成功した実績のあるビジネスモデルを実践しつつ、同時に未来のために新しいビジネスモデルを生み出せるような組織構造の構築に成功した企業は数少ない。ハイアールが見事な能力を発揮してみせたのは、まさにそこだ。ハイアールはその継続的な組織改革の文化によって、未来の困難にも立ち向かう備えが十分できているようだ。『ビジネスモデルジェネレーション』著者、アレックス・オスターワルダー (本書序文より)
■ 本書は、変革についての本だ。ビジネスモデルと企業文化をわずか30年の間に一度ならず少なくとも三度、再構築した企業の物語だ。組織をうまく変えられる企業は繁栄するし、それができない企業は破滅の危機を迎える。ハイアールは、成熟化する白物家電市場で勝ち進む鍵は技術革新ではなく、顧客志向を極めることだと位置づけ大胆な逆三角形型に組織をひっくり返した。今では、顧客の要望を聞き、製品をカスタマイズして即納する体制が整っている。
大量生産が前提だった家電製品において、誰も進んだことのない道を自ら切り開き、前進を続ける。GEのジャック・ウェルチが「(組織の)外での変化の速度が組織内の変化の速度を上回ったとき、終わりが見えてくる」と言ったのは有名な話だ。そうは言っても、変わるというのは簡単にできることではない。
■ ハイアールの源流は、1920年青島に建設された冷蔵庫工場。1949年中華人民共和国が樹立されると、その工場は当局が管理する工場になった。低品質と労働意欲の低さで知られていたその工場は、1984年に張瑞敏(チャン・ルエミン)という若い役人の指揮下に置かれ、新たな経営手法の実験場となり、その後劇的な成長を遂げる。今では冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの白物家電で世界シェア1位となり、携帯電話やネットワーク機器も製造するようになっている。ハイアールが既存の世界的大手企業との厳しい競争の中でこれだけの偉業を、しかも短期間でどうやって成し遂げたか、そしてハイアールが実践したビジネスモデル改革の力がどんなものだったかが、本書の核心部分だ。
■ ピーター・ドラッカーは、1997年に「私たちが組織について持っていた考えを1980年代前半に日本の産業が根本的に変えたのと同じように、これからは中国が斬新な経営手法の源となるだろう」と予言した。
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