『ダイレクト出版、鬼沢哲朗、0円(文芸・小説)』の電子書籍一覧
1 ~7件目/全7件
-
兄が語る天草四郎。天草四郎が倣ったイエス。そして兄自身も、ひょっとしたらその妹も。――あらゆる戦いとその敗北が、入れ子細工のように重なり合いながら織りなす、甘美で物悲しい青春の寓話。
学生時代のすべてを賭けて 文学の修行に沈潜する兄。
そんな兄の戦いを、隣の勉強部屋から見守る妹。
兄の構想する小説は、天草四郎にまつわる長編だった。
時は寛永。東洋の果ての小さな島国に、突然異国の宗門が花開いた。盲いていた心の眼は開かれた――だがしかし、そればかりではないのだ。
心の奇蹟はやがていつしか、現実の力となって発現した。人々は起ち、そして確かに破竹の勝利がもたらされたのだ。
そしてそれは、天草四郎ばかりではない。
四郎が倣ったイエスも。あまたの天才たちも。そしてあらゆる青春がまたそんなふうに、あるはずもない時代に狂い咲き、あまたの奇蹟をなした。
だがだとしたら彼らは、なぜついには敗れなければならなかったのか?
あれほどまでに甘美にかがよう彼らの夢は、どうして崩れ去ったのか?
そんな暗転の過程に自分はもっとも興味がある、と兄は言う。
だがしかしもしそうだとしたら、兄自身は一体どうなのか?
高校三年。大学二年。大学四年……
天草四郎の生まれれ変わりを自称しながら、傲然と、才を恃んでいた兄。 青春のすべてを創作に注ぎ込む、禁欲と自虐の日々。
文学賞の落選を繰り返すうちに、そんな兄の面にいつか不安げな、やつれたような影が差し始める。
だとしたら兄はなぜ、敗れたのか? すべての青春の夢は、なぜ潰えなくてはならないのか?
そこにあるのはやはり、安らかな敗北をいざなう悪魔の囁き?――
そんなふうに問いかけながら、妹はまるで兄の遺志を継ぐかのように筆を執る。―― -
「そして生家に連なる村道に迫り出した、崖の上のお化け石。
篠突く雨に打たれたあの奇岩は、あおぐろく稠密した雨雲に向かって手を伸べながら、今もなお物思わしげに、何か聞き分かぬ祈願を凝らしているのだった。
そう。落雷に撃たれる恐怖ではなく、ひょっとしたら雷には、けっして撃たれないかもしれない恐怖に蒼褪めながら……。」
東京の場末の歓楽街に春を売るフィリピンの女たち。その中の一人にマリアはいた。
女たちを束ねる「私」と、マリアとの間の秘めた思い……。
遠い故郷に哮る雷鳴の記憶と、青褪めた都会の風景に彩られながら、そこには最も起きてはならなかったこと、「何も起きない」ということが起き、私の心は死んだのだ……。
-
ジゴロ'95。その究極の目的は、風俗嬢との結婚だ。<br> まずはお茶挽きのソープ嬢の、馴染に収まって。そのあとその同じ女を、手取足取り売れっ子の、金の成る木に育てていく。そして……<br> たがしかし、そうして俺が目を付けた今度の獲物は、――エミはあまりにも格別で、稀有の女だった。……<br>
ジゴロ'95(ナインティファイヴ)。
それは女から女へ渡り歩き、金をむしり取っては散財するような、旧式のジゴロとは違う。
あくまでも風俗嬢との結婚を目当てにして、通いつめる常連の客。
傍目にはごく普通の月給取りを続けながら、プレイボーイとは似ても似つかぬ、三枚目の乗りで近付いて。しこたま貯めこんだ女の伴侶にいつのまにやら収まって、そのままそしらぬ顔をして生涯を終えてしまう――そんな逆玉の輿が、その究極の目的なのだ。
まずは心もとない、お茶挽きのソープ嬢に寄り添って、馴染となる。そのあとその同じ女を、手取足取りの二人三脚で、売れっ子の金の成る木に育てていく。そして……
たがしかし、そうしてジゴロ'95 が目を付けた今度の獲物は、――エミはあまりにも格別で、稀有の女だった。
子供のまんまの無邪気な心で、何も知らず、何も考えず。それでいていつでも元気一杯に、生き生きと輝いている。……
そんなエミの不思議な魔力に惹かれて、今日も明日も男たちが足を運ぶ。 そうして目論見通り、押しも押されぬ売れっ子に仕立て上げた女――だがしかし気が付けばいつしか、他ならぬ軍師自身の心がその不思議な酔い心地の虜となり、溺れることを始めたのだ。……
いわば風俗の離れ小島にこもって、恋愛ゲームにうつつを抜かしていたジゴロ'95が、そのもっとも恐れていたはずのもの――ゲーム盤の外の、生身の人生に引きずり出されていく。
エミの失踪と再会。その後の二人の蜜月。
突然のエミの病。その妹と、その金。――
だとしたら、そこでジゴロ'95が見せた、おぞましいまでの狡知と惑乱の、正体は一体何なのか? -
ほぼオリジナルのジャパニーズジョーク集
*「当世やくざ事情」
――ムショ帰りのやくざだというからビビッたら、税務署の帰りだった……。
*「私の好きな漬け物」
1. 奈良漬け 2.柴漬け 3.ホルマリン漬け
*「酒飲み」
三三九度のときに「とりあえずビール」と言った奴。
*「大船」
――大船に 乗ったつもりが タイタニック……。
けっして笑いのプロではない私たちも、その日常の暮らしの中で、ときにはプロにも負けない抱腹絶倒のジョークを飛ばすことがある。
だとしたらどうしてそれらを書き留めて、発表してはいけないのだろう?
――そんな発想から収集されたオリジナルジョーク集。
かつて筆者の周囲で炸裂した笑いの爆弾を、三百連発のパッケージにして読者に贈りたい。
-
ボクシング。パンチドランカー。――それは鬱病のサラリーマンが出会った、あまりにも哀しい男の寓話だった。
「冬の駅のホームに白い吐息を吐きながら佇むオーバーコートを着たサラリーマンたち。
私にはそんな彼らの心に宿った悲しみがわかる。
栄光を求めた遠い日々を忘れることも立ち返ることもできずに、ただぎこちなく過ごす日々。――
そうだった。私にはそんな彼らの悲しみがわかる。
なぜなら?
なぜなら私も彼らもそしてまたすべての男たちが、朝日の中で電車を待つ哀しきパンチドランカーなのだから……。」
ボクシング。パンチドランカー。――それは鬱病のサラリーマンが出会った、あまりにも哀しい男の寓話だった。
前篇 「哀しきパンチドランカー」
「世界」の栄光を目指すボクサーを襲った不慮の事故? 記憶をなくした私を前に、誰もが口を閉ざすその真相とは……。
後篇 「鬱の風景」
ある朝一夜の酒に酔いつぶれた私は、見知らぬ駅のホームに佇んでいた。その町で私を待ち受けていた不思議な転生の物語。
-
何故人を殺してはいけないのか――やさしい世界観入門
「全知で全能の神が罪を憎むというのは、少しも理屈にかなわない。
もし本当に罪を憎んでいるのなら、それは全知で全能であるかゆえに、初めから剣を取る手を思いとどまらせることもできるだろう。だとしたら犯した後にそれを罰するというような、迂遠なやり方が選ばれるはずはないのだ。
全知で全能の神が治める世界に、現にそれが行われている以上、殺人も破壊も罪ではない。少なくとも神の道にもとる、悪逆ではありえない……。」
そんな傍目には劇毒のような「道理」を、一つずつ積み上げながら、やさしく解き明かす逆説の世界観。
それは悪魔的であると同時に、とてつもなく甘美な、「真実」だった。――
・キャンペーンの内容や期間は予告なく変更する場合があります。
・コインUP表示がある場合、ご購入時に付与されるキャンペーン分のコインは期間限定コインです。詳しくはこちら
・決済時に商品の合計税抜金額に対して課税するため、作品詳細ページの表示価格と差が生じる場合がございます。