たとえそれが、人でなかったとしても。
これでも私は、身のほどはわきまえているつもりである。
武器修理ロボットとして、この世に産まれた命。
本来であればその機能を駆使して人間に貢献することが、機械知性の本懐とも言えるだろう。
しかし、どうもおかしい。
人類のほとんどが消え去った地上。主人であるハルとの、二人きりの旅路。
自由奔放な彼女から指示されるのは武器修理のみに留まらず、料理に洗濯と雑務ばかり。
「やるじゃねえか、テスタ。今日からメイドロボに転職だな」
全く、笑えない冗談である。
しかしそれでも、ハルは大切な主人であることに違いはない。
残された時を彼女のために捧げることが、私の本望なのである。
AIMD――論理的自己矛盾から生じる、人工知能の機能障害
私の体を蝕む、病の名である。
それは時間と共に知性を侵食し、いつか再起動すらも叶わぬ完全停止状態に陥るという、人工知能特有の、死に至る病。
命は決して、永遠ではないから。
だから、ハル。
せめて、最後のその時まで、あなたとともに――。
第11回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞を受賞した『平浦ファミリズム』の遍柳一がおくる、少しだけ未来の地球の、機械と、人と、命の物語。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
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人とロボットの親子の旅路、ついに終着へ。
「……次はこの子が、自らの幸福を掴む番ですから」
ライドーに連れ去られたハルの行方を追い、極東のウラジオストクに到達したテスタとイリナ。
そこでは生き残った人間たちが、飢えや貧困に苦しみながらも、地下に街を築いて生活していた。
ハルの行方の手がかりをつかむため、さらには知性機構に損傷を負ったアニラの修理のために、表向きは地下住人に従うテスタたち。
テスタは人工知能たちが作り上げた宗教機構・Atheistの構成員が地下にいることを知り、その者と繋がりを持つというAI研究者・オルガとの接触を待ち望む。しかし、突如現れたダスマンの襲来によって、テスタは地下に漂う不穏の正体を知ることに。
さらには、人間を消失させたバベルの真の目的にも期せずして近づいていく。
バベルとはいったい、何者だったのか。
彼女はなぜ、言語を放棄した『人間』を造ろうしたのか。
真実に触れたとき、テスタは思いがけない形で主人との再会を果たすことになる。
苦悩と罪、後悔と自責。
その末に、テスタが親として下した最後の決断。
獣だった娘と、病を患った軍用ロボットの親子の旅路は、ついに、終着を迎える。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
わがままばかり言って、ごめんな。テスタ。
旧友モディンとの再会、離別を経て、再び医工師を求める旅へと戻ったテスタたち。
だが、成都を発って以降、なぜだかハルは、ひとり物思いに耽ることが多くなっていた。
テスタがハルの様子を気に掛ける中、一行は家屋の下敷きとなっていた一人の女性型アンドロイドを救う。
ローゼと名乗るそのAIは、遥かアフリカより想いを寄せる人間に会うため、ひとり中国までやってきたのだという。
片思いながらも、恋愛体験を持つローゼに大人の女性を感じ、色めき立つイリナ。
一方で、ハルのときおり来る憂鬱は、なかなか直る気配が見られなかった。
挙句、イリナはそれが恋の病なのではないかと言い出し、事態はあらぬ方向へと進んでいくことに―――。
ローゼの想い人に隠された秘密。
アニラの恩返しと、はじめてのおつかい作戦。
突如として現れた、頬傷のある白髪の少女。
そして果たされる、医工師ウシャルとの出会い。
軍用機械と野生児だった彼女たちが歩んできた道、その先で待ち受けていた『逃れられない必然』に、
やがて二人は、己の信じていた答えをも見失っていく。
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
新たな事実――人類消失を予見していた者。
機械の精神を蝕む病、AIMD。
その奇病を専門とする医工師を求め、テスタたちは冬のチベットを訪れていた。
有限の命を自覚し、改めてハルの母親として、娘に向き合う決意をしたテスタ。
だが、ハルが一人前の大人になるには知識も道徳も不十分であり、友だちになると約束したイリナとの関係も、いまだにこれといった進展は見られない。
それでもハルの中には着実に人間社会に対する好奇心が芽生えているようで、「イリナができるのに、あたしができないのはいやだ」と、自ら勉学を教えてほしいと志願してくる。
普通の人生を歩めなかった娘のために、テスタはハルの勉学に喜んで付き合い、さらには一種の社会見学になればという想いから、旅先の難民街でチベットの廃校を訪れる。
しかし、テスタはそこで奇妙な手紙を見つける。
『贖えない罪を犯してなお、この世界に生きる意味はあるのだろうか』
遺書ともとれるその一文とともに綴られていたのは、手紙を書いた者が、十一年前の人類消失を予見していたという事実だった。
やがて、かつてこの地で起きた悲劇を知った時、テスタは、思いがけぬ人物との邂逅を果たすこととなる。
※「ガ報」付き!
※特別カラーちらし「ゲキ推し!!ガガガラブコメ ラインアップ」付き
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
たとえそれが、人でなかったとしても。
これでも私は、身のほどはわきまえているつもりである。
武器修理ロボットとして、この世に産まれた命。
本来であればその機能を駆使して人間に貢献することが、機械知性の本懐とも言えるだろう。
しかし、どうもおかしい。
人類のほとんどが消え去った地上。主人であるハルとの、二人きりの旅路。
自由奔放な彼女から指示されるのは武器修理のみに留まらず、料理に洗濯と雑務ばかり。
「やるじゃねえか、テスタ。今日からメイドロボに転職だな」
全く、笑えない冗談である。
しかしそれでも、ハルは大切な主人であることに違いはない。
残された時を彼女のために捧げることが、私の本望なのである。
AIMD――論理的自己矛盾から生じる、人工知能の機能障害
私の体を蝕む、病の名である。
それは時間と共に知性を侵食し、いつか再起動すらも叶わぬ完全停止状態に陥るという、人工知能特有の、死に至る病。
命は決して、永遠ではないから。
だから、ハル。
せめて、最後のその時まで、あなたとともに――。
第11回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞を受賞した『平浦ファミリズム』の遍柳一がおくる、少しだけ未来の地球の、機械と、人と、命の物語。
※「ガ報」付き!
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人とロボットの親子の旅路、ついに終着へ。
「……次はこの子が、自らの幸福を掴む番ですから」
ライドーに連れ去られたハルの行方を追い、極東のウラジオストクに到達したテスタとイリナ。
そこでは生き残った人間たちが、飢えや貧困に苦しみながらも、地下に街を築いて生活していた。
ハルの行方の手がかりをつかむため、さらには知性機構に損傷を負ったアニラの修理のために、表向きは地下住人に従うテスタたち。
テスタは人工知能たちが作り上げた宗教機構・Atheistの構成員が地下にいることを知り、その者と繋がりを持つというAI研究者・オルガとの接触を待ち望む。しかし、突如現れたダスマンの襲来によって、テスタは地下に漂う不穏の正体を知ることに。
さらには、人間を消失させたバベルの真の目的にも期せずして近づいていく。
バベルとはいったい、何者だったのか。
彼女はなぜ、言語を放棄した『人間』を造ろうしたのか。
真実に触れたとき、テスタは思いがけない形で主人との再会を果たすことになる。
苦悩と罪、後悔と自責。
その末に、テスタが親として下した最後の決断。
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