本庄慧一郎 書き下ろし短編小説「首くくりの峠」
峠越えの一本道をあたふたと急ぐ佐吉が、崖っぷちの樹の枝にぶら下がる若い女の哀れな姿を見た。なんと、自分が手にかけたおさわだった――。
やっと枝から下ろして地に横たえると、通りかかった山男がいきなりそのおさわの死体に抱きついた。佐吉は、山男を斬り、死体を窪地に埋めた。
その後、必死に追っ手を逃れる佐吉は、いくつもの摩訶不思議な出来事に遭遇する。
そして――。
(C)本庄慧一郎/余美太伊堂文庫
各275円 (税込)
本庄慧一郎 書き下ろし短編小説「蛇岩の霧が哭いた」
四人の男たちが江戸の豪商を襲って手にした黄金を、寒村の奥の丘に埋めた。
十年、素知らぬ顔で暮らした後に四人が集まって掘り出す――しかし、その日がきたが現れたのは、二人だった。
どういういきさつがあったのか、あとの二人は消されていたのだ。
繁次と金蔵は、黄金を埋めた甕のありかに胸おどらせて近づいていた。
その道すがら、このあたりに住むらしい若い娘に出会う。
金蔵は、いきなりその娘に襲いかかり欲望を遂げようとするが――。
本庄慧一郎 書き下ろし短編小説「かんべんならねぇ」
仲むつまじい定吉、お浜の夫婦の楽しみは灯明の灯りを惜しんで消して、宵のうちからの暗闇で、枕をはねのけて抱き合うのが常だ。
しかしその夜は、強風に煽られた火事の貰い火で、長屋をあたふたと逃げ出した。
亭主の定吉は、なけなしの金で買い求めたお浜の着物などを背負いつづらに入れ担ぎ出した。が、宝物のかんざしを取りに戻り、焼け落ちる梁の直撃で即死した。
お浜は、定吉の死体を置いてけぼりにせず、必死に背負いつづらに入れた。
通りすがりの屈強な男が、親切ごかしにそのつづらを「運んでやる」と言う。が――。
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