『エッセイ、ふらんす堂(文芸・小説)』の電子書籍一覧
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◆ふらんす堂電子書籍1000円シリーズ
◆第五句集
2012年以降の作品から360句を収録した第5句集。
句集名の『朝晩』は、文字通り朝と晩であるとともに、いつも、常々、日々の暮らしの中で、という意味合いが込められている。
◆自選一二句より
妻来たる一泊二日石蕗の花
雪降るや雪降る前のこと古し
葬送の鈸や太鼓や山笑ふ
夕空は宇宙の麓春祭
レタス買へば毎朝レタスわが四月
飯蛸やわが老い先に子の未来
松蝉の声古釘を抜くごとし
月涼し配管老いし雑居ビル
めらめらと氷にそそぐ梅酒かな
ひぐらしや木の家に死に石の墓 -
◆珠玉の文集新興俳句の旗手・日野草城に俳句を学び、平明な詩情で独自な作品世界を確立した桂信子の評論・エッセイ・対談・インタビューなどを収録した散文選集。収録の日野草城論、『激浪』ノートなどは、当時の新興俳句の状況を知るのに貴重な資料である。また日常身辺について書かれたエッセイは、他者におもねることない信子の矜持が貫かれ、俳人・桂信子の魅力を語るに十分である。◆「俳句この不可解なもの」より俳句を作る時の心を、私はいつも不思議に思う。それは「句を作る」のではなくして、遠い祖先の霊魂がよびかけてくるような気がするからである。私の心の内側にかくれている私自身も知らない今までねむっていたものが、ある日、俳句のよびかけに、はっと目を覚まして、私の中から出てゆくのだ。 今、私の頭上で、しきりに鳴いている蝉も、何年も地中にひそんで、地上に生を得るのは僅かの日数でしかない。俳句もまた、おなじようなものだ。思えば、先祖の遠い昔から、私にうけつがれたものが、何かの機会に、火をふいて出てくるのだ。それ故に別の言葉で言えば、俳句はまことに贅沢きわまるものだと言えるだろう。氷山のように、俳句は、海上に出ている部分より、海中に沈んでいる部分が、何倍も大きいのだ。何年もつちかったものが、十七音というわずかな型にこめられて読むひとの心を打つ。ひとびとは、その背後にかくされたものに思いをひそませその心を感じとるのだ。
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