砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。
街の食堂『跳ねる仔馬亭』では看板娘マリアの明るく元気な声が響いている。昼の遅い時間に店を訪れたのは、裕福な商家の三男で家業を手伝うセリオス。五年前、マリアが学校を卒業して以来、ずっと通ってくれている常連だ。末っ子で「妹がほしかった」というセリオスは、マリアをそう見ているのだろう、何かと気にかけてくれている。そんなセリオスを兄のように慕っていたマリアだったが、いつしかセリオスを男性として意識するようになる。まもなく宵祭りがはじまる。ふいにセリオスが「宵祭りで逢ったら、一緒に屋台のものでも食べよう」とマリアを誘った。宵祭り――。セリオスはその意味をわかっているのだろうか? 考えすぎだと自分の気持ちを抑えながら、それでもマリアは祭りの二日目に、せいいっぱいおしゃれをして出かけたのだが……
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砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。
砦の図書館は、アローナの街の人々にも開放されている。図書館の責任者は騎士団の副団長だが、司書は民間人から登用している。そして二年前にやってきたのが、妙齢の女性エリナだった。副団長から彼女を不埒な輩から守るという密命も申し付かったバーナードは、読書家であることも幸いして図書館に足?く通って睨みをきかせている。おかげでエリナは司書としての能力を遺憾なく発揮することができ、蔵書数も利用者も増えて、街の人たちから愛される図書館になった。元来本好きのバーナードとエリナは、本の話題を通じて距離を縮めていき、お互いに好意を寄せるように……。バーナードはエリナの気持ちに確信をもっているわけではなかったが、いつか時が来れば想いを告げるつもりでいた。だが、半月後に祭りを控えたその日、バーナードはエリナから突然、図書館を辞めて嫁に行かねばならなくなったと告げられる——
0円〜330円(税込)
砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。
街の食堂『跳ねる仔馬亭』では看板娘マリアの明るく元気な声が響いている。昼の遅い時間に店を訪れたのは、裕福な商家の三男で家業を手伝うセリオス。五年前、マリアが学校を卒業して以来、ずっと通ってくれている常連だ。末っ子で「妹がほしかった」というセリオスは、マリアをそう見ているのだろう、何かと気にかけてくれている。そんなセリオスを兄のように慕っていたマリアだったが、いつしかセリオスを男性として意識するようになる。まもなく宵祭りがはじまる。ふいにセリオスが「宵祭りで逢ったら、一緒に屋台のものでも食べよう」とマリアを誘った。宵祭り――。セリオスはその意味をわかっているのだろうか? 考えすぎだと自分の気持ちを抑えながら、それでもマリアは祭りの二日目に、せいいっぱいおしゃれをして出かけたのだが……
砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。
同期と二人で街の哨戒に出ていた強面の騎士ダグラスは、通りの向こうからガラの悪い男が女性に絡んでいる声を聞く。現場に駆けつけてみると男はドラ息子のダン、女性は仕立屋のティエリである。街一番の美人のティエリは、ダンから執拗に言い寄られ、その都度、こうしてダグラスらが退けていた。小さいころから泣き虫で男の子たちにからかわれてきたティエリは内気で男性が苦手だったが、ダグラスには心を開きはじめている。祭りが近づき、恋人とすごす特別な日のためにと、頼まれていた服を届けにいく途中だったという。そんなティエリが心配でダグラスはその日、彼女が店に帰るまで“護衛”につきながら、彼女の横顔をそっと盗み見るのだった。そして祭りの日がやってきた――。
砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。
鍛冶屋のキースと機織り娘のリーリャは幼馴染。自宅兼仕事場も隣同士で小さいころからお互いに行き来をしている。両親を亡くして祖父に引き取られてきたキースを、リーリャの両親も我が子と分け隔てなく可愛がり、まるで兄妹のように育ってきた。ある時、近所のお姉さんから『スキなヒトとケッコンすれば、ずっと一緒にいられる』と聞き、『だいすきだからケッコンする』とお互いに誓い合った。それから十年。キースはすっかり無口で無愛想になってしまった。そんなキースに何かと世話を焼くリーリャ。あの約束をキースはいつ叶えてくれるのだろう? 今年も宵祭りが近づいてきた。成人してから三年、毎年ドキドキしながら結局見送ってきたあの日がもうすぐやってくる。ところが、リーリャを祭りに誘ったのは、キースの友人であり、リーリャの工房の取引相手でもあるラティオだった——!?
砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。
役場の“計算係”と言われ、皆から頼りにされているステラはアローナきっての才媛。計算好きが高じて、進学して高等な数学を習得、さらには都で財務会計の専門教育を受けて戻ってきた。だが、文字通りなりふり構わず学問や仕事にまい進してきたため、婚期を逃しかけている。そんな彼女が想いを寄せているのは、パンの店『ポラール』のカイト。仕事帰りに、わざわざ寮と反対側の『ポラール』に通うのが日課となっている。はじめて店に訪れた時の優しい笑みに心を射抜かれてしまった。だがカイトは自分より一つ年下。地味で年上の自分を好きになるわけがない……。はなからそう決めつけていたステラだったが、同僚のサミーに励まされ、精一杯のおしゃれをして、祭りの日を迎える——
砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。
女大工のミリアムは、怪我をするたびに医師ジェラルドの治療を受けている。彼は幼いころアローナを出ていった母とともに王都で暮らしていたが、五年ほど前、亡くなった父親の治療院を継ぐためにこの街に戻ってきた、街で評判の腕のいい医者である。だが、亡き父と同様、医者の不養生を地で行く生活。けが人やら病人やらの診察で多忙な祭りの夜、がようやく一息ついたジェラルドの元に、ミリアムが差し入れを持って訪ねてくる。そのまま部屋で酒を酌み交わし、よもやま話に花を咲かせる。だが話題が結婚に及んだ途端に空気が変わる。ミリアムには“嫁にいけない”理由があったのだ——
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