本書のキーワードはTOD、サステナブル、田園都市です。TODはTransit-Oriented Developmentの略で、鉄道をはじめとした公共交通に根差した都市開発やまちづくりを意味します。1990年代、米国の都市計画家ピーター・カルソープにより提唱された理念で、より健全で持続可能なコミュニティへと導く上で不可欠とされ、今、世界中で注目されている考え方です。本書は大きく分けて以下の3パートで構成されます。郊外の住宅と都心の業務、両者を結ぶ1.0、沿線の都市機能が多様化した2.0について、特に渋谷から東京南西部に延びる東急田園都市線の「軸」にフォーカスし、コロナ禍前の発展経緯について「TOD・田園都市の歴史」で振り返ります。次に、エリマネをはじめ地域と事業者が交流する3.0、ポストコロナの働き方変化を踏まえた自律分散型(本書では「納豆」と表現)構造の4.0、DX・GXによる関係・交流人口増、行動変容へと導く5.0について昨今特に高まりつつあるSDGsやサステナブルを重視する潮流を踏まえ、データ分析も加えながら「サステナブルとポストコロナの都市構造」で論じます。最後に、東京都市大学都市生活学部のアカデミアの方々より「公共交通オリエンティッドな持続可能な都市空間」において都市空間のデザイン、マネジメント、発展戦略、また、これを支える交通基盤について、本書で扱うサステナブルなまちづくりの個別課題や対象地域とも関連づけながら論考します。
【目次】
第1章 TOD・田園都市の歴史
1.1 Garden Cityから田園都市へ
1.2 多摩田園都市のまちづくり
1.3 鉄道による沿線型TODの実践
1.4 ターミナル・拠点型まちづくり:渋谷の台頭
第2章 「サステナブル」とポストコロナの都市構造
2.1 郊外型「拠点」の成長と連坦
2.2 ポストコロナの生活スタイル・都市構造
2.3 「サステナブル」なまちづくりとは
2.4 サステナブル田園都市TODモデルの発展
2.5 【研究報告】地方創生に向けた関係人口づくりとTOD事業者の役割
第3章 公共交通オリエンティッドな持続可能な都市空間
3.1 都市空間のデザイン
3.2 都市空間のマネジメント
3.3 都市空間の発展戦略
3.4 都市空間を支える交通基盤(総括)
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