芸術作品のような工業製品に囲まれた暮らしによって生活の質(QOL)は飛躍的に高まるが、そのような「眺めの良い暮らしの空間」は、視覚公害をなくすことで実現できる。つまり、広告看板、ガードレール、(米国由来の)道路標識、ビル屋上の空調設備/給水塔、山肌を覆う太陽光パネルやコンクリート、電柱及び電線、風力発電の羽根、鉄塔、衛星放送を受信するパラボラアンテナ、巨大な彫刻として眺めて楽しむ対象である歴史的建築物の前に駐車された自動車や自転車、といった視覚公害をもたらす“ゴミ”を(いわば癌細胞として)視界から根こそぎ取り除く必要があり、屋内でも配管や電源コード/コンセントは、見えない方がよい。向こう側に空間があることを感じさせる“エッジあるいはフレーム(縁、庇、枠、垣)”のコントロールを通じて“眺めの創造とコントロール”を行うという役割を建築に割り振り、空間(室内外)の中で主役として目立つような3次元のオブジェ(物体)、言い換えれば、遠くから見ても近くから見ても(そしてその周囲を一周しても奥行きを感じさせる)美観を備えた彫刻作品のようなオブジェを創造するという役割をデザインに割り振るなら、見た目(3)ではなく“眺めの創造とコントロール”が建築とデザインの共通目的となる。建築とデザインの本質は同じものであり、両者とも究極目標としての“眺めの創造とコントロール”に奉仕すると言えよう。
【本書目次】
初めに―視覚公害の撲滅に向かって―
1 デザインとは何か―デザインとは良い眺めの創造とコントロールである―
  1.1 建築家の役割
  1.2 デザイナーの役割
  1.3 デザイン経営者の役割
  1.4 影の効果と教養としての照明
2 自転車―チネッリ(Cinelli)社の事例―
  2.1 はじめに
  2.2 チネッリ社のデザインプロジェクト
  2.3 結論と今後の展望
3 ヨット(高級クルーザー)
  3.1 はじめに
  3.2 ヨットのデザインプロジェクトの特徴
  3.3 プロジェクトの事例
  3.4 結論と今後の展望
4 靴―フェラガモの事例―
  4.1 はじめに
  4.2 フェラガモのデザインプロジェクト
  4.3 結論と今後の展望
終わりに