沖縄県発・おきなわ文庫シリーズ第10弾。
「珊瑚礁の小さな島に『鉄の暴風』が吹き荒れた。島人の四人に一人は『艦砲』に食われてしまった。生き残った島人は、兵器、砲弾類を?アメリカのウサンデー(御下がり)″としなやかに捉え、生活の糧にしていった。戦争の痕跡が生々しく残っているとき、それらをバーター品として台湾・香港・マカオ、日本に密貿易ルートを次々に開拓していき、戦後社会の礎を築いた。それは『大密貿易の時代』と称してもよい。冒険とロマン、悲哀に満ちた幻のような一時代が沖縄にあった。本書はそれを簡潔に描いている。-1995年作品紹介文よりー」
戦後五〇年という半世紀が経過した今日、沖縄戦から生きのびた沖縄県民がどのようにして戦後生活を築きはじめたのだろうかというのが、本書のテーマである。そのテーマを、「軍作業」、「戦果」、「密貿易」という「戦後用語」をキーワードにして第1部『軍作業・戦果の時代』と第2部『大密貿易の時代』で構成されている。それぞれに記録されている民衆の生活史から、いまをどう読み解くかというヒントが得られる。
本書が描いた時代は、人間が飢餓状況のなかで自ら生きようとするとき、人間が人為的に形成した国境線は何の意味もないということを示していった。人々は国境を越えてそれぞれが必要とするものを求め合い、交換していった。そして、利害を越えた信頼関係がうまれ、共に生きる生活パターンも形成されようとしていた。いま、「ボーダーレスの時代」といわれているが、まさに戦争終結から1952年の頃まで、ウチナーンチュ(沖縄人)はボーダーレスの時代を築くことによって、生き延びることができたのである。それは、「琉球王国の時代」に「大交易時代」を築いた琉球の先人たちの気概、行動エネルギー、生きるパワーを継承していたといえよう。
著者は沖縄国際大学名誉教授の石原昌家氏。新たに電子版あとがきを追記した電子復刻版。
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