学習漫画で学ぶ「日本の歴史」「世界の歴史」8選
歴史を学ぶ方法の一つとしても評判の学習漫画。単語や年号の丸暗記ではなく歴史全体の流れをつかむことができ、話題を呼んだ映画「ビリギャル」でも主人公の高校生が受験用の参考書として活用していました。
中学受験・高校受験や定期テストの対策はもちろん、ふりがながついていて小学生にもおすすめできる学習マンガもあります。大人の学びなおしの教材にもうってつけです。
小学館、集英社、講談社、角川、学研など、各社から発行されているので、試し読みして比較してみてはいかがでしょうか。
日本史探偵コナン
名探偵コナンがナビゲートしてくれる歴史学習マンガ『日本史探偵コナン』。『世界史探偵コナン』も発売されています。
全編にわたってふりがながついているので、小学校低学年からおすすめできます。
また、マンガの途中には「コナンの推理NOTE」と題して複数の学説があるトピックなどが取り上げられており、大人が読んでも新たな発見があること間違いなしです。
巻末には「日本のできごと」と「世界のできごと」を並べた年表もついており、日本と世界のつながりも意識しながら学習できます。
歴史漫画の王道・人気作8選 | 読めば歴史が好きになる!
史実に忠実な作品から、大胆なフィクションを取り込んだ作品まで、さまざまなタイプがある歴史漫画。
歴史書ではわずかな記載しかない人物や出来事を大きく膨らませ、歴史バトル的な作品に仕上げた『キングダム』、今では見ることのできない過去の日本を資料などを踏まえて描いた『ふしぎの国のバード』など、歴史のいろんな側面を学べるヒット作をピックアップしました。
歴史は苦手…という方も、まずは読みやすいマンガからチャレンジしてはいかがでしょうか。
逃げ上手の若君
『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』で知られる松井優征先生の最新作です。
2024年夏にアニメ化され、大きな話題となっています。
物語が始まるのは1333年の鎌倉。
主人公は誰もが知る南北朝時代の英雄・足利尊氏…ではなく、教科書には1度名前が出てくる程度の北条時行。
時行は鎌倉幕府の後継者となるはずでしたが、突然の尊氏による謀反で幕府は滅ぼされ、一転して追われる立場となってしまいます。
時行は座学からも武芸の稽古からも逃げてばかりで、周囲からは怠惰な臆病者と思われていましたが、その「逃げる才能」がやがて敵を脅かし、日本中を震撼させることになります。
主人公の時行はもちろん、時行を庇護する神官・諏訪頼重から敵の足利尊氏に至るまでキャラクターの個性が強烈で、かつストーリーのテンポがよいのでぐいぐい引き込まれてしまいます。
コミックスの巻末には「解説上手の若君」と題した、知っているとさらに本作を楽しめる歴史用語や人物の解説コーナーがあり、勉強になりますよ!
キングダム
バラエティ番組「アメトーーク!」で取り上げられたことで一気に大ブレイクした歴史漫画。「天下の大将軍」を夢見る少年・信が、後の秦の始皇帝・嬴政(えいせい)と出会い、互いの夢に向かって進んでいく物語です。
原典となる歴史書・史記ではわずかな記載しかないキャラクターや合戦を、記載が少ないからこそ想像を膨らませ、ドラマチックに仕上げ、歴史漫画ならではの魅力を味わせてくれます。歴史が動いていくダイナミズムはもちろんですが、軍勢対軍勢という指揮官としての戦いだけでなく、“バトル漫画的”な武将同士の戦いも熱く展開されるのが面白いところです。主人公の信だけでなく、王騎将軍をはじめ、個性の強いサブキャラクターたちにも注目。
ヒストリエ
マンガ史に残る傑作SF『寄生獣』などで知られる岩明均が手がける歴史物語。アレクサンドロス大王に仕えた書記官・エウメネスを主人公に、紀元前4世紀の古代ギリシャを描いています。
幼少期から数奇な運命に翻弄されたエウメネスの人生や、アレクサンドロスをはじめとする権力者たちの決断など、歴史マンガらしい大河のうねりももちろんありますが、本作で印象的なのはそのドライな語り口。眉ひとつ動かさず残忍な仕打ちをする王や将軍、それを淡々と分析するエウメネスなど、一種生身の人間を超えたかのような乾いた視線で歴史や人の業(ごう)が描かれています。大軍勢に囲まれた街に思わぬ奇策で入ろうとする場面など、エウメネスの観察眼による知略戦的な展開も見どころです。
雪花の虎(ゆきばなのとら)
歴史漫画のなかでも戦国時代は不動の人気ジャンル。それゆえにすでに数多くの作品があり、定説・通説を前提に新しい切り口を提示するような作品も多いです。だからこそ、歴史に苦手意識がある人のなかには取っつきにくいと感じている人もいるのではないでしょうか?
『雪花の虎(ゆきばなのとら)』はそんな人にもオススメしたい作品。『海月姫』や『東京タラレバ娘』といった作品で知られるヒット作家・東村アキコが歴史漫画に初挑戦した作品で、軍神と呼ばれる戦国大名・上杉謙信を主人公にしています。
根強く語られる“上杉謙信女性説”をモチーフにしているのですが、面白いのは「難しい歴史講釈はすっ飛ばしていいよ」というテイストで描かれているところ。第1話の「日本史が好きな人用」と「苦手な人用」に分割して描いた構成なども話題になりました。戦国大名という以上に、ひとりの女性としての謙信が描かれている作品です。
大奥
フィクションならではの楽しみがあるifものやファンタジーも歴史漫画の花形のひとつ。
男女が逆転した江戸幕府を描いた『大奥』は、その代表のひとつです。男性ばかりがかかる疫病の流行によって男がほとんどいなくなってしまい、女性が将軍や大名を務めるようになったという奇抜な設定の作品ですが、それでいて史実としっかりリンクしているのが面白いところ。
江戸初期から始まり、武家がどのようにして女性社会に変わっていったか、それを隠しながら諸外国とも交渉し、どのように現在の歴史につながっていったかといった部分が丁寧に描かれており、歴史好きもうなる内容になっています。そんな設定をベースに描かれる、人間の業や権力者の孤独といった人間模様は圧巻。作者・よしながふみファンはもちろん、歴史好きにも読んでもらいたい傑作です。
るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―
「少年誌で歴史ものはヒットしない」という定説を覆したといわれる本作。
アニメ化や映画化、舞台化など様々なメディアミックスが行われ、2023年から新作アニメがスタートするなどその人気は衰えるところを知りません。
主人公の緋村剣心は、幕末、維新志士「人斬り抜刀斎」として多くの人を手にかけていました。
しかし、ある出来事がきっかけで「もう二度と人は殺めない」と心に誓い、鳥羽伏見の戦いを最後に戦線を離脱。
以降、明治の世を「逆刃刀」を腰に下げ、「不殺(ころさず)」を誓う流浪人として生きていきます。
志々雄真実を始めとした強力な敵と戦うアクションシーンは大迫力で、バトル漫画としても楽しめる一方、ヒロインの神谷薫らとの出会いを通して変化していく剣心の内面も丁寧に描かれています。
現在は続編となる『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編―』が連載中で、そちらも必見です。
ふしぎの国のバード
19世紀から20世紀にかけて世界各地を旅した実在の冒険家、イザベラ・バードの日本紀行を描いた物語。明るく前向きで好奇心の塊のような女性・バードが、開国したばかりの明治日本を旅していきます。大きな桶(おけ)に入れられて魚が売られる市場の様子、その桶を覗き込む猫、できたばかりの汽車にある座敷でくつろぐ人々、臼を転がして歩く搗き(つき)米屋など、ページいっぱいに今の私たちが知らないニッポンが鮮明に描かれており、バード同様異国を旅しているような気分を味わわせてくれます。
都会の横浜や江戸からはじまり、奥羽(おうう)、蝦夷(えぞ)へ向かうにつれ、秘境・奥地としての日本の生活や文化が鮮明に。また、バードを通して当時の日本を発見するだけでなく、バードの母国・イギリスや当時のイギリス人女性を取り囲む常識など、ヨーロッパ文化も見えてくるのも面白いところです。
奈良・平安時代を描いた歴史漫画5選 | 当時の文化や風俗に触れる
ここでは、奈良時代・平安時代を描いた歴史漫画を5作品紹介します。
ミニマリストな現代人が奈良時代にタイムスリップしてしまう『あをによし、それもよし』や、日本の仏教史に名を残す最澄と空海を描いた『阿・吽』など、当時の人々の暮らしや思想、文化などに触れられる作品が盛りだくさんです。
あをによし、それもよし
過去の生活や文化を思い切り楽しむ作品といえばこちらも。本作は現代の会社員が不便な奈良時代にタイムスリップしてしまうお話なのですが、ちょっと変わっているのは主人公・山上がミニマリストであること。
家具はおろか、食べるものも着るものも最小限しかない奈良時代に来てその生活を満喫する現代人・山上と、出世して豪華な暮らしをしたいと願う俗っぽい奈良時代の同居人・小野老(おののおゆ)の噛み合わない掛け合いが楽しいコメディです。現代の綿のシャツに感動する老(おゆ)と、天然麻の方が高価だと喜ぶ山上や、和歌で出世が決まる世界を「ラップの世界のよう」と感じる姿など、現代とはまったく違う奈良時代が身近で楽しく感じられます。また、山上の現代知識からの発想が貴族にウケて、小野老が出世していくのも面白いところです。
阿・吽(あうん)
日本の仏教史にその名を残す最澄と空海。同時代を生きたこの天才ふたりを描いたのが本作『阿・吽』です。
人が飢え、狼藉を働く者によってたやすく人が殺される世界で、正しい世、美しさとは何か、人を救うとはいかなることかを追い求めるふたりが描かれます。
仏教が政治とも強くつながっていた時代のため、物語は政争などにも翻弄されながら進んでいきますが、宗教・歴史物である以上に、本作は道を追い求める“芸術家”の物語といった印象が強い作品です。天才ふたりの激しい道のりやその境地はもちろん、天才を間近で見る「凡人」たちの苦悩など、ひとつの道を究めようとする人々の孤独や苦しみが描かれています。また、物語はもちろん、街並みや衣装、抽象化された精神世界など、精緻で華やかな絵も大きな魅力のひとつです。
戦国時代を描いた歴史漫画8選 | 武士、サムライ…歴史ものの花形
武士、サムライは日本のイメージの中心ともいえる存在。歴史漫画でも武士の時代を描いたものはまさに花形といえます。
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康ら戦国三英傑はもちろん、これまでなかなかスポットの当たってこなかった武将や合戦などにフォーカスした作品も多くなっています。
アンゴルモア 元寇合戦記
モンゴル帝国の日本遠征、いわゆる「元寇」を題材にした活劇。元寇の緒戦の舞台となった対馬での戦いを、元鎌倉御家人・朽井迅三郎(くちいじんざぶろう)を主人公にして描いています。戦慣れしていない対馬の武士や住民に対して、圧倒的な軍勢で襲いかかる蒙古軍という絶望的な戦場を描いた本作は、歴史物であると同時にサスペンスアクションのような読み味。無慈悲に人が殺されていくなか、武芸と戦略で抵抗する迅三郎ら武士たちのサバイバル物語になっています。
『キングダム』にも通じるようなバトルアクション的な要素もあり、歴史漫画であり、戦記物としてハラハラドキドキできる作品です。なお、続編シリーズ『アンゴルモア 元寇合戦記 博多編』では、対馬での戦い後、博多に上陸した蒙古軍との戦いが描かれています。
新九郎、奔る!
『究極超人あ〜る』や『機動警察パトレイバー』など、数々のヒット作を生み出してきたゆうきまさみが描く本格歴史漫画。戦国大名の先駆けと呼ばれる伊勢新九郎、後の北条早雲を主人公にした作品です。
かつては「素浪人」とされてきた早雲が、室町幕府重鎮の家の出自であるとわかってきたことなど、新しい歴史の定説を取り入れながら、少年時代からその生涯を追っています。日本史のなかでもひときわややこしい応仁の乱が丁寧にひもとかれているのも印象的。なぜ途中で敵味方が入れ替わり、なぜ最終的に全国に波及して「戦国時代」に突入していったのかが、物語のなかでしっかり描かれています。また、新九郎をはじめとしたキャラクターの魅力もたっぷり。歴史の大きな波を描きつつ、そのなかで普通の少年・新九郎の等身大の暮らしや人生も見えてくる作品です。
信長の忍び
映画、小説、ドラマにもさかんに取り上げられ、歴史物のなかでも花形というべき戦国時代は、歴史漫画でも人気の時代。シリアスなものからタイムスリップ、ファンタジー、ifものなどさまざまな作品が描かれています。コメディ、ギャグで描く作品も多く、その代表作のひとつがこの『信長の忍び』です。若き日の信長に仕えることになったくのいちを主人公にした4コマ作品で、ツッコミと称して火縄銃を撃ったり、(後の羽柴)秀吉がやたらと頑丈だったりとベースはギャグ。
ですが、信長の甘いもの好きや下戸、当時の馬の大きさや速さなど、史実に残る話がベースになっており、歴史好きほど笑える作品になっています。秀吉が丈夫なのも、木綿のように丈夫な「木綿藤吉」と評された話が元になっているんです。4コマながら大河ものになっており、信長の統一事業を追う本作以外にも『軍師 黒田官兵衛伝』『真田魂』といった他家の武将を描いたシリーズも出ている人気シリーズです。
戦国小町苦労譚
小説家になろう発、同タイトルの人気小説のコミカライズ作品です。
農業高校に通う綾小路静子は学校からの帰り道、突如として戦国時代へとタイムスリップしてしまいます。
そこにいたのはなんと織田信長。
「貴様は何者じゃ?」と問い詰められた静子は、とっさに農業でお役に立てますと答え、信長に仕えることに…!
歴史を変えてしまうのではないかと不安に思いながらも、現代の農業や歴史の知識を生かして活躍する静子の姿は読んでいて気持ちが良いです。
ところどころに豆知識も掲載されていて、当時の社会情勢や習慣についての知識も身に付きます。
へうげもの
2010年に手塚治虫文化賞を受賞し、2011年にはアニメ化もされた作品です。
主人公は織田信長に仕え、また千利休の門人でもある武将茶人・古田左介(織部)。
古田は物欲の塊のような人物で、戦場で粉々になった名器の破片を持ち帰って信長にあきれられたり、名器と引き換えに敵を見逃してしまったりします。
その姿はまさに「へうげもの」(ひょうきん者)です。
数寄者としての自分を捨て、武ひとすじに生きると決意したのもつかの間、名器を目にしたとたん一瞬で元の自分に戻ってしまう古田の欲深さに思わず笑ってしまいます。
名器や名物の描きこみがとても繊細で美しいので、読んでいると古田の気持ちも分かってしまうような気がします。
江戸時代を描いた歴史漫画8選 | 人気の幕末や新選組など
日本史で戦国時代と人気を二分する時代といえるのが江戸時代、なかでも幕末です。
暗殺といった血なまぐさい事件の多い時期ですが、若い世代が中心になって新時代へと疾走した、みずみずしい革新の時代でもあります。
若き志士たちを突き動かした思想や因縁、苛烈な運命など、物語のモチーフもたくさんあり、さまざまな作品が生まれています。
風雲児たち
1979年から連載が続くみなもと太郎の大歴史コメディ。坂本龍馬ら幕末の風雲児たちを描くために、その因縁の始まりである関ヶ原の戦いからスタートしており、江戸時代を経て、2001年からついに「幕末編」がスタートしています。
ギャグ漫画としてはじまっている作品で、随所にさまざまなギャグ・パロディが散りばめられていますが、歴史観は骨太。薩摩・長州といった諸藩がなぜ倒幕へ向かうことになったのか、なぜ会津藩が最後まで幕府に殉じたのかといった大きな背景が、200年にわたる因縁から実感としてわかるようになります。また、杉田玄白や前野良沢ら「解体新書」の翻訳に関わった人々や、シーボルトなど、教科書ではあっさり記述されている人々の生涯やその影響をつぶさに描いているのも面白いところ。ややこしい幕末の諸藩の動きはもちろん、この時代の人々の執念を感じられる作品です。
梅鴬撩乱(ばいおうりょうらん)
幕末、騎兵隊を組織した長州藩の高杉晋作。その愛妾であった芸者・おうのを中心に、長州藩の志士たちや幕末の狂騒を描いたのが本作です。
高杉と対立した赤根武人や、伊藤俊輔(後の博文)、山県狂介(後の有朋)ら、幕末を彩った志士たちの物語はもちろんですが、危険な匂いがする男・高杉に惹かれる天真爛漫なおうのの心や生い立ち、さらにおうのの姐さんである琴乃の恋や過去など、時代の奔流に流されながら生き、笑い、恋する女たちの物語でもあります。高杉との関係はもちろん、おうのと琴乃の女性同士の絆なども胸打たれるポイント。色っぽい線で描かれるキャラクターたちの、青春劇ともいえる激しく儚い疾走を読むことができる一作です。
青のミブロ
『DAYS』の安田剛士先生が描く熱い新選組の物語。
2024年秋にアニメの放送も開始する人気作です。
物語は1863年の京都から始まります。
お団子屋さんで働く心優しい少年・におは、子供が傷つけられる世界を変えたいという強い思いを胸に秘めていました。
そのために何もできない自分を変えるべく、偶然出会った土方歳三と沖田総司を頼りに、のちに新選組となる壬生浪士組に仲間入りをすることになります。
凄惨な現場を目の当たりにしながらも、自分の正義とは何なのか、相手にも相手なりの正義があるのではと考え続けるまっすぐなにおを応援したくなります。
新撰組をテーマにした作品は数多くありますが、本作は13歳の少年の視点から新撰組を描いている点が新鮮です。
近現代を描いた歴史漫画5選 | 「今」に直結する歴史
現在の日本や世界がどのようにして今に至ったのかに直結する近代・現代の歴史。まだその時代の生き証人も数多くいる戦前・戦後をモチーフにした作品もあります。
表舞台の歴史を動かした人々や、その時代に翻弄された人々など、さまざまな視点から近現代を見つめ直す骨太な作品が多いジャンルです。
昭和天皇物語
『日本のいちばん長い日』『ノモンハンの夏』などの作品で知られる半藤一利の『昭和史』を原作として、能條純一が描く昭和天皇とその時代の物語。
明治の終焉から大正、昭和と移り変わる日本を、昭和天皇を中心にした視点から描いています。当時の重鎮たちが未来の天皇に説いた信念や教えをかみしめながら、少年が天皇になっていく姿が描かれています。また、子ども時代の養育係・足立タカに甘える様子や、結婚した妻・良子妃をどう呼べばいいか相談する姿など、ひとりの人としての昭和天皇の姿を垣間見られるのも面白いところ。ひとりの人間が天皇になること、時代の流れのなかで古老たちが伝えたことなどを通して、日本の明治から昭和史が見えてくる作品です。
フイチン再見!
『JIN―仁―』で知られる村上もとか先生が、実在の漫画家・上田としこを描いた作品である『フイチン再見!』。
上田としこはまだ日本に「女流漫画家」という存在がなかった時代に、その道を切り開いた開拓者の一人で、本作のタイトルのもとにもなっている『フイチンさん』が代表作です。
1巻の冒頭では、連載を9本抱え、TV出演もするなどすでに漫画家として成功を収めた姿が描かれていますが、初めから順風満帆だったわけではありません。
漫画家を目指して大人気の松本かつぢ先生に弟子入りしたものの、自分がなぜ絵を描きたいのか分からなかったり、「絵に中心がない」「焦点があっていない」などの評価を受けて悩んだり…。
そんな彼女が、いかにして代表作『フイチンさん』を生み出したのか。その生涯が10巻を通じて丁寧に描かれています。漫画の歴史だけでなく、昭和当時の女性の生き方や社会情勢などにも迫った作品です。
世界史を描いた歴史漫画10選 | ヨーロッパやエジプトが舞台の作品
さまざまな国が隣接し、ぶつかり合いながら形成された西洋とその周辺は、日本や中国以上に複雑で多様な歴史ドラマが詰まっています。
日本でもおなじみの人物や事件を、新たな解釈や表現で描く作品も次々登場しています。
ヴラド・ドラクラ
吸血鬼ドラキュラのモデルとなった実在の人物・ヴラド3世。敵国の人間のみならず、自国の貴族なども数多く串刺し刑にしたことから「串刺し公」の名前で呼ばれる彼を主人公にした作品が本作です。残虐な暴君というイメージの強いヴラド3世を、腐敗した貴族と戦う革新者としてとらえ直しており、寡黙で表情を変えないまま抵抗する貴族や政敵を駆逐していく姿を描いています。
家格や血統にとらわれない軍づくりを取り入れたり、商人を厚く遇して取り込んだりといったところから、異名にもなった串刺しも、戦を有利に働かせる一手として利用したという解釈で、神算鬼謀(しんさんきぼう)の苛烈な君主・ヴラド3世を印象づけています。敵だらけの状況を突破する君主に思わずグッとくる作品です。
イノサン
ギロチンの発明やルイ16世の処刑を行ったことでも知られる、パリの処刑人・シャルル=アンリ・サンソンを主人公に、フランス革命を描いた作品。
忌み嫌われる処刑人の一家に生まれ、人々に疎まれながら死刑廃止を願うシャルルを中心に、兄とは違う形で新時代を見据えた妹・マリーや、華やかな宮廷の生活を生きるマリー・アントワネット、シャルルと心通わせたルイ16世ら、さまざまなキャラクターの運命が絡み合っていきます。理不尽に踏みにじられる庶民や、その後の暴走する革命、処刑といった無残な世界と、貴族や宮廷の華やかな世界がともに精緻な筆致で描かれており、その落差の激しさが際立ちます。
続編『イノサン Rouge』では革命へと突き進むフランスが描かれ、狂騒のなか、それぞれの理想や未来を突きつけています。
ベルサイユのばら
1972年の連載開始以降、50年にわたって愛されている名作『ベルサイユのばら』。
2025年に完全新作の劇場アニメが公開されることが発表され、注目を集めています。
物語の中心となるのは、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェとマリー・アントワネットの2人です。
オスカルはフランスの将軍家に生まれ、跡継ぎとなるべく「息子」として育てられた男装の麗人。近衛兵に取り立てられアントワネットに仕えることになります。
アントワネットは齢14でオーストリアからフランス王家に嫁ぎ王太子妃となりました。誇り高く、良くも悪くも自分の感情に素直な美しい女性です。
先王の逝去により王妃となって以降、アントワネットは宝石や花に浪費するなど自由な振る舞いをするようになり、徐々に国民の心は離れていってしまいます。
どういった流れでフランス革命が勃発し、断頭台での処刑までに至ったのか、その大まかな内情が分かる作品となっています。
また、オスカルとその友人・アンドレの身分違いの恋や、アントワネットとスウェーデンの貴公子、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンの危険な恋など、切なくドラマチックな恋愛劇も楽しめます。
ヘタリア Axis Powers
世界中の“国”を擬人化したコメディ作品である『ヘタリア』。
イタリアは陽気、ドイツは質実剛健、日本は生真面目で空気を読む…など、それぞれの国の国民性をぎゅっと濃縮したような個性的なキャラクターたちが登場します。
ローマ帝国滅亡後の国際関係や第一次・第二次世界大戦など、古代から近現代まで様々な歴史上の出来事が取り上げられています。
ほかにも、国ごとの行事や生活習慣の違いを取り上げた回もあり、読んでいると世界の歴史や文化の知識が自然と身につくほか、世界中の国々に親近感が湧いてきます。
国名も無理なく覚えられますよ!
これまでに5度アニメ化され、映画化、舞台化もされています。
現在は『ヘタリア World☆Stars』が連載中です。ハマった方は描きおろしイラストやキャラクターの新情報が収録されたキャラクターブック『ヘタリア☆Collezione』もどうぞ!
王家の紋章
古代エジプトを舞台にした歴史ロマン『王家の紋章』。
1976年に連載を開始し、2026年には50周年を迎える、長く人々に愛されている作品です。
主人公は考古学を専攻するアメリカ人の少女・キャロル。
古代エジプトの王・メンフィスの墓が見つかったとの知らせを聞いて現地へ向かいますが、そこに同じくミイラとして安置されていたメンフィスの姉・アイシスの呪いを受け、古代エジプトへと飛ばされてしまいます。
そこでキャロルはメンフィスと恋に落ち、様々な困難に巻き込まれながらも現代人としての知識を生かしながら、古代エジプトを生き抜いていきます。
時の壁を超えた壮大なラブストーリーとして楽しめることはもちろん、周期的に起こるナイル川の氾濫やミイラのつくり方、ヒッタイトとの敵対関係など、古代エジプトの様相も理解できる作品です。
オルフェウスの窓
『ベルサイユのばら』で知られる池田理代子が描く、20世紀初頭のヨーロッパを舞台にした物語。歴史あるドイツの音楽学校にある「オルフェウスの窓」と呼ばれる古い窓にまつわる言い伝えを軸に、20年以上にわたる少年少女たちの運命や恋を描く大河ロマンスです。
“その窓に立ち階下を見た男は、そのとき目にした女性と宿命的な恋におちるが、その恋は必ず悲劇に終わる”という言い伝えがあるオルフェウスの窓で出会ったユリウス、クラウス、イザークの3人の恋と運命を中心に、壮大な物語が描かれています。歴史の事件や人物を直接的に描いた作品ではありませんが、日露戦争やロシア革命、第一次世界大戦など、
ヨーロッパ・ロシアの争乱が登場人物たちの背景や運命に関わっており、20世紀初頭の不穏な情勢と雰囲気も味わわせてくれます。
片喰と黄金
19世紀半ば、ゴールドラッシュの起こったアメリカ・カリフォルニアをめざして、アイルランドを旅立った少女とその従者の冒険物語。ささやかな幸せを願いながら、飢饉で家族も農場も失った幼い当主・アメリアが、飢えも病気も無縁の大富豪になるため、歯を食いしばって笑い、黄金をつかむためにアメリカへと渡ります。
貧しい人でひしめくアメリカ行きの船、移民との摩擦や危険なギャングと隣り合わせのニューヨークなど、当時の移民の苦難や貧困が描かれており、黄金をつかもうとする旅がいかに無謀な挑戦だったかをうかがわせます。と同時に、必ず大富豪になると心に決めたアメリアのひたすらまっすぐで前向きな姿に癒やされ、励まされるのが本作。貧困と逆境のなかでも黄金を夢見るアメリアと従者・コナーが愛おしくなる物語です。
中国史を描いた歴史漫画4選 | 古代中国・中国大陸の歴史
すぐ近くにあり、日本の歴史や文化にも大きな影響を与えてきた中国。その歴史も人気ジャンルのひとつです。
戦国時代と並ぶほどの人気を誇る三国志の時代を筆頭に、圧倒的な広さを誇る中国大陸の歴史を描いた作品は、日本やヨーロッパとはまた違うスケールの大きさを感じさせるものが多いです。
蒼天航路
三国志は日本でも人気の題材ですが、日本の三国志観を大きく変えた作品ともいえるのが本作。
歴史をもとにした小説である「三国志演義」ではなく、歴史書の「三国志」をベースにし、演義では悪役的な描かれ方をしている魏の曹操を主人公に描いた作品です。曹操を革新的な英雄としてとらえたほか、俗人的で田舎の親分然とした劉備、非道でありつつも不気味な魅力と胆力を持った董卓など、演義のイメージとはまったく異なる英雄像を植え付けました。
超越的な曹操の世界観を中心に、「佞言(ねいげん)絶つべし」といった印象的なセリフと表情、豪快な武将同士の戦闘や掛け合いなど、演劇を見ているようなテンポと迫力に引き込まれる作品です。
孔明のヨメ。
三国志の天才軍師・諸葛孔明の妻・月英を主人公にした4コマ作品。学問や工作が好きで好奇心旺盛な月英と、思慮深く優しい孔明の初々しい出会いと結婚生活が楽しいカップルラブコメですが、漫画界きっての三国志好きのひとりである杜康潤(とこうじゅん)が描いているだけあって、歴史部分もしっかりしているのが本作の面白いところ。
当時の食器やゲームなどを描いた単行本収録の「創作ノート」などでもわかるように、歴史的なできごとだけでなく生活や文化といった部分が綿密に調べられ、描かれており、三国志の時代がより鮮明にイメージできます。巻が進むにつれて描かれる歴史の表舞台での孔明や、劉備をはじめとしたスターたちの活躍ももちろん面白いですが、雌伏時代の暮らしの鮮やかさにも引き込まれる作品です。
ハーン
中国大陸はもちろん、のちに中央アジアからヨーロッパに至る人類史上最大の帝国となったモンゴル帝国の礎を築いたチンギス・ハーンを描いた作品。俗説として語られてきた「チンギス・ハーン=源義経説」をもとにして、テムジン(後のチンギス・ハーン)となった九郎義経がモンゴル高原統一へ向かう道のりを描いています。
自身の激情に突き動かされるような九郎をはじめ、清廉な理想家というより野心家や食えない悪党といったキャラクターたちがうごめき、ぶつかり合うのが本作の魅力。義経の「八艘飛び(はっそうとび)」伝説を思わせるようなテムジンの跳躍など、合戦シーンの迫力や快感度の高さも作品を盛り上げています。
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歴史をテーマにした作品の月間ランキングをご紹介!
※こちらにはマンガ以外の作品も含まれます。
- 著者:
-
原泰久
ヤングジャンプコミックスDIGITAL
集英社
2025/7/17 (木)
配信開始
- 著者:
-
松井優征
ジャンプコミックスDIGITAL
集英社
2025/7/4 (金)
配信開始
- 漫画:
-
鈴木マナツ
- 原作:
-
羽田遼亮
- キャラクターデザイン:
-
ゆーげん
- キャラクターデザイン:
-
ひたきゆう
電撃コミックスNEXT
KADOKAWA
2025/6/27 (金)
配信開始
- 漫画:
-
逸見兎歌
- 原作:
-
大沼田伊勢彦
- 原作キャラクター:
-
平沢下戸
少年チャンピオン・コミックス
秋田書店
2025/7/8 (火)
配信開始
- 著:
-
ゆうきまさみ
ビッグコミックス
小学館
2025/7/11 (金)
配信開始
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