これぞ飯テロ「グルメマンガ」~美食は背徳、ごはんは癒し!漫画飯!
「飯テロ」なんて言葉も生まれたように、食を描く作品はやっぱり食欲を刺激するもの。グルメ漫画も思わずお腹がすいてくる「おいしい」作品がたくさんあります。いわゆる「グルメ」な料理を扱う作品ももちろんありますが、庶民的な味をシズル感たっぷりに描く作品も人気ですよ。
山と食欲と私
アウトドアで食べるごはんは格別!特にお腹ペコペコで絶景を前に食べる料理はたまらないおいしさです。
そんなシチュエーションをたっぷり楽しめるのが『山と食欲と私』というグルメマンガ。単独登山を愛する27歳・日々野鮎美の登山生活とそこでのごはんを描いていきます。「インスタント麺にちょっといいソーセージをちょい足し」といったお手軽贅沢料理もあれば、山でも手軽につくれちゃうホワイトシチューパスタといった、アイディアの光るレシピも。おいしさはもちろん、荷物や準備も極力減らすという登山・アウトドアならではの視点も、ワクワク感を醸してくれます。
登山やアウトドアに行きたくなるのはもちろん、アウトドアギアもほしくなったり、いろんな欲望を刺激するグルメマンガです。
孤独のグルメ
中年男性・井之頭五郎がさまざまなお店でひとり食事をする様子をひたすら描いたグルメマンガ『孤独のグルメ』。こちらも実写化され、飯テロドラマとして親しまれています。
大きな特徴は定食やたこ焼き、カレー、焼きそばなど、町場のお店のメニューを取り上げた点です。連載当時のグルメマンガといえば美食や凝った料理など、食べたことのない珍しいものを見せるものが主流でしたが、「孤独のグルメ」登場により「身近な料理を食べる」「ごく普通の食べる人の哲学を読ませる」というジャンルが確立されていきました。
料理に対する難しいうんちくなどは一切なし。駅売りの過熱装置付きシューマイ弁当を食べて「こりゃああまりにもシューマイだな」と思い巡らしてみたり、焼き肉を食べながら「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」とひとりヒートアップしたり、独特な井之頭五郎節は中毒性がある作品です。
う
呑兵衛マンガ『酒のほそ道』で知られるラズウェル細木が描く、うなぎ専門のマンガが『う』。うなぎが大好きな呉服屋の若旦那・椒太郎が、ひたすらうなぎを食べる物語です。どの話を読んでもうなぎの話ばかりという切り口は 、バラエティ豊かなグルメマンガのなかでも特に異彩を放っています。
蒲焼きやうな重のほかにも、肝焼きや肝吸い、うなぎの頭を使った半助豆腐といった料理もいろいろ出てきますが、それでもうなぎだけではそれほど料理の幅もありません。でも、「うなぎは出てきたら一気呵成に食わなきゃうまくない」といったうなぎ哲学や、大将や客同士の人間模様など、うなぎ以上に“うなぎに魅せられた人間”を見る面白さがこの作品を成立させています。面白くもあり、めんどくさくもあるマニアの愛とこだわりに思わず食欲をそそられる作品です。
おすすめグルメマンガ!おいしい食事と人間ドラマが魅力
ごはんをつくる、ごはんを食べるというのは日常生活の根本ともいえる行為。グルメマンガでは、そんな日常の風景にあるドラマを丁寧に描いて人気を集める作品がたくさんあります。家族や友人、仕事に恋など、人生のいろんな場面とともにある食を通じて、人間ドラマを楽しんでみてください。
きのう何食べた?
弁護士の「シロさん」こと筧史朗と美容師の「ケンジ」こと矢吹賢二のカップルを中心に、その食生活と人生を描く物語。西島秀俊と内野聖陽によるドラマも人気になりました。
シロさんの「食費を2人で月2万5000円に収める」という当初目標にも表れているように、生活のなかでの自炊にフォーカスしている料理漫画です。メインをつくりながら小鉢を準備したり、だしの素や白だしといった使い回しやすく便利な調味料を活用したり、働いている人がバランスやカロリーに配慮しながら日々自炊するのに役立つレシピが満載。凝った料理やグルメ、食べ歩きとはまた違う、実践的レシピマンガというジャンルを確立した作品といえます。
また、ゲイである主人公が生活のなかで感じる壁や周囲の人たちの悲喜こもごもといった日常の中のドラマも大きな見どころ。連載開始からリアルタイムで年齢を重ねており、40代だった2人が50代となり、老いと向き合うようになる様子にも注目のグルメ漫画です。
酒と恋には酔って然るべき
グルメ漫画にはお酒の世界もあります。ワインにカクテル、ウイスキーなどさまざまなお酒の文化がありますが、本作『酒と恋には酔って然るべき』がスポットを当てているのは日本酒。それも主人公のOL・松子が好むのはカップ酒です。同世代の友人には結婚した人も増えた32歳の松子。家でひとりゆっくり楽しむ趣味として、ぴったりなのがカップ酒というわけです。
そんなおうち晩酌をきっかけに年下男子と微妙な関係になったり、新たな出会いを見つけたり、30代の恋模様が展開されていきます。
日本酒の魅力や知識に触れられるのはもちろん、「恋もお酒も溺れるほど飲まない」「だけど、酔わなきゃ楽しくもない」という大人の気分が絶妙な恋愛物語です。
リストランテ・パラディーゾ
レストランにはいい男も、恋もあります。人気作家オノ・ナツメの出世作『リストランテ・パラディーゾ』は、イタリアのリストランテが舞台。ここは料理人からホールスタッフまで、全員が老眼鏡紳士なんです。
母の再婚相手がオーナーを務めるこのリストランテへやってきたニコレッタは、そこで出会ったカメリエーレ長のクラウディオに心惹かれていくことに。
「枯れ専」という言葉もまだ一般化していなかった時代に、老紳士を色気たっぷりの線で描き、多くの読者にその魅力を気付かせた傑作。物腰穏やかな正統派紳士のクラウディオはもちろん、無口なジジや小言の多いルチアーノなど、脇を固める老紳士も魅力的です。ハマった人はより紳士たちに迫れる続編シリーズ『GENTE』もどうぞ。
甘々と稲妻
妻を亡くして小さな娘・つむぎとふたり暮らしになった高校教師・犬塚公平が、偶然出会った女子高生のことりちゃんと料理にチャレンジ!初心者が少しずついろんな料理をしていく物語で、レシピも充実しています。
レシピ系作品のなかでもこの作品の魅力となっているのはワクワク感。第1話はただごはんを炊くだけですが、初めて料理に挑戦して、ワイワイ言いながらつくり、おいしくできあがったときの喜びが画面に満ちています。思わず誰かと料理をつくりたくなるマンガです。
また、子育てものであり、思春期の高校生の物語である点にも注目。まだまだ新米のお父さんの犬塚先生、小さなつむぎ、母とのことや将来のことに悩むことりの関係も徐々に変化していきます。
グルメな人におすすめの料理マンガ!厳選食材にもこだわる食のプロの世界
食は「食べる人」だけじゃなく「つくる人」の物語でもあります。職人、芸術家的な料理人の世界や、ビジネスとしての食産業など、仕事としての食の世界も刺激がたっぷり。食べるだけでは知ることができない、レストランや飲食店の裏のドラマに触れてみてください!
Artiste(アルティスト)
グルメ漫画には職業、生き方としての料理人を描くものもあります。「Artiste」はパリのレストランで働く青年・ジルベールを主人公にした物語。皿洗いしかさせてもらえない境遇にある彼ですが、実はある才能を持った料理人です。
気弱な性格で、知り合いに呼ばれれば金を無心され、通りを歩けば押し売りにあうジルベールは、生活も人間関係もどうにも苦手。ですが、その能力を知る人たちに半ば強引に引き立てられ、才能を示す舞台に立っていくことになります。
ジルベール自身はもちろんですが、彼を取り巻く人も一癖も二癖もある人間ばかり。オープンキッチンを嫌がるジルベールを見て、ほぼできあがっていたキッチンを電話一本で改修してしまうシェフ・メグレや、主張の強いアパートの住人たち、将来息子は警察犬にでもなるんじゃないかとのんきに話していた母など、個性豊かな人々の人間模様が魅力の作品です。
らーめん才遊記
2020年4月に実写ドラマ化されたグルメマンガ。ネット界隈では「ラーメンハゲ」と呼ばれるクセの強い登場人物・芹沢達也が、ドラマ版で女性にアレンジされたことでも話題になりました。
芹沢はもともと『らーめん発見伝』という作品の登場人物。人気ラーメン店のオーナーであり、フードコーディネーターだった芹沢が、今作ではラーメンのコンサルティング会社を立ち上げています。このコンサルティング会社に新入社員として入ってきた汐見ゆとりを主人公に、さまざまなラーメン店の課題を解決していくのが『らーめん才遊記』です。
ラーメンは素人だけど、抜群の舌や料理センスを持つゆとりが、クセが強く老獪な芹沢らとコンビとなり、意外な方法で寂れたラーメン屋を再生させる物語は爽快!ラーメンの味づくりはもちろん、経営面からの切り込みや、ラーメン業界のトレンドなどを知ることもでき、おすすめです。
おすすめグルメ漫画!甘い雰囲気も楽しいクッキングストーリー
誰かといっしょにごはんを食べる、料理をつくる時間は関係を親密にしてくれるもの。グルメ漫画でもラブコメや淡い関係を描いた作品がいろいろあります。食事はもちろん、ふたりの関係がどうなっていくかにも注目のグルメマンガをピックアップします。
水曜日のトリップランチ
食べることの楽しさは「おいしい」だけがつくるわけではありません。『水曜日のトリップランチ』のように、食べる「ワクワク」が詰まっているグルメ作品もあります。
VRの研究・開発に没頭するため、食事がおろそかになりがちな十和博士に、週1回ランチをつくる仕事を任された岸田くんを描いているのがこの作品。毎回、食に興味がない博士でも思わずテンションが上がるランチを岸田くんが提供してくれます。フルーツや生クリームはもちろん、スパムやアボカドを使ったりもするパンケーキや、つくる時間も楽しいたこ焼き(+ラムネ!)など、誰かと食べたくなるスペシャルなランチが並びます。モノクロなのに、カラフルに見える華やかな絵も魅力。ちなみに、電子版はカラーで収録されているページもあります。
十和博士のつくりだすVRによる景色が盛り上げるワクワク感たっぷりのランチだけでなく、食事を通して少しずつ深まる2人の関係も楽しいグルメ漫画です。
八雲さんは餌づけがしたい。
料理は食べるのも楽しいけど、食べてもらうのも楽しいもの。『八雲さんは餌づけがしたい。』は、食べ盛りの男子高校生にごはんを食べさせている未亡人・八雲さんの物語です。
つくればつくっただけおいしそうに食べてくれる男子高校生は、料理のつくり甲斐抜群! 素直でかわいい年下男子と、面倒見がよくて料理上手な年上女性の微妙な関係を、料理といっしょに楽しめます。
男子高校生好みのガッツリメニューとそれを食べる姿ももちろん魅力ですが、物語の土台になっているのは「ひとりで食べる寂しさ」と裏返しの「誰かとごはんを食べる喜び」。いっしょに食べるという嬉しさを通して、ただの隣人だった2人が、お互い大事な存在になっていく様子をゆっくり見守るようなおすすめの作品です。
新米姉妹のふたりごはん
いっしょにごはんを食べることは距離を縮めること。『新米姉妹のふたりごはん』は、両親の再婚で姉妹になった女子高生が、ごはんを通じて少しずつ仲良くなっていく様子を描いた作品です。
緊張しやすくて気持ちが読みづらいクール系の妹・あやりと、感情豊かでかわいい系の姉・サチ。実はお互いもっと仲良くなりたいと思っているけれど、まだまだぎこちないふたりが、料理やおでかけを通じて徐々に“姉妹”になっていきます。
空回りしがちだけどお姉さんらしくなりたいサチに、クールそうに見えてシャイで優しいあやりと、2人それぞれのギャップも魅力のひとつです。
本当は仲良くなりたいけどまだまだぎこちないふたりの初々しさに思わず悶絶してしまうこと間違いなし!
味噌汁でカンパイ!
「お味噌汁をつくってもらう」というのは今も昔もちょっとしたロマン。そんなお味噌汁をテーマにした中学生のラブコメがこちら。
小さいころに母を亡くして父とふたり暮らしの「善」こと善一郎の家に、ある日隣に住む幼なじみの八重が朝食をつくりに来るように。八重に恋心を抱く善は、「愛情込めた朝ごはんを食べてもらいたい」という八重の言葉に戸惑いながらも期待するのですが、実は八重の夢は意外なもので……。
いい子だけど鈍い八重と、好きだけど意識されていないと少し諦めている善。進まなそうで少しずつ進んでいくふたりの関係がもどかしくも幸せなおすすめ朝食ラブコメです。
もちろん料理マンガとしての要素も充実。お出汁の取り方など基本の部分から、牛乳を使った洋風味噌汁といったアレンジレシピ、発酵食品としてのお味噌の知識など、実際にいろいろ試したくなる情報がたくさん詰まっています。
面白い!おすすめグルメマンガ~好奇心を刺激
「おいしい」だけがグルメマンガではありません。知らない世界を教えてくれるものや、食べる「人」に焦点を当てたものなど、食を通じて好奇心やフェティシズムを刺激する作品もあります。普段自分ではやらない調理法や扱わない食材の世界に、いつもとは違うポイントに着目したグルメマンガなど、新しい世界を広げてくれる作品をどうぞ!
イケメン共よ メシを喰え
グルメ漫画の中のトレンドのひとつが「食べる人」にフィーチャーした作品です。おいしいものを食べた恍惚の表情や汗、口元、セリフなど、食べたときのリアクションが、料理以上の存在感を持つ作品も人気を呼んでいます。そんな作品のひとつが『イケメン共よ メシを喰え』です。
食が細く、食べることが苦手な女性がグルメ雑誌の編集を担当することになり苦悩するのですが、イケメンが豪快にごはんを食べる姿を見ることで(ムラムラして)食欲が湧いてくることを発見。清潔感のあるヤンキー系三白眼から、細身のバンドマン、中性的な男の娘タイプに、筋肉質の男前まで、いろんなイケメンの食べる姿を徹底的に観察しつつ、グルメ雑誌の企画を成功させるべく奔走します。超ハイテンションのイケメン解説にフェチがくすぐられること間違いなし。女性はもちろん、キレキレのギャグは男性も楽しめるはずです。
めしにしましょう
『累』の松浦だるまのチーフアシスタントを務めた経験を持つ小林銅蟲が描く、マンガ家の仕事場を舞台にした料理マンガ。63度に湧かした風呂に肉塊を突っ込んでつくる低温調理のローストビーフや、家庭用コンロでパラパラを実現するために炊いたあと水洗いしてつくる炒飯など、調理というより処理と表現したくなる“エクストリーム料理”が次々と繰り出されます。
「脂はうまい」「だしは強い」「うまいものを大量に使うと脳汁が出る」といった、身も蓋もない事実を、科学と研究を駆使して、欲望のまま実現するパワフルさは唯一無二。締切に追われ、体力の限界が迫る修羅場の独特なハイテンションのなか、疾走感たっぷりに進む展開も、読む合法ドラッグ的にトリップ感を高めてくれます。
桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?
同じくエクストリーム料理系マンガにはこちらも。レア食材を食べることに心血を注ぐ女子高生・桐谷さんが、先生を巻き込んでカエルや蛇、サソリ、オオグソクムシなどさまざまな食材を料理していきます。見ただけで軽く食欲がなくなるビジュアルインパクトに右往左往しながら、実際にチャレンジしたリアルな感想を描く、バラエティ番組のような面白さがあるコメディグルメマンガです。
「おいしく食べる」というより、「とにかく食べたことのない食材にチャレンジしたい」という好奇心が強く、場合によっては味にガッカリしたりすることも。調理も基本的には刺身やボイル、素揚げなど、素材そのものの味がわかるシンプルな方法を選ぶことが多いです。まだ見ぬ食の世界に触れたい人にオススメのグルメ漫画です。
たべるダケ
食べる姿のフェティッシュたっぷりの作品といえばこちらも。神出鬼没の謎の女の子が、いろんな人とひたすら食べる様子を描く『たべるダケ』です。
自分の空腹に気付かないほど消耗している就活中の男性の前に現れ、おじさんだらけの定食屋でスタミナ丼を掻き込んだり、別れた彼女が忘れられない男性とお花見団子を食べたり、人生のいろんな場面に不意に現れる彼女は、いつもひたすらごはんを食べるだけ。でも、あまりにおいしそうに食べる姿に、出会った人々は思わず元気になってしまいます。
お腹ペコペコの女の子が、ごはんを食べる至福の表情はエロチシズムも感じさせるものがあります。「うまいメシの女神」と、彼女が出会ういろんな人の人生に触れる作品です。
【番外編】舞台は異世界!これもグルメマンガだ!
世界が変わろうと「食べる」という行為は不滅!異世界系作品でも食は注目おすすめ漫画ジャンルのひとつです。異世界ならではの展開と食という日常の融合を楽しませてくれます。
とんでもスキルで異世界放浪メシ
小説投稿サイト「小説家になろう」を震源地としたいわゆる異世界転生系でもグルメマンガがいろいろ。そのひとつが本作です。
現代の日本から異世界に転移した主人公・ムコーダが持っていた固有スキルは「ネットスーパー」。いつでもどこでも現代日本のネットスーパーでいろんなものを取り寄せることができるという戦闘向きではないスキルだが、異世界を生き抜くにはピッタリなこのスキルを活かし、生きていくことを選びます。
食材調達と料理の力で伝説の魔獣・フェンリルを従魔にしたことで、チート級の戦闘力も手にしつつ続く放浪生活。ファンタジー世界の魔法や世界観だけでなく、現代の調味料や道具が意外と魔法じみたすごいものなんじゃないかと気付かせてくれるところも新鮮です。
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