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恋するタブリエ Ⅰ.頼子と美奈 あらすじ・内容
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〈作品紹介〉
ソムリエール頼子は黒、料理人美奈は白のタブリエ(エプロン)をつけて働く三十歳目前の女の子。タブリエの色と同じく、性格も正反対のふたりの仕事と恋の物語。
*
「美奈……私、明日、最高に不細工な顔して働くことになるんやろうと思うわ」
「そんな日もありますよ、人間なんやから」
「一応接客サービスのプロやのに」
「ほんなら、そういう日は不機嫌な顔をごまかす技術つけたらええんです。頼子さんがここへ働きに来る前に、シェフはめっちゃ頼子さんのこと調べてました。いろんな人に頼子さんのこと聞いて。それで評判がいいことを知って引き抜きに行ったんです。そやから、頼子さんはもっと自信を持ってええんです」
ぽろりと涙が頬を伝って、美奈の頭の上に落ちた。
一粒また一粒、美奈の黒い髪が頼子の涙を吸いこんで濡れていく。
ただ地味で鈍感な人だと思って美奈を軽く見ていた。
美奈は人に甘えずひとりでしっかり立っているのに、こんなに人に寄り添うのが上手なのだ。
*
仕事に、恋に。
悩める女性に読んで欲しい。
共幻文庫 短編小説コンテスト2015
最優秀作品賞『恋の章の終わりに』連載化作品
*
〈著者紹介〉
浜野稚子(はまのわかこ)
関西在住の主婦。
「自分だけの切り口を見つけて、普通の人の日常をよりリアルに感じていただけるような物語を書きたいと思います」
「恋するタブリエ」作品一覧
(7冊)各220円(税込)
《大好評の恋タブシリーズ、感動の最終回!》
頼子は自分のことをよく話す。
一つの出来ごとについて、自分の思ったことをああだこうだ。
「なぁ、美奈どう思う?」
笑い話も腹が立った話もくだらない話も、表情を変え身振りもつけて忙しく。
そのくせ頼子はあまり恋の話をしない。
見た目が派手なため恋愛に積極的そうに見えるが、その方面には意外と弱腰だ。
しかし、美奈はわかっている。頼子の口からよく出て来る名前で、頼子が誰のことを想っているのか。
無駄に一緒に暮らしているわけではない。頼子は美奈の同僚であり、同居人であり、友人だ。
重たいと思ってなるべく人とのかかわりを持たないように気を付けていたのに、一人で三役も持っている近しい人を作ってしまった。放っておけるわけがない。
「さぁ、うちらも行こか」
美奈は白いタブリエを緩める。
「おう」
遠山が腰に手を当て掛け声のような返事をした。