『同人誌・個人出版、日野 裕太郎(文芸・小説)』の電子書籍一覧
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【ホラー(スプラッターホラー)中編】いつの頃からか母たちは壊れていく。壊れた母は、いくら殺しても蘇える。衝動に突き動かされ、獣性を抑えきれず、襲いかかってくる母。娘は自分もいずれそうなるのだ、と諦念にからめ取られながらも、狂った母を返り討ちにするために武器を手にする。殺さなければ、殺される。
──殺さないと。
機嫌のよくなった母を、止めなければならない。
前回は父の当番だった。
そのまた前は弟の番だったが、部活の合宿で出ていたため私が代わった。
ちなみに欲しかったCD二枚で、その貸しはチャラになっている。
父も弟も、どこか泊まれる場所を確保できればいいが。
今日はいきなり母の機嫌がよくなっていた。
普段は予兆があるのだ。徐々に機嫌がよくなっていき、家族は気構えと実質的な準備ができる。
今朝家を出たときには、まったく母の感情に起伏はなかったのに。
明日の晩は、父が楽しみにしている大河ドラマの一挙放送がある。
それまでになんとかしておきたい。
母を殺してしまわないと、のんびりテレビを見ている状況ではないのである。
大河ドラマを録画しようにも、デッキには私が録り溜めているドラマがいくつかあって、余裕はない。
母の歌声が止み、けたたましい笑い声に取って代わる。
機嫌のよくなった母の獣性は、これからエスカレートしていくはずだ。それは毎度のことで、わかり切っていることである。
──大丈夫、殺したところで母はすぐよみがえる。
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昼は男性、夜は女性。艶かしくも美しいブロンドの主(あるじ)第三の目を持つ執事。角を持つ給仕の女性。黒猫に変化する庭師の少年。なぜロロが選ばれたのか、人外たちの住む世界はいったい!?
「さっきもいったけど、あたしはサムカ。本性は猛るもの」
「……はぁ」
なんのことか、とロロが間抜けな返答を返すと、サムカが帽子を取った。
彼女は頭部に一対の大きな白い角を持っていた。
赤毛をかき分けて生える角は、頭部に沿って湾曲している。
彼女の立派な角をロロは凝視し、硬直した。
「よろしく。……冷めないうちに、スープ飲んじゃいなさいね。おいしいよ」
驚いてしまい、ロロは反応を返せない。
少年が咳払いをした。
「俺、コルデワ。雑用だよ。たいてい庭で植木いじりやってる。本性は探るもの」
ロロは食器を取り落としそうになった。
着席していたコルデワが、紙を丸めるようにくしゃりと消えたのだ。
なにごとかと問う言葉を探していると、彼のいた席に金目の黒猫が現われ、テーブルに前足をかけた。
「わからないことがあったら、なんでも訊いてくれよ。力になるから」
艶やかな毛並みの黒猫が、コルデワの声音でしゃべる。
ぱくりと開いた口内の赤は、感心するほど鮮やかだ。
ロロはベルを見る。人間に見えるベルに、すがりたい気持ちだった。
「私の本性は裁くもの」
いって、ベルは手のひらでひたいをすり上げる。
するとそこに黒い瞳が出現し、何度か瞬いて消えた。
追いつめられた気分で、ロロはプールを見た。
男か女かわからない相手は、まなじりを下げると大口を開ける。
プールは見事な赤い炎を吐いた。
俺、よく気絶しないな──目にするすべてを、ロロは遠くに感じた。
「歓迎するよ、ロロ」
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アロイは神さまを信じていない。神さまを信じ、アロイは愛されているのだ、というチュカナを嘘つきだと思っている。戦争のきっかけになってしまう神さまなんて、と苦い気持ちで顔をあげると、どこか上機嫌に見えるチュカナがいた。祖母を嘘つきだと思っているが、アロイはチュカナを愛していた。嘘つきのチュカナが語る自分への愛情は、真実だと知っている。だが祖母の語る世界や神は嘘に満ちている。
【ヒューマンドラマ中編】
戦火の傷跡が癒えない村。今も残る地雷原で鉄屑を拾うアロイたち。
危険だけど貴重な収入源で生活の糧となっている。
ある日ボランティたちがやってきて、危険と同時に生活源の撤去も始まった。
アロイたちは生活を賭けて、地雷原を駆ける。
鉄屑を求めるだけのはずがいつしか危険なゲームにのめり込む。
アロイが地雷を踏んだらそれっきり。
架空の国を舞台に、真摯に生きる人々のドラマが展開される。
文庫 約66ページ (1ページ 39字詰め 18行)
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