『昭和――戦時下の子どもたち(余美太伊堂文庫)、1円~(文芸・小説)』の電子書籍一覧
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島本伝二、在間清正、中島市太郎は国民学校の六年生でいつも一緒だ。
ここ滝野川(現在の北区)は石神井川をはさんだ向こう側に陸軍の大工場施設があり、ふだんでも憲兵などが巡回している地域だ。
だから、各町会を取り締まる巡査なども口うるさいし、地域の町会長椎原作蔵も、どんなことにも肩いからせて大声で命令する。
三人組もう何度も鉄拳をくらった。
清正も伝二も「あいつは許せない」といきまく。
市太郎は、兄貴分の修平の部屋で元立教大学野球部でピッチャーをやっていたという佐伯という人に会った。
その日――三人組は「石つぶて」を用意し、道沿いの崖の草むらに身を潜めて、川べりの道を通るはずの椎原作蔵を待ちかまえていた……。 -
太平洋戦争が始まって3年、日本の敗色は濃くなるばかりだった。
仲のいいお隣の民子おばちゃんが故郷の北海道のスルメいかをくれた。
靴職人だったおじいちゃんが、健太のためにそのスルメいかで靴を作ってくれた。
健太は机の上に置いて正月に大事に履こうと思った。けれど猫のトラ吉が片方の靴をくわえて逃げ出した――。
健太とおじいちゃんは追いかけた――電車通りも交差点もわたって、お寺のある向こう側へ走り込んだ。その時、あの恐ろしい空襲警報のサイレンが鳴り出した……。 -
進少年は、下宿している源太を実の兄とも思っている。
源太は動物園の飼育係で、「いずれ猛獣たちは殺されるかも……」と言った。それでなくても飼っていた大好きなウサギたちを婦人会のおばさんに「お国のために、兵隊さんたちの衣服に」と取り上げられた。
そして「金属非常回収実施」の回覧板が回ってきて、大切にしていたおもちゃの豆汽車も隣組子ども隊の上級生たちに持ち去られた。
動物園のライオンやゾウやチーターやトラも「空襲でオリが壊れて逃げ出すと危険」ということで銃殺するという――。
進は、重い気持ちをもてあまして……。 -
朝昼夕に食べるものが不足していた。
仲良し三人組は腹ペコトリオでもあった。お巡りさんに怒鳴られた。
そして町会のボスの勝間田剛造は、この辺一帯の地主でお巡りさん以上に威張っている。
三人組はヘンテコな替え歌を合唱していて、ビンタをくらった。
守と武は「勝間田に復讐する」といきまいた。リーダー格の市太郎は「やりすぎだ」と反対した。
その日――守と武は、勝間田邸の庭先にいつもカゴごと出ている九官鳥に忍び寄り、また「アホ・バカ・マヌケ」というコトバをムキになって教え込んだ。
しかし、現場を勝間田剛造におさえられた! 大ピンチだ……。 -
B級娯楽映画が専門の「大都映画」撮影所が、売れっこ監督の甥っ子勇一にとっては、遊び場になっていた。
「大東亜戦争」が始まって、軍人や兵隊が肩をいからせてカッポしていた。
そして在郷軍人(兵役キャリアのある者)も町では大いばりしていた。
出征兵士の留守を守るきく子をねらって、在郷軍人の鹿島権三郎が貴重品の缶詰や米を持ち込んで迫ってきた。
勇一は撮影所の照明係の清志に相談した。
正義漢の清志は怒り、一計を案じた――。
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