ノッポ」が学校裏の沼で絞殺死体となって見つかった。彼の死をきっかけに学校の周りで不思議な出来事が続発する。はたして事件の真相とは――。清張作品では稀な青春推理小説で、瑞々しい感覚を放つ一作。
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選挙に出馬する義弟の不透明な資金3000万円を持ち逃げした木谷省吾。逃避行の間に温泉旅館の女中・お篠から、群馬県比礼神社の、農作物の出来高に関する占いがよく的中するという話を聞く。木谷は占いに従い小豆相場へ投資、大儲けをする。そして新しい人生を始めるため、さらに大きな利益を狙うのだが……。騙し騙され、人間の欲望が渦巻く超一級のサスペンス!
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福栄銀行の預金係・安川信吾は、現金500万円を横領、ホステスの啓子と逃亡する。安川は、脱税者名簿とも言うべき裏帳簿も同時に持ち出し、銀行と取り引きするが、銀行の裏切りで逮捕される。だが肝心の裏帳簿を持って啓子は行方不明に。啓子の行方を追う、安川の友人の知念と田村。彼らの前に現れた謎の金融業者・須原庄作の正体とは!? 金融業界の暗部を抉る問題作!
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水尾市の市会議員である鐘崎義介は酒造会社と市政に批判的な新聞社を経営するやり手。だが、温泉で出会った女・カツ子が自室の西洋風呂で見せる、若く奔放な姿態に溺れる。地方の名士である男は、都会的なものの虚飾に魅せられて破滅の道をたどり、やがて殺人を招き寄せていく! 地方政界に渦巻く欲望と利権を描くとともに、“アリバイ崩し”にも挑んだ本格推理長編。
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昭和初期の小倉。私鉄職員の“わたし”三輪は、陶器会社に勤める仲間、秋島、久間とともに詩を愛好していた。陶器会社の高級職員・深田の家に集まっては詩論を戦わせるが、3人とも都会的な雰囲気をまとう深田の妻・明子に憧れていた。だがある夏祭りの夜、明子は死体で発見される。事件は迷宮入りとなるが……(表題作)。山中で発見された白骨の謎を追う「山の骨」も併載。
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20年近く地道にある省の役人を勤めてきた川島留吉は、ふとしたきっかけで役人仲間と麻雀を始める。麻雀が弱い川島は負けが込み続けるが、ある日、川島の官庁に出入りの外郭団体の職員から自宅での麻雀に誘われる。そこから川島の地獄の日々が始まった――。(表題作) 俳句仲間と野鳥の声を録音しに行った軽井沢での殺人事件を扱った「二つの声」も収録。
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若い編集者椎原典子は、女流作家村谷阿沙子の原稿催促に出向いた箱根で、顔見知りのフリーライターの変死にぶつかる。死者と村上女史に謎の繋がりを感じた典子と同僚崎野は、やがて女史には代作者がいたという確信を持つ。女史の夫と女中の相次ぐ失踪、女史の精神病院への逃避、そして第二の殺人と、事件は意外な方向へ発展する……。心理の微妙な起伏と情景の描写が光る推理長編。
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大学卒業から四年。就職難で仕方なく入った会社の仕事に男は気が乗らない。だが、古本屋でふと手にした雑誌をきっかけに、政財界の裏で活動する柿坂経済研究所に入るや、持ち前の好奇心を発揮し始めた。しかし、独自に探っていた謎に、国会でも注目の特殊潜水艦の建造計画が絡んで、殺人事件まで相次ぎ……。国防問題と巨大軍需産業の闇を背景に描かれた白熱の社会派ミステリー。
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西暦二○○五年、現代のペスト、エイズは猖獗を極め、患者は一億五千万人にも及ぼうとしていた。一方で世界情勢は激しく揺らぎ、改革に失敗したソ連に独裁政権が誕生、ヨーロッパは連邦を形成しつつある。エイズの急激な蔓延を訝しむ山上と彼の周囲に出没する謎の男・福光。背後で蠢くのは何者か? 新型エイズ・ウイルスをばらまいたのは誰か? 近未来を舞台に描く長編サスペンス。
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テレビの視聴率によって、局は一喜一憂し、番組制作者は才能を問われ、人事まで左右される。だが、存在さえもはっきりしない調査メーターの集計は信用に価するものなのか? 一通の投書に端を発し、その実体を掴むため、視聴率調査会社の執拗な監視を開始した二人の男と一人の女。やがて、明らかにされる意外な事実とは……。テレビ界を操る視聴率の怪に、独特の洞察力で挑む長編。
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在野の文学史考証家・浜村幸平は、鴎外の「小倉日記」に簡潔だが印象深く描かれ、日記の中でほのかな透き絵となっている婢(女中)モトに興味を惹かれ、小倉に調査に向う。モトの戸籍に見た意外な事実、その娘の不審な死。いよいよ探索心を刺激された彼は孫ハツの行方を追うが、彼女の消息は突然断たれていた……。文学史上の事実と虚構を巧みに結んだ異色推理中編。併録『書道教授』。
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飛行機の中から富士山を写したばかりに、思いもかけぬ事件に巻込まれたカメラマンの田代は、撮影旅行先の木崎湖や青木湖で不気味な水音を聞き、不審な波紋を目撃する。行く先々に現れる小太りの男と謎の木箱を追う田代の周辺で、次々に起る殺人事件は、保守党の有力幹部失踪事件と関連を持ち始め、偶然と必然の織りなす経過のうちに、醜悪で巨大なその全貌を現わし始める……。
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銀行を襲い、仲間と山わけにした金で商売をはじめた内堀彦介は、事業に成功した今、真相露顕の恐怖から5年前に別れた共犯者の監視を開始するが……。疑心暗鬼から自滅していく男を描く「共犯者」。妻の病気、借金、愛人とのもめごと、仕事の失敗――たび重なる欲求不満と緊張の連続が生み出す衝動的な殺意を捉えた「発作」。ほかに、「恐喝者」「愛と空白の共謀」など全10編を収める。
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大洗海岸に巨人と見紛うほどに膨張した死体が流れ着いた。警察は苦心の末に、海外旅行中の県議会議員と特定したが、その腐爛状態には驚きのトリックが隠されていた(表題作)。実力はありながら、地味な風貌が災いし、どの組織でも決してトップの椅子にはつけない元銀行副頭取。男が三十一歳も若いバーのマダムと再婚したとき、悲劇が幕を開ける「礼遇の資格」など傑作短編五編。
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殺人容疑で捕えられ、死刑の判決を受けた兄の無罪を信じて、柳田桐子は九州から上京した。彼女は高名な弁護士大塚欽三に調査を懇願するが、すげなく断わられる。兄は汚名を着たまま獄死し、桐子の大塚弁護士に対する執拗な復讐が始まる……。それぞれに影の部分を持ち、孤絶化した状況に生きる現代人にとって、法と裁判制度は何か?を問い、その限界を鋭く指摘した野心作である。
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安全と出世を願って平凡に生きる男の生活に影がさしはじめる。“密通”ともいうべき、後ろ暗く絶対に知られてはならない女関係。どこにでもあり、誰もが容易に経験しうる日常生活の中にひそむ深淵の恐ろしさを描いて絶讃された連作短篇集。部下のOLとの情事をかくしおおすために、殺人容疑を受けた知人のアリバイを否定し続けた男の破局を描いた「証言」など7篇を収める。
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救援物資の横流し、麻薬の密輸から殺人事件まで、“神の名”のもとに行われた恐るべき犯罪の数々。日本の国際的な立場が弱かったために、事件の核心に迫りながらキリスト教団の閉鎖的権威主義に屈せざるを得なかった警視庁――。現実に起った外人神父による日本人スチュワーデス殺人事件の顛末に強い疑問と怒りをいだいた著者が綿密な調査を重ね、推理と解決を提示した問題作。
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結婚して二年たらずで自殺した美しい姉。歳月がながれ高校生の母親となった妹が、思春期の息子の手に負えない行状から、姉の死の真相にたどりつく「歯止め」。小さな港町の家々に投げ込まれた奇怪なチラシ。二十年前に母親が義父に殺されたと告発する男が巻き起こす騒動の驚くべき顛末「犯罪広告」。“古拙の笑い(アーケイック・スマイル)”を浮かべた若い女の硬直した死体の謎「微笑の儀式」。傑作中編小説三編。
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米倉涼子主演ドラマの原作。割烹旅館で働く31歳の成沢民子は、脳軟化症で回復の見込みのない夫・寛次に縛られた暮しを若さの空費と考えていた。彼女は赤坂のホテル支配人・小滝にそそのかされ夫を焼殺し、行方を絶つ。直感で民子を疑った刑事・久恒はその行方を追ううち、民子への欲望をつのらせ、政財界の黒幕・鬼頭の女になっていることを突き止める。人倫の道を踏み外したものがたどる〈けものみち〉とは。
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途方もなく膨張し、混乱し、錯綜した現代社会の裏面で複雑にもつれ、からみあうさまざまな犯罪。その陰に澱む愛憎と執念――狂気を装い、法の網の目を潜りぬけようとする男、交通地獄という世相の盲点を巧みに利用した殺人、猟奇事件の影に踊る札つきの不法建築業者、北国の闇を引き裂く夫婦殺害事件…。死神に捉えられ、破滅の深淵に陥ちてゆく人間たちを描く連作推理小説。
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「国家の大学」として巨大な指導者群を養成し、日本の現代史を動かす原動力となった東京帝国大学は、激動する時代の流れに如何に呼応し、抵抗したか――桂内閣の軟弱な対露外交を批判した七博士の“日露開戦論”に端を発した空前の東大騒動、国定教科書の改訂にからむ南北朝正閏論争、大逆事件など明治の朝野を揺り動かした数々の問題を背景に、その変遷と功罪を描く異色長編。
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神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる――『点と線』の名コンビ三原警部補と鳥飼老刑事が試行錯誤を繰返しながら巧妙なトリックを解明してゆく本格推理長編。
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製薬会社と癒着している医学界の現状を批判した東京都下の大学病院の医局員住田友吉が、名古屋のホテルで他殺死体となって発見された。その殺人方法は、手首の動脈を切って、湯の中で徐々に脱血させ、死亡させるという異常なものであった。2ヵ月後、ほぼ同じ方法によって開業医が……。医師と製薬界の荒廃した連繋と意外な愛憎関係がもたらした連続殺人事件を描く本格推理長編。
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私の殺人犯罪の原因は、川倉甚太郎との金銭貸借ということになっている。――金銭のもつれから友人を殺害した男が刑の確定後に、秘められた動機を語る表題作。女性が失踪し、カメラだけが北海道でみつかった。死体は発見されず、容疑者の新進画家には堅牢なアリバイがある。巧みなトリックを生かした「すずらん」など、多彩な魅力溢れる全10編を収録した傑作短編集。
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座の一流画廊に画を売り込みに来た女流新人画家・降田(おだ)良子。その斬新な手法と構成が有名なコレクターの眼にとまり、良子の作品展は画壇の注目をあつめる。しかし、彼女の風変わりな制作態度に秘密を感じたライバル画廊の支配人・小池は、真相を求めて良子の郷里福島へと向う。画商の商算と美術評論家の欺瞞が交錯する画壇に二重三重にはりめぐらされた策謀を暴くサスペンス長篇。
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作家の伊瀬忠隆は雑誌の依頼を受けて「僻地に伝説をさぐる旅」の連載を始めた。第一回浦島伝説の取材地丹後半島いらい、彼の赴くところ常に不可解な謎や奇怪な事件が絶えない。そして突然の連載打切り。この企画の背後に潜む隠された意図の存在に気づいたとき、伊瀬は既に事件の渦中に巻き込まれていた。古代史、民俗説話と現代の事件を結ぶ雄大な構想から生れた本格的長編推理小説。
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《荷物 一個 内容 死体》トルストイの遺体にひっそりと付けられた荷札をめぐる随想。信長暗殺に臨んで御神籤を三回引いた明智光秀の心中劇とマクベスの葛藤の姿。そしてエイズについての率直な発言。創作の為に書き留められた日記とメモと紀行文からは、記録を超えた玄妙な香りさえ立ち昇る。イメージの飛躍としたたかな小説構造を両立させた清張文学を読み解く最後の記録作品。
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ホテルに偽名で宿泊中の代議士が殺された。被害者に人知れぬ男色趣味があったらしいと偶然知った広告代理店の社員土井は、友人の週刊誌記者と代議士の足どりを追う。やがて二人は、代議士が日常的関連から断絶したいわば分離の時間の中で、癒着した政財界の裏面、倒錯した性の世界に踏み込んでいたことをつきとめる。そして事件の真相は意外にも……。他に『速力の告発』を併録。
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妻の実家の金で留学した男が旅先で資産家の娘と知り合い、妻の前から姿を消す。彼は妻に落ち度があれば離婚が成立すると、私立探偵を雇い、密かに動向を監視し続ける。ところが知らぬ間に、彼が軽蔑していたかつての同僚と妻が再婚していたのを知った時、男の心に理不尽な怒りが湧く…。表題作をはじめ計りがたい人間の愛憎と欲望をテーマに、現代社会の不確実な内面をえぐる傑作短篇5話を収録した推理小説集。
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白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。責任を一身に背負って自殺した会計課長の厚い信任を得ていた萩崎は、学生時代の友人である新聞記者・田村の応援を得て、必死に事件の真相を追う。二人は事件の背後にうごめく巨大な組織に立ち向かうが、手がかりは次々に消え去ってしまう…。複雑怪奇な社会の裏に潜む悪の実体をあばき、鬼気迫る追求が展開するベストセラー。
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車の座席で戯れる二人づれに憎しみの執念をもやす若い運転手。愛人に裏切られた初老の男のひそやかな怒り――二人の男の接点に生じた殺人事件を追う表題作。立身出世のために愛する女性を殺すが、女は奇蹟的に息を吹き返し、記憶を失ったまま男の前に姿を現わす……非情なエリート官僚を描く『たづたづし』等全5編。日常生活に潜む怖ろしい生の断層、現代の憎悪を抉る推理傑作集。
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東京郊外で発見された、男の腐爛死体。その身元を追及しようとする二人の新聞記者は、次第に、あまりにも意外な事件の核心にふれてゆくこととなった。酒と女の供応に明け暮れしている、そんな悪徳税務署員の私行が招き寄せた、三つの殺人事件を通して、脱税に、収賄にと、腐敗しきった税務署の、驚くべき内情が描かれる。――現代の黒い霧に挑む著者の、代表的な社会派推理小説!
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四国の県警捜査一課長香春(かわら)銀作は、文芸雑誌の同人誌評に引用された小説の一場面に目をとめた。九州在住の下坂一夫が書いたというその描写は、香春が担当している“未亡人強盗強姦殺人事件”の被害者宅付近の様子と酷似しすぎていたのだ。再捜査により、九州の旅館女中の失踪事件と結びついたとき、予期せぬ真相が浮び上がる――中央文壇志向の青年の盗作した小説が鍵となる推理長編。
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