『梶山季之(文芸・小説)』の電子書籍一覧
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魅力は武器となる。二人の女性の一種痛快な生き方
演劇担当のジャーナリスト篝英吉は、40歳にもなるがいまだに独身。だが、新人発掘のベテランとして、映画人の間でも名前が売れている。ある日、大学の合同演劇祭で好演した二人の女子大生に興味がわき、映画界入りをすすめた。小柄だが眉が濃く、右頬に小さな深いえくぼができる徳大寺艶子と、下ぶくれで美人ではないが、目のあたりに何ともいえぬ色気がある桂千代子である。千代子のほうは率直に女優志願を表明したが、艶子は「芸者になりたい」と、突拍子もないことをいいだした! 若い娘が、文字どおり体を張り、女の最高の武器を活用して、一人は映画界で、一人は花柳界で活躍する現代の悪女・強い女の魅力ある生き方。 -
昭和15年。徴用を逃れるために京畿道の道庁に勤める谷は、担当する地区の地主が創始改名に応じないことに苦悩する(「族譜」)。京城で絵画教師をする野口は、妓生の踊る伝統の宮廷舞踊を描くことに奮闘するが――。(「李朝残影」) 日本統治時代の朝鮮で生まれ育った作家が、侵略と戦争に翻弄される個人の葛藤とその悲劇を鋭く描き出す。今も色褪せない5編を収録。
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動乱の中近東から安い石油を輸入する放れ業を演じて、業界をあっといわせ、「世界石油」を一流会社にのしあげた社長・葛原大三の満々たる自信が、今や揺らぎ始めた。腹心の橘専務が裏切ったのだ。しかし彼は、背後に迫るさらに巨大な陰謀の存在をいまだに知らない。経営危機を切り抜けようとアメリカに飛び、米資本の融資を取り決めて帰国したとき、彼を待っていたのは社長退陣の要求だった。湯水の如く政界に撒いた献金の効果も、今は空しい。――著者が足で取材した秘材をもとに、金融資本の悪魔にひとしい裏面を鋭く抉る「詰め腹」他5篇。
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夜の専務、といわれる彼の仕事は世の裏面に直結することが多い。たとえば愛人譲渡式の立会人。大臣の羽沢が愛人の貝塚ラクを財界人の九段に譲渡した。羽沢が九段に向って、「今夜より貝塚ラクとは縁を切り、貴殿に進呈します。よろしくな」というそのかたわらに、彼は重々しく正座しているわけである。こうして貝塚ラクは九段の所有物となったが、どうしたわけか、九段は1週間ののちにポックリと死んでしまう。いわゆる腹上死とよばれる死に方であった――。表題作他6編を収録した短編集。
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破天荒の「テレビ結婚」で一躍脚光をあびた井戸美子は、プロレスラーと蒲原財閥の当主を手玉に取って、ついに財閥夫人にのしあがり、プロレスラーに夫を殺害させて、莫大な遺産を継ぐ。熱海沖のH島を買占めて東洋のモナコにする野望に燃えた彼女は、政治の腐敗につけこんで政界の実力者・佐渡代議士を籠絡し、その準備を進める。だが、蒲原政之助の死因に疑惑を抱いた新聞記者・中川隆夫に、かつて彼女が地方実業家にニセ札づくりをもちかけて、類ない肉体を餌に500万円を詐取した旧悪を報道される。そして佐渡代議士との密会も暴かれて、ついに破局へ……。渾身の現代悪女物語。
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美貌の女子大生・古園洋子が失踪した。彼女はホステス・アパートの一室を借りていたのだが、管理人・谷本恵吉の姿も見えない。ホステスたちは谷本の正体もアパートの所有者も知らないという。――数日後、洋子の死体が相模湖から見つかった。谷本の愛車ルノーに乗ったまま湖底に沈んでいたのだ。また意外にもアパートの持ち主が、T大で倫理学を教える清水助教授であることも明らかになった。《倫理学教師のホステス・アパート経営!?》。ナゾは深まるばかりだった――が、巧妙な偽装がはがれた時、白日にさらされたのは腐肉の如き性の悲劇だった。「風変りな代償」他5篇。
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佐伯隆二は、今も7年前のあの日の憤懣と屈辱が忘れられない。一流大学を卒業した彼が、大東映画の採用試験に落ちた日のことだ。合格、と信じていたのに、身上調査でふり落されるとは。 己の才能が信じられなくなり、いつかエリートコースを踏みはずし、妻に養われる怠惰な男になってしまったのも、すべては屈辱の思いに耐えられなかったからだ。その佐伯が新聞広告につられて応募した興信所に勤めた時、初めて知る身上調査の実態――それは巨大な社会組織の翳りのような虚偽の世界ではないか――に佐伯は唸った。俺は嘘のために一生を失った!「ある復讐」他5編を収録。
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名神高速道路の闇の中に死んだ雨宮義人。彼の自動車は、〈梶原トンネル〉の壁面に激突しての即死だった。太陽産業の気鋭の研究者として、カラーテレビ開発の第一線に立っていた雨宮の死には、不可解な謎が感じられた。 社名をうけて、この事故死に取組んだ野田誠司が、苦心の末に探りあてた死の真相は、激甚な産業の恥部を覗きみるような策謀と非情の世界だった。研究グループごと、ごっそりと競争会社のスカウトの手がのびていたのである。拒否した雨宮を襲った非業の死。――梶山文学の独壇場ともいうべき産業スパイ小説「冷酷な報酬」他5篇を収録。
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二流商社の平社員・村中陽吉は、会社の将来に対して痛烈なレポートを書いたがために、単身ニューヨークへ飛ぶ破目になった。支店を開設しろ、というのである。英語もろくにできない村中はセントラル・パークで途方にくれた。英語の勉強でも、と思って大衆小説をひろげていると、思いがけず隣りにすわった白人女性が声をかけた。50がらみのその女性は「うちへいらっしゃい、本が沢山あるわ」と誘った。村中はその誘いに応じたのだが、縁は異なもの、そこから彼は大変な見つけものをする。快人物の一代を描く標題作のほか4篇を集めた、さわやかな作品集。
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T省の屋上から墜落する人影を「私」は窓ごしに見たのだ。前庭の花壇を鮮血にそめて惨死したのは「私」の上司・小田課長補佐だった。新聞は「自殺」の原因に汚職の翳があるという……。その3日後、こんどは若い雇員の本石幸一郎が走る列車から転落した。報せをうけて豊橋に急行した「私」を見て、本石は「殺しに来たな!」とわめく。その両眼は空虚に鈍く光っていた。《この2つの事故が、どう関連しているのか?》。「私」は戦慄すべき真実に直面した。それは官僚機構にひそむ抑圧された青春の狂気である。表題作他5篇を収録。
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商店街のPR誌の編集者・相良道子は、雑誌のスポンサーである服部から、ブーツをプレゼントされた。はいてみせてくれ、という服部の注文に応じた道子は不自然な体勢のところを襲われ、あやうく犯されそうになる。道子はかねて編集長の伊賀に好意をよせていた。伊賀も同様らしい。しかし人生は皮肉だ。道子は姉の夫・前田英一に強姦同然で処女を奪われてしまう。ショックは道子を一時的に自暴自棄に追いこむ。さまよう彼女の明日は? 処女喪失が女性をどう変貌させるか、をテーマに描くロマン大作。
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秋晴れの鬼怒川渓谷に、堅田邦子の死体は浮いていた。乳房にはバラの花弁のようなキス・マークがついている。邦子には年下の恋人・所道雄があった。が、彼はその前日にゴルフ場で彼女と別れたばかりだという。確かなアリバイもあった。邦子の弟・浩一は葬式の夜、姉の日記をひらいて、彼女の心の奥にかくされた恋人の不信の事実を知る――証券会社のエリートコースを望む所道雄は、常務の娘との縁談を進めていたのだ――。年上の恋人を無情に捨て去って、出世の階段をのぼろうと焦る男の姿こそは、現代サラリーマンの心奥にひそむ妄執の汚点だ。「男の階段」他3篇。
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東洋映画を背負って立つ、一枚看板の大女優・草壁三樹子は日本でも指折りの大富豪、一井男爵を父に、新劇女優・水田三重子を母にして生まれた。彼女は生まれつき淫奔で、志村プロデューサーと関係し、カメラ助手・白石次郎の子を生み、多くの男と浮名を流すのだった。しかし、二枚目スター・林光哉を知るや、三樹子は全身全霊で彼を愛し、同棲するようになった。そんな三樹子を、彼女の幼時からの忠実な下僕――「カシモド」は嫉妬の炎を燃やし、冷たく見つめるのだった。……。強烈な欲望に生きる奔放な女性を描いた問題作「白い炎の女」他3編を収録。
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子供のころ、女体のグロテスクなことにびっくりしたあたいは、女よりも男が好きになっちゃった。学徒出陣をしているとき、ホモっ気のある中隊長につかまったのが、ゲイ道に入るきっかけよ。中隊長は権力であたいの処女性を奪ったの。戦後はGI相手に稼いだりした。外国人の囲われ者になったこともあるわ。そのうち、日本人の素敵なパトロンにめぐり合った。彼のおかげでいまあたいはゲイバーのマダムだけど……。と、その奇妙な人生を味のある独白調で語る標題作の他に、「やったぜベイビー」「あとの二人が損をする」「密造酒」など、全5編を収録する短編小説集。
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生まれながらの巧みな弁舌で、郵便局の養子に収った番匠銀之助は、家付きの姉妹をものにすると、もう次の悪事に想いを走らせる。代議士の姪・路子の征服――この娘を俺の出世に利用しないわけにはいかぬ……。悪事のプランは夜床の中で、塩煎餅を齧りながら思案する。やがて、銀行を舞台に籠抜け詐欺で得た大金で、汽船会社を乗取り、ボロ船で保険金を搾取し……。20歳を過ぎたばかりで、もう一流実業家気取りの彼は、関東大震災すら、自らの色と欲に悪用した。市内の用地略取に始まる軽井沢と箱根の土地買占めである。欺瞞に満ちた銀之助の半生を描く長編悪漢小説、上下2巻。
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敗戦の時、20歳になったばかりの安心院傑四(あじみ・たけし)は、巡回映画で大金を掴んだ。ついでGIを利用したヤミ商売で大アナを当てる。「よっしゃ、これからはアイデアの世の中だ」。彼の夢は、まるで虹のような華やかに彩られた。妻の英子には大阪に、愛人の咲子には広島にバーをもたせると、目指すは東京進出! 「大金持ちになったるで」と、日本一のクラブ『ラール』をオープン。マダムに初恋の女・秋子をすえると、彼が考えたのは、花のパリからのPR新戦法。これも大いに当たって……。戦後派のシンボル「英雄豪傑」の、野心と商才と色の道を、快調なテンポで描き出す梶山文学の面白さ!
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耐性皮革研究所という名の奇怪な洋館には、ときどき上流階級とおぼしき数人の客がやってきた。館の主人は、美貌の女性である。が、ある日、欧風のサロンにも見えたこの邸で、殺人事件がおきる。しかも、被害者は志村千恵――女主人であった。千恵の弟・達夫は、姉の死に不審を抱く。彼は、自分の学資を出すためにコールガールまでしていた、姉の過去を知っていたのだ。何かが隠されている! 達夫の調査は、次々に洋館の正体を暴いてゆく。耐性皮革研究所は、実は皮具を用いて、サディストやマゾヒストが快楽をむさぼる隠れみのだった。そして、姉の本当の死因とは……。
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小池サクが女性実業家として異能を発揮しはじめたのは、彼女が中年の未亡人になってからである。彼女は生前、夫の放蕩に泣かされていたが、頭脳は男以上に良かった。サクが着目したのは、当時珍らしいコンドームの製造。だが、昭和初めである。苦労して作ったものの、販売と宣伝がむずかしい商品だった。彼女は自ら薬局をまわる。だが、反応は思わしくない。サクは、軍隊に目をつけた。うまく当り、海軍省ご用達に。さあ、急に大量注文がきた――。コンドーム産業の創成期に活躍した女傑を描いた「さっく一代」ほか、奇人伝6篇を収める異色小説集。
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東京の千川上水沿いで連続する“通り魔”事件。いずれも若く太った女性が臀部を切りつけられ、被害者は数を増すばかり。だが、警察の捜査は捗らず、ついには婦警を囮に犯人を誘き寄せたが……。法の抜け穴をついた巧みな構成が光る表題作を始め、著者の記念すべきデビュー作「寒中水泳」、国際情勢を加味したスパイ小説「風の報酬」など、名手の腕が冴える傑作集!
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銀座でクラブやバーを経営する暁興業に勤める篝正秋は、借金を踏み倒して逃げたホステスを、たとえ草の根をわけても探しだしてくることから〈女の警察〉とあだ名されている。彼は友人の死への疑惑から、その行動の跡をたどっていくうちに、意外な事件に遭遇する。夜の歓楽の巷を舞台に、山陽新幹線用地買収にからむ疑獄事件に立向う男の姿を描く、迫真のエロチック・ミステリー。
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新宿で知り合った行きずりの女は、二十九歳の銀行員東田に充実した一夜を与えてくれたが、翌朝、再度手を伸ばした女の体は、冷たく冷え切り、上着のポケットには分厚い札束が入れられていた……。いわれなき殺人罪に問われた東田を救い、特ダネをものにするために週刊誌記者、西岡の活躍がはじまる。姿なき殺人者を追って、東京から大阪へ神戸へ、記者たちは必死の取材網をひろげた。あと二日、あと一日、締切に追われながらついに追いつめた真犯人の姿は……。著者会心の長篇推理。
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商売仇を蹴落とせ! あの手この手の策動を開始する。“調べた小説”の決定版!
私立高校の教師・壬生源太郎は、不良学生に暴力制裁を加えて職を去った。泥酔する壬生は、スカウトされて、〈栄光プロ〉所長・牧村博史の下で働くことになる。栄光プロは、アメリカ系化粧品会社が、極秘裏に日本上陸を狙う、その先兵だった。商売仇を蹴落とせ! 壬生はあの手この手の策動を開始する。“調べた小説”の決定版! -
自由自在に活躍する破天荒な快男児を描いた痛快娯楽小説の大傑作!
“てやんでェ”と借金蹴散らす、雑草大阪人の木塚慶太。 昭和三十六年、日本は高度成長の真っただ中。時代の申し子・木塚は、東京、京都、果てはアメリカを舞台にして、せこい奴らを翻弄する。欲望、計略、陰謀が渦巻く世間を手玉にとって、自由自在に活躍する破天荒な快男児を描いた痛快娯楽小説の大傑作! -
苦悩と放蕩に満ちた若き日の頼山陽を生き生きと描く快作!
漢学者・頼春水の一人息子・久太郎(山陽)は、青雲の志に燃えて江戸にやってきた。だが、多くの学者や文人と出会い、彼は学問への疑問を抱き始める……。苦悩と放蕩に満ちた若き日の頼山陽を生き生きと描く快作! -
Z国へ、その驚異的経済発展の秘密を探りにやってきた経済記者の見たものは……。
経済記者である“私”は、Z国へ、その驚異的経済発展の秘密を探りにやってきた。おりしもZ国では政財界の大物を巻き込んだ大疑獄事件が発覚! 事件を追う“私”の親友O・モーリ記者は、謎のメモを残し何者かに殺害された。犯人は大統領直属で名うての殺し屋らしいが確証はない。“私”は真相追求に乗り出した! 社会派問題作! -
内閣官房秘書官の死体を発見。自殺と断定されたが、事件の背後に黒い霧の蔭が…。事件を追う新聞記者を活写する7編。
伊豆山中の別荘で内閣官房秘書官の死体が発見された。警察当局は自殺と断定。だが、新聞記者・轟は事件の背後に、憲民党総裁選の資金調達をめぐる暗躍者の存在を見つけた! 政界の最も黒い部分にメスをふるった表題作の他、皇太子妃の取材合戦を赤裸々に描いた「スクープの内幕」など、事件を追う記者の姿を活写する全七作! -
一匹狼が恃むのは己の才覚のみ。『夜の配当』姉妹編
銀座に、堂々とトラブル・コンサルタント(示談屋)の事務所を構え、いろんな揉め事処理にアイデアを貸している伊夫伎亮吉。がっぽり稼いで、快楽的な人生をおくる一匹狼だ。某大手繊維会社の専務が腹上死した一件をヒタ隠しにして、その会社の内紛を未然に防いだのも彼の卓抜したアイデアだった。資金繰りに悩む一流宝石店から時価2億円のダイヤの秘密換金を依頼されたり、流行作家のご夫人連に、重税からのがれるための抜け道を伝授する。法律の盲点を衝く彼の仕事はおもしろいように大繁盛。ちょっぴり背徳的で飄々とした魅力のある伊夫伎亮吉大活躍!『夜の配当』の姉妹編。
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徹底した取材はコチラの方面でも。余慶にあずかろう
著者は“スペインの蠅(スパニッシュ・フライ)”と呼ばれるものが何なのか、大いに興味を持った。媚薬らしいのだが正体がわからない。そして、とうとうスペインに出かけ、カンタリスという甲虫の一種であると突きとめた。この粉末は飲んでよし、塗ってよしの催淫剤で、あのマルキ・ド・サドも用いたという。これがまた量を間違えると死に至るという猛毒だけに、実によく効くらしい。ところがスペインにも実物はない。それから7年、著者は執念の探索の末、ついに東南アジアで実物を手に入れる。そしてその効果は――? 生前、性豪作家として知られた著者が、その旺盛な好奇心と取材欲によって集めた、セックスにまつわる古今東西の逸話をサービス満点に語る。
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『黒の試走車』から5年。熾烈な企業競争を描き切る
自動車レースの中で、ラリーほど苛酷な競技はない。スピードを競うだけでなく、人間の限界を越える耐久力と高度な運転テクニックがなければ勝ち抜けない。しかも勝負は、自動車会社の売上げにそのまま影響するのだ。それだけに舞台裏では、さまざまな策謀がめぐらされる。その日、タイガー自動車第四実験課長であり、〈ラリー男〉の渾名を持つ古葉鋭二が感じていた不安は、最悪の形で現実となった。モンテ・カルロ・ラリーに参加した自社チームが、コース途中の山道で行方不明になったのだ。しかも二人の出場選手の凍死体が、コースから遠く離れた雪原で発見された。だが彼等の乗っていた車は、遂に見つからなかった。事故か、それとも……。国際市場を舞台に展開する激烈な企業競争の暗部に迫る傑作情報小説。
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王朝ならぬ現代のプレイボーイ一代記。笑えます
24歳になる美知子は職業柄、男性が下着を脱ぐとすぐ草叢に視線がいく。それもそのはず、彼女は、ソープランド〈桐壺〉のベテラン風俗嬢で“美知子の真空斬り”というと、客の間でも評判だった。預金500万円、千人斬りを目前にして、いま個室に変な客が来ている。何をやっても反応がなく、怒張もせず悠然としているのだ。手のほどこしようがない。美知子はカーッとなった。この不感症男め! 眼許涼しく鼻筋が通り、色白の源田光彦と名物風俗嬢・美知子の初めてのお手合わせ。美男の光彦に言い寄る猛女、今様ひかる源氏・桐島総業の秘書室長の快進撃、痛快おもしろ長編!
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小豆相場を題材に、著者の筆名を不動にした代表作
小豆は天候に左右されやすい穀物の代表だ。天候不順の年の小豆値は、信じられないほどのバカ高値をよぶ。一攫千金を夢みる人たちは、ダイヤモンドに魅せられるかのように、〈赤い魔物〉の小豆にすい寄せられる。ソロバンづくで生きてきた木塚慶太は、“アメ横”を根城にして活躍するブローカーだ。金儲けができるところには嗅覚を働かせ、ひょっこり現われるのでトランパー(不定期船)のあだ名がある。その慶太が商売に大失敗、大借金をかかえた。28歳の素頓狂な慶太の人生もこれで終り。遺書を書いて、住みなれたアパートを後にしたのだが……。著者会心の痛快長編小説の最高傑作。 -
常識を無力化するバイタリティの爽快感。傑作4篇
その年は梅雨が長く続き働きにでられないから、“ドヤ街”もなんとなく殺気だっていた。オレは、安ベッドでひっくり返り古新聞を読んでいると、チンチロリンという渾名の片眼の50男が近づいてきて、“いい仕事”があるという。連中のいい仕事とは、ヤバイ仕事に決まっている。オレは、一瞬ためらったがとにかく金がほしい。思わず承知してしまった。その翌日、“チンチロリン”に連れられて、浅草田原町の地下鉄入口に立っていると、一台の黒塗りの外車がやってきて、すーっと横づけになった……。あとで考えると、この決断が、オレをどん底から這い上がらせてくれるキッカケになったのだ。痛快傑作小説。 -
風俗の鮮やかな断面。著者の多才を示す傑作6篇
英文科3年の女王的存在だった古園洋子が失踪した。5日も続けて学校を休んでいる。作家志望の洋子は、さまざまな人生体験をしようと、ホステスばかりが住んでいるアパートに引っ越したのだ。洋子の安否を気づかう私は、アパートへ出かけてみた。同じアパートの住人で、ちょっと蓮っ葉な感じのホステスに話を聴くと、洋子は「帰ってきたら、おもしろい話をしてあげる…」といって出かけたらしい。以来、洋子の姿を誰も見ていないという。なおも行方を追ったとき、私は奇妙な人物に行き当たった。表題作ほか「愛情の領収」「真昼の孤独」「不倫三重奏」「事件の夜」「恋の代償」の傑作6篇。
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“女性”を主題にサスペンスあふれる佳作5篇を収録
女子大生のナツ子は英会話に堪能なことから、アメリカの石油王の若き未亡人リンダを軽井沢へ案内することになった。未亡人とはいえ、まだ28歳の容姿抜群の女性だ。リンダは、軽井沢には知人もいないはずなのに、電話をかけどこかへ出かけて行ったまま、2日目の夜になっても帰ってこない。もしや、誘拐されたのでは? 表題作や、特殊な訓練を受けた“女中”が家庭の平和をみだす「女中仮面」。ほかに「背徳の老嬢」「ラッシュ・アワーの天使」「恋は曲者」を収録。 -
あえて夫婦の愛にまつわる奮戦記をご紹介いたします
渡辺喜一郎は35歳。平凡なサラリーマンであり、平均的ニッポン人である。子供こそいないが、妻の淳子との夫婦仲もまずまず円満であった。ところが結婚7年目にして異変が起きた。喜一郎がインポになったのである。最近は喜一郎から手を出すことはまったくない。淳子が奮闘しても途中でグニャリ、である。28歳、女ざかりの淳子としては大いに不満なのだ。なんとかしなければ…そうだ、フォアグラをとるガチョウのように、精力のつく食べ物を強制的に詰めこんでやったらどうだろう。かくしてスタートした夫と妻の性なる戦いはやがてとんでもない方向へと発展してゆくのだが――。 -
発表は開通の前年。国家事業の暗部を遠慮なく抉る
小さな事件の背後に、とてつもない大がかりな犯罪が隠されていることがある。――ひんぱんに料亭に出入りし、芸者と昵懇(ねんごろ)になった〈新幹線公団〉の一課長補佐が逮捕された。官公吏にありがちな、実直そうな顔だちの小柄な五十男で、わずか3万円の収賄罪の疑いだった。厳しい追及に耐えかね、この男がうめきながらもらしたことが、実は、用地買収にからむ大汚職事件発覚の糸口となった……。政界の実力者がからんだ“現代の黒い疑惑”を鋭くついた会心の長編推理。 -
全方位型アイデアから生まれた傑作海外シリーズ
大西鉄五郎は、9歳の時、サーカス一座にさらわれ、アジア各地を転々とした後、渡米興業ですっかりアメリカが気に入ってしまった。その後一座を脱走したが、さすがサーカスにいただけに、いろんな特技を身につけ喧嘩には滅法強い。いつも朴歯の下駄をつっかけているが、これが凄い武器になる。懐には小型ピストルをしのばせ、10メートル先に立てた絹針を射落としたことから“ガン鉄”の渾名があった。この男が、1930年代のアメリカの闇の帝王――酒の密造、売春宿、賭博場の経営、殺人など、犯罪をほしいままにしたギャング、アル・カポネを大いに手こずらせる。痛快傑作小説の決定版! -
古書ミステリーの傑作!
“せどり”(背取、競取)とは、古書業界の用語で、掘り出し物を探しては、安く買ったその本を他の古書店に高く転売することを業とする人を言う。せどり男爵こと笠井菊哉氏が出会う事件の数々。古書の世界に魅入られた人間たちを描く傑作ミステリー。
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・決済時に商品の合計税抜金額に対して課税するため、作品詳細ページの表示価格と差が生じる場合がございます。