『松尾当子、101円~400円(文芸・小説)』の電子書籍一覧
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午後8時15分前。クリスティンはある計画を胸に、高層ビルの36階にある、静まり返ったフロアに降り立った。慣れ親しんだオフィスに入るのも、これが最後。明日には、よりよい条件を約束してくれた会社に転職する。キャリアが最優先の彼女にとって、それは嬉しい変化だった――たった一つ、同僚のマイケル・カーと離れることを除いては。だから今夜は彼を挑発的な方法で誘い、一晩限りの思い出を作ろう。シルクのスカーフを手に、ひとり残業する彼の背後に忍び寄る。そしていきなり目隠しをすると、吐息とともに囁いた。「やり残した仕事をするために戻ってきたの」
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愛しいボスと火遊びなどできない。
わたしはきっと、灰になってしまう。
日曜日の朝6時、電話が鳴り響く。「エラ、今すぐ来てくれ」
サント・コレッティの個人秘書として働くようになって4カ月、
時間外の呼び出しには慣れっこになっていた。
イタリアなまりの強い、深みのある低い声が寝起きの耳を愛撫する。
どんなに傲慢で、わがままで、女ぐせが悪くても、
サントはシチリア名家の御曹司として眩しいほどのオーラを放ち、
エラの心を惑わせる。ボスにこんな感情を抱くのは禁物なのに。
いいえ、それもあと少しのこと。エラは仕事を辞めようと思っていた。
だが駆けつけた先でサントのある姿を見たとたん、エラは胸をつかれ、
彼のもとを離れることなどできないと悟った。もしかしたら、永遠に。 -
トスカーナの田舎で伯母と暮らしていた二十歳のミアは、一週間前に、自分の父親がイギリスの大富豪オスカー・バルフォアだと知らされた。オスカーには三度の結婚で七人の娘がいる。愛人の子ミアは八人目だ。彼女は初めて父親に会うため、広い私道を屋敷に向かって歩いていた。ところが猛スピードで走ってきた車に危うく轢かれそうになる。運転していた魅力的な男性は一方的にミアを非難し、その場を去った。それから三カ月後、新しい生活になじめないミアのために、オスカーは生活全般の教育係としてある男性に娘を託すことにした。男性に会ったミアは呆然とする。わたしを轢き殺そうとした人だわ!冷笑を浮かべる彼ニコスは、ギリシアの億万長者だというが……。■おかげさまでハーレクイン・ロマンスは2600号を迎えることができました。記念作品はベテラン作家のミシェル・リード。バルフォア家の娘たちの物語は今月から八カ月連続刊行いたします。
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