1,540円〜1,760円(税込)
誰かを幸せにするためによく動き、よく働いた。寂聴さんが編集長を務めた「寂庵だより」から晩年の随想10年分を収録。 これはもう、生きすぎたケジメをつけなければならぬ時がきたと覚悟を決めた。決めたものの、その実行が以前のようにさっさとできないのである。遺書も書けていないし、身辺整理も何一つ出来ていない。このままでは死にも出来そうにない。(「生きすぎたケジメ」より) もう、今夜死んでも不思議ではない年齢だ。今となっては、何も思い残すことはない。書き足りない想いもない。出家したおかげで、あの世を私は信じている。あの世で、先に逝ったすべての人に再会できると信じている。(「法臘四十歳」より)
書くことが生きることであり、生きることが書くことであった。生即是文、文即是生の驚嘆の記録。―平野啓一郎 『源氏物語』を完訳、心弾む七十代、充実した時期の随想を収録。 明日は何が起こるかわからないのだから、そこに美しいもの、愉快なものが待ち受けていると思う方が、今夜の眠りは安らかである。(「知らぬ月日」より) その時、骨身にしみて辛いと思った経験も、歳月が経ってふり返ってみると、あの時、ああいう目にあったからこそ、いまの自分があるのだと、思えるようなこともある。人生の幸運、不運も、考え方の視点を変えれば、案外逆だったりすることもある。長く生きるということは、自然にそういうことがわかってくるらしい。(「見るべきものは見つ」より)
年をとっても、人生は変えられること。そして年をとっても、他者のために生きられること。本書は、そんな寂聴先生の教えと実践を、我々に生き生きと伝え続けるのです。―酒井順子 家を捨てて、家族を捨てて出家した。六十代の随想を収録。 仏像のように耳を大きくして、私も残る歳月、人の苦悩に本気で耳を傾けて生きていきたいと思う。(「仏の耳」より) 本来人間は孤独だという認識を持てば、大方の困難には耐えてゆかれる気がする。孤独だからこそ、人は他者の孤独の淋しさを思いやることが出来るのだ。(「犀の角のように」より)
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