[作品について]父の事業が成功をおさめ、訪れるたびに豊かな暮しぶりとなっていく生家。しかし伸子にはその家庭が徐々に崩壊しつつあるように思われた。仕事に追われ家に戻らぬ父、弟の家庭教師と恋愛関係にある母、そして部屋にひきこもり勉強に明け暮れる弟の保。また作家である伸子自身もさまざまな悩みを抱えていた。さらには衝撃的な文学者の自殺。しかしそういった閉塞状況のなかで、伸子の生活は次第にあらたな展開をみせはじめる。社会主義思想との出会い、素子とのソビエトへの旅立ち。当時の世情を映し作家としての転回点を示した「伸子」続編。「道標」へのかけ橋となる作品。[初出]「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号[文字遣い種別]新字新仮名