『時代小説、小学館、和久田正明(文芸・小説)』の電子書籍一覧
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いくら惚れっぽくても、悪は許しませんっ!
年若い女大家おはんは長らく借り手がなかった法華長屋に店子が決まって胸をなでおろした。越してきたのは室町一丁目の呉服商・京屋の仕事を専門に請け負う仕立屋三人。その京屋、半年前に身代限りになったが、又兵衛という旦那が買い取ったのだとか。すらっとした男前の才蔵を頭株に、脇を固めるように浅黒い与市、下がり目の小六がこざっぱりした形で、よろしくと頭を下げたから、おはんにすれば、まさに渡りに船だった。だが、この三人、実はお広敷伊賀者という歴とした武士で、又兵衛はその番頭を務める旗本だった。時あたかも江戸では不穏な動きがつづき、大奥の一切を取り仕切る年寄・今和泉と御目付神保中務が世情の安寧を願って白羽の矢を立てたのは、女人に目がないが、酸いも甘いも噛み分けた直心影流の達人・名取又兵衛だった。顔の広い又兵衛が早速、京屋に目を付け、大番頭にしっかり者の紋蔵を据えて百人からの陣容を、あっという間に整えたが、妙な男が紛れ込む。自らを三木助と名乗り、前の京屋の五番番頭だというのだが、これがとんでもない男で……。江戸の長屋は恋あり、剣あり、笑いあり!これぞ著者最高の書き下ろし“大笑い時代小説”新シリーズ第1弾。 -
初老の純情侍、御台様と恋に落ちる!
文化九年(1812)六月、九代将軍重の菩提を弔うため、十一代将軍家斉の正室寔子が芝増上寺に向かったのは、夏の暑い盛りだった。老中牧野備前守が先導する百人余の行列が愛宕下に差しかかった時、異変は起きた。三人の刺客が白刃を振りかざして、絢爛豪華な女駕籠に襲いかかったのだ。算を乱した一行に警護の隙が生じた。その刹那、水無月の烈日が照りつける地を蹴って、一人の武士が馳せ参じるや、抜く手も見せず、三人を切り伏せた。幸若舞かと見紛う鮮やかな体捌きに、その場に居合わせた一同の動きがひたと止まった。まさに一瞬の出来事だった。
武士の名は白野弁蔵、表御殿の灯火全般を差配する提灯奉行にして、御目付神保中務から陰扶持を頂戴する直心影流の達人だった。そば近くに呼び寄せた弁蔵を一目見て、寔子の心にさざ波が立った。弁蔵の胸にもほのかな灯がともる。徳川家八百万石の御台所と八十俵取り、御目見得以下の初老の武士の秘めたる恋の芽生えだった。そして、それは、戦国の世に端を発する闇の一族から想い人を守らんとする弁蔵の死闘の始まりでもあった。
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