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これが佐藤愛子だ 1 あらすじ・内容
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人それぞれ、年それぞれ、教育それぞれ、今はいろんな経験、価値観が存在している。同感の人も不同意の人も怒りの人も軽蔑の人も、まあひとつ、「歴史を読む」といった気分で読んでいただきましょう――全エッセイ2万枚より精選した昭和40年代の、驚きと怒りにみちた日本人の姿、時代の変遷。傑作痛快エッセイ第1弾。
「これが佐藤愛子だ」作品一覧
(8冊)各440円(税込)
生まれたばかりの赤ン坊を見て、「なんて可愛いんでしょう!」と叫び声を上げる人と一緒に出産見舞いに行くと私はいつも往生する。「ねえ? 可愛いわねえ……」ムリヤリ同意を求められて、せいぜいいえるのが、「大きいですねえ、何キロ?」中には大きくない赤ン坊もいて、子猿の毛をひきむしって水浸しにしたようなのが白いキモノを着て寝ているのを見ると、「大丈夫ですか?」と心配になってくる。
娘がいう。「私と二人でホテルに泊ってる時、火事になったとするでしょ。その時、怒らないでほしいのよ。きっとママは、なに火事ッ! なんで火事なんか出すんだッ、なんて怒るでしょ。まるで私が火事を出した張本人みたいに。それにセッカチだから、むやみに慌てるでしょ。早くしなさいッ! 怒鳴りまくって、ああもうメンドくさい、窓から飛ぼうなんていって。せめて飛ぶ時は一人で飛んでネ」
借金取りというものは、会ったことがない間はやはり怖い存在だった。だが実際につきまとわれてみると、怖いというよりは情けなく、いやらしく、滑稽に見ようとすればいくらでも滑稽になる。実際、大のおとなが金のために目の色を変えてわめきまくるというのは本人が必死であればあるほど滑稽だ。その滑稽さがわかるようになれば人生元気に過ごせるのである。楽天的に生きるとはそういうことだ。